フジテレビが27日、元タレント・中居正広氏の女性トラブルをめぐる2回目の会見を10時間以上にわたって行い、また経営陣2人が辞任を表明した。
第三者委員会の設置や社内体制の見直しを示したが、中居正広氏の番組起用や影響力を持つ日枝相談役の進退など不透明な点も残った。
嘉納会長・港社長辞任の一方…日枝相談役は出席せず
元タレント・中居正広氏の女性トラブルなど一連の問題について、フジテレビは27日に2回目の記者会見を開いた。

午後4時に始まった会見は、日付をまたいで午前2時24分に終了した。
10時間以上に及ぶ、異例の展開となった。
会見はフジテレビのトップ・嘉納修治前会長の謝罪から始まった。
フジテレビ・嘉納修治前会長:
まず社として、人権に対する意識の不足から十分なケアができなかった当事者の女性に対し、心からおわびを申し上げたいと思います。申し訳ございませんでした。
フジテレビと親会社の経営陣4人がそろって謝罪した。
そして、嘉納会長と港浩一社長が辞任を発表した。
フジテレビ・港浩一前社長:
人権への認識が不足していた。そのことで会社全体のガバナンスを十分に機能させることができなかった。心からおわび申し上げます。
1月17日の1回目の会見ではカメラ撮影を認めず、参加メディアも限定したことで批判を浴びる中、27日のやり直し会見が開かれた。
木村拓哉キャスター:
前方には登壇者の席が設けられていて、その手前に記者たちの席が約500席設けられています。その先には、カメラ数十台がすでに準備しています。集まっている記者の中には、海外メディアの姿もあります。会見10分前です。今、登壇者の席が会場設営者によって変更されています。
会見は参加メディアを限定しない、カメラありのオープンな形式で行われ、191媒体・437人が集まった。
10時間以上に及び、質問が途切れるまで行われた今回の会見を、識者はどう見たのだろうか。

「イット!」では識者に、注目したポイントを挙げてもらった。
3人が共に一番に挙げたのが、経営陣の体制についてだ。
企業のリスク管理にくわしい、桜美林大学の西山准教授はこう語る。
桜美林大学・西山守准教授:
経営者の交代ですね。新しく清水社長が就任するという体制が組まれたこと。辞任して責任を取りつつ、今回の問題にあたる新しい体制を作ったということで、私としては意義のあったことだと評価しています。
港社長の後任に、フジ・メディア・ホールディングスの専務取締役の清水賢治氏が就任し、新たな体制を作ったことを評価した。
その一方で、こう指摘する。
桜美林大学・西山守准教授:
日枝相談役は非常に実権を握っている。経営者が代わっても、本当にフジテレビは変わるのかという疑問も同時にあるわけですよね。
現在、フジサンケイグループの代表で、フジ・メディア・ホールディングスやフジテレビの相談役を務める日枝久氏(87)。
長きにわたり、影響力を持っている人物だ。
今回の会見には姿を見せず、嘉納会長と港社長の辞任が発表された一方で、日枝氏の進退については言及されなかった。
桜美林大学・西山守准教授:
経営者が変わっても、日枝さんが相談役として居座ってる部分が変わらないだろうという批判もあります。
遠藤副会長は会見で、清水社新社長の体制について「暫定的なもの」と説明し、「第三者委員会の報告の時期をめどに、それぞれの役員がそれぞれ責任を取るべきだと思っている」と述べた。

会見では、日枝氏についての質問が相次いだ。
記者:
ーーなぜ日枝氏が出席しないのか。社の組合からも要求があったと聞いていますし、23日の(社内)説明会の前に、日枝氏に対して、港社長・嘉納会長・遠藤副会長が辞意表明した際、(日枝氏が)「こんなことで負けるのか、お前らは」と言ったという報道が出ているが、こういう事実はあったのか?
フジテレビ・遠藤龍之介副会長:
出処進退について、いろんな方向でいろんな人と話しています。それについては、日枝も私たちとそういう話をしたケースもあると思います。総括的に日枝だけでなく、いろんな人間と話をしています。
記者:
ーー日枝氏は責任を取らないのか。自分自身で辞めると言わなかったのか?
フジテレビ・遠藤龍之介副会長:
個別の局面でどういう会話かあったかについては控えるが、それぞれの出処進退について、かなり濃厚な話をした。日枝がここに来る・来ないというよりも、今後それぞれがどういう責任を取るかということが重要だと思っております。
企業のCM戦略にくわしい鷹野氏も、日枝氏が会見に出席しなかったことがポイントだと指摘した。
CM戦略を手がける鷹野義昭氏:
日枝氏が出席しない、謝罪しない、引責しないということについては、モヤモヤ感が残っています。フジテレビの今の企業文化を作ってきたのは、間違いなく日枝氏だと思います。特にスポンサー側の経営陣、私と同世代ぐらいの方も多いと思うが、「日枝氏=フジテレビ」という感覚は強いんじゃないでしょうか。

芸能関係の問題にくわしい河西弁護士も、新たな社長人事が発表された一方で、日枝氏が出席しなかったことについて疑問を呈した。
芸能関係の問題にくわしい河西邦剛弁護士:
日枝相談役が出席しなかった。ここについて、かなり質問が集中していました。なぜ(出席)しなかったかというところが、具体的な理由が示されなかった。
一方で、西山准教授はこう語る。

桜美林大学・西山守准教授:
私は、記者会見に日枝相談役が出るべきとは思っていません。関与していないので出る必要がない。日枝氏が辞めるか・辞めないかという話は、取締役会・株主総会での議決の問題であって、記者の前に出て批判を浴びるかどうかということではない。
また、記者からはこういった質問が飛んだ。
記者:
ーー皆さんの力で、日枝氏を辞めさせる発想はないんでしょうか?
フジ・メディア・ホールディングス 金光修社長:
(日枝氏は)現場には直接タッチしていないという立場ではありますが、やはりその影響力は大きいと思います。そしてまた、この企業風土の礎を作っているということに関しては間違いないと思います。
記者:
ーー日枝氏が長年トップの御社で、正直2人の辞任はトカゲの尻尾切りにしか見えないと思います。日枝氏への発言を恐れているように見えるが、本当にこれで会社が変わっていけると思いますか?
フジテレビ・嘉納修治前会長:
今回の人事は、取締役会で決定しました。特段、日枝が何かということはまったくございません。
記者:
ーー視聴者やスポンサーを取るのか。それとも、日枝さんを取るのか?
フジ・メディア・ホールディングス 金光修社長:
今後のフジテレビ、フジ・メディア・ホールディングスにとって、例外なくタブーなくいい形を模索していくということであります。そういう、二者択一みたいな考え方はありません。
フジテレビ・嘉納修治前会長:
新しい体制でどういう布陣でやっていくか、というのは今後の課題だと思っております。
社員Aの関与「限定的な日付の出来事に対して関与していない」
西山准教授が2つめのポイントに挙げたのは、「第三者委員会の設置」についてだ。

フジ・メディア・ホールディングス 金光修社長:
利害関係を持たない弁護士で構成された第三者委員会の設置を決定いたしました。この形が最も信頼性と透明性を確保できると考えたわけです。
桜美林大学・西山守准教授:
前回の記者会見の時、第三者委員会なのか、第三者委員会じゃないのか、非常にあいまいなまま提起され、隠蔽(いんぺい)を図っているのではないか、責任逃れしようとしてるんじゃないかと、そういう疑念が生じました。
今回、独立性のある「第三者委員会」を設置したことについては、一歩前進したと評価した。

フジテレビの港社長は会見で、女性と最後に会ったのが2024年の夏と明かしたうえで、次のように述べた。
フジテレビ・港浩一前社長:
私どもは彼女の心身のケアを最優先にやってきたが、そのやり方の中にも、やっぱり今思えば反省点もあります。できればもう一度直接会って、おわびしたいと思っています。経過説明を含めてごあいさつ差し上げましたけれども、女性への思いというのは辞任の中に含まれております。
10時間を超える会見では、怒号が飛び交う場面もあった。
焦点の1つは、中居氏の女性トラブルにフジテレビの社員が関与していたかどうかだ。
27日、フジテレビは次のように説明した。
フジテレビ・上野陽一広報局長:
当社としては、現時点でも社員Aが問題の食事会そのものに関与はしていないと判断しております。なお、女性への聞き取りはできておりません。この際の調査結果の資料も、今後の第三者委員会に提出させていただく意向です。
中居氏の女性トラブルに、フジテレビは社員Aの関与が一部で報じられた。
27日の会見で、社員Aの関与をあらためて否定した。
フジテレビ・港浩一前社長:
さまざまなヒアリングや通信履歴、本人へのヒアリング、通信履歴の確認、中居氏へのヒアリング等を通して、特定の日にAは関係していなかったという、いわば限定的な日付の出来事に対しては関与していないと表明をしました。

しかし、女性への聞き取りができていないとも説明した。
記者:
ーー履歴というのは、あとで消すことも何だってできます。それを信用できるところはどこにあるでしょうか?
フジテレビ・港浩一前社長:
履歴を消すというような余裕のある調べ方ではなかったから、そういう行為はないと思います。
これに対し、専門家はこう指摘した。
芸能関係の問題にくわしいレイ法律事務所・河西邦剛弁護士:
事案を把握していくには、双方の意見を聞いていくということが重要になるので、一方当事者のみの意見を聞いて、フジテレビの方が一切関与していないという、やや断定的な判断をしてしまったことは、先走った感があるかと思います。

社員Aの関与について、会見では個人名が特定できかねない質問が飛び、一時騒然とする場面も見られた。
司会:
個人を特定するような質問になってますので、お控えください。
記者:
ーー質問できないじゃないですか!
司会:
すみません、そのへんはご配慮をお願いいたします。
記者:
ーー質問できないよ!冗談じゃないよ!
司会:
すみません、ご配慮だけお願いいたします。
フジテレビが社員Aの関与を否定したことについて、企業のリスク管理にくわしい桜美林大学の西山准教授はこのように見ている。
桜美林大学・西山守准教授:
当該社員、社員Aという人が関わっていたのか、いなかったかという話。それに関して、ある程度事実が明らかになった。やっと明らかになったというのがあれば、ちょっと違うんじゃないかというような話になっている部分もあります。これもやはり第三者委員会で調査をして、明らかにすべきこともある程度見えてきたかなと思いました。
そして河西弁護士は、トラブル後もフジテレビが中居氏の番組起用を続けていたことに疑問を呈した。

芸能関係の問題にくわしいレイ法律事務所・河西邦剛弁護士:
いわゆるトラブルを把握しながら、フジテレビとして、特番について中居氏をキャスティングしたこと。ここについては、ある意味矛盾も感じました。
トラブル発覚後も、なぜ中居氏の番組起用を続けたのか。フジテレビはこう説明した。
フジテレビ・上野広報局長:
中居氏の出演番組「まつもtoなかい」は、2023年4月に始まったばかりの番組でしたが、開始からまもなく唐突に終了することで臆測を呼ぶことを憂慮し、当初番組を中止するような大きな動きを作ることを控えたいという考えがありました。
そして、トラブル後も中居氏の起用を続けた判断が適切だったかについても、第三者委員会の調査に委ねるとした。
芸能関係の問題にくわしいレイ法律事務所・河西邦剛弁護士:
組織としては重大事案であると把握しながら、新たな発注をしてしまっている。この原因というのは、まさに港社長の方がコンプライアンスに中居氏の事件について、トラブルについて共有報告していなかったことが原因かと思います。
CM放送を見送っているスポンサー企業は、会見をどう受け止めたのか。企業のCM戦略にくわしい高野氏はこう語る。
CM戦略にくわしい鷹野義昭氏:
そのスポンサーはある意味(CMの)戻り時を考えている局面かと思います。(会見の)スポンサーの印象は、決して良いというわけではないが、特段すごく悪い印象があったわけでもないと思っています。時間も区切らずに会見をした、これはすごく良かったと思います。
10時間超の会見…識者が挙げる3つのポイント
未明まで続いた10時間24分の会見を、専門家そして識者の方々はどういった点に注目したのか。
ここからは、危機管理が専門の東北大学の増沢隆太特任教授が解説する。

木村拓哉キャスター:
トータルで5人の識者の方に、会見の善しあしを問わずにポイントを3つ挙げていただきました。
まずは、企業のリスク管理にくわしい桜美林大学西山守准教授です。1点目が経営者の交代には一定の評価をします。一方で、フジテレビ相談役の日枝氏の留任には疑問が残るということでした。2点目、第三者委員会の設置は進歩した点として挙げられています。そして3つ目は、事実認定です。週刊誌報道と異なる事実がある可能性が出てきたことを指摘されています。
2人目は、企業広報にくわしいグローカルCM研究所の鷹野義昭さんです。日枝氏不在の記者会見、出席・謝罪・引責しないことにモヤモヤ感が残る。会見での受け答え、時間を区切らずにやったことは良かったと話しています。対応の遅さ、今後は早い段階で説明責任を果たすべきだという指摘でした。
そして、芸能関係の法律にくわしいレイ法律事務所の河西邦剛弁護士です。役員人事、日枝氏の欠席に明確な理由がないということでした。2点目、中居氏の番組継続には矛盾がある。そして3つ目、社員Aの関与については、女性側も含めて双方の確認が必要であったという指摘です。
お3方とも会見に不在の役員であったり、それから進退について日枝氏を挙げているという点が共通しています。

青井実キャスター:
ーー日枝氏について、会見では企業風土を作った人じゃないか、今も影響力があるとしながら、業務に携わってないという理由で会見に出席しなかったという説明がありました。これは会見で説明するべきだったか、しない方がよかったか、どうですか?
東北大学特任教授・増沢隆太さん:
この問題の本質からすると、やはり相談役の存在というものは決して消すことができませんから、もちろんお話していただければいいと思います。ただ、正直相当難しいでしょうし、今回の趣旨、経営陣のストーリーからしますと、一取締役なので特別扱いしていませんというところと反してしまいますので、全体をひっくり返してまでやる覚悟があれば、もちろん出ていった方がいいですが、実際は難しかっただろうと思います。
木村キャスター:
そして、増沢さん、山口さんにもポイントを3つ挙げてもらいました。まず増沢さんのポイントです。1つ目は10時間超の会見です。2つ目が新事実なし、そして3つ目が質問のクオリティー。この3点を増沢さんは挙げられています。
青井キャスター:
ーーまず1つ目、10時間超えの会見ということで、このあたりどうでしょうか。
東北大学特任教授・増沢隆太さん:
ほかに前例のない長時間会見という形になりましたね。フジテレビの番組だから言ってるわけではないですが、私はこの会見によって潮目が変わったなという、空気の変化を感じています。とにかく一方的に「すべての悪の権化」のように批判されていたのが、あの会見を見てた人たちが、フジテレビかわいそう、おじいちゃんたちをいじめるのはどうなんだみたいな声が実際に出てますよね。やはりあの映像を見てしまうと、そういう気持ちが出てくるというのは10時間の意味だったと思います。
宮司愛海キャスター:
ただ、長くなった要因として、納得の行く回答が得られなかったので、記者の皆さんも繰り返し説明を求めていたわけですよね。
青井キャスター:
ーーだからこそ追及していった状況でもあったわけです。松沢さんのご指摘のところ、新真実がなかったから、このように紛糾してしまったということもあると思うんですが、そのあたりはどうでしょうか?
東北大学特任教授・増沢隆太さん:
17日の港社長の会見以降、時間がまだたってないわけです。第三者委員会もこれから動くわけですし、新事実を出しようがないだろうと思いました。今回、何を話すのかということはないんじゃないかと前から申し上げていました。だから、やっぱり何もなかったなと思います。
宮司キャスター:
ーーそれから、3つ目が質問のクオリティーという点ですね。
東北大学特任教授・増沢隆太さん:
私も危機管理という視点から申し上げていますが、事実がいい悪いとか、それから法的なこと以上に、空気感みたいなものがすごく大事だと思います。特に炎上というのは、そこが大きく影響するんですね。
率直に申し上げますと、質問者のクオリティーにかなりばらつきがあったし、もっと言ってしまうと、非常にレベルの低い質問も多かったと思います。同じことを聞いているだけ、生産性のないことを聞いているだけ、もしくは自己主張したいだけ、目立ちたいだけ。それにつきあわされて夜中過ぎまでやるというのは、経営陣の方がかわいそうという影響が出たと思います。

木村キャスター:
そして山口真由さんも3点挙げていただいたので見ていきたいと思います。まず1つ目が経営幹部の経験値という点。2つ目、ジャーナリズム全体への危機。3点目は会見のあり方です。
青井キャスター:
ーー2番は先ほどの松沢さんの話と同じようなことだと思うんですけど、1と3についてはいかがですか?
スペシャルキャスター・山口真由さん:
まず1番目ですが、この規模の企業であれば、経営陣の受け答えというのはもう少し洗練されるのが一般的かなと思いますが、中には受け答えが非常に安定しない経営幹部も見受けられました。経営幹部の方のコンプライアンス部署での経験値の少なさを含めて、フジテレビ内でどういう方が重用されて出世しているのかということに疑問を持った方もいらっしゃると思います。
最後の会見のあり方も、非常に長時間でトイレ休憩1回だけを挟んで誰かが誰かを糾弾し続けるというのは、関係者の方はもちろんですが、見ている方もつらくなるものがありました。関連質問をまとめるとか、さまざまなやり方を工夫できなかったのかなと思いました。
青井キャスター:
ーー長時間のトイレ休憩1回だけ、見ている方も胸が痛い、苦しくなる部分もありましたが、そのあたりはどうですか?
東北大学特任教授・増沢隆太さん:
フジテレビの対応は割とポジティブに申し上げてきましたが、それも狙ってたんですかねという気持ちもちょっとありますよね。
青井キャスター:
ーー真摯(しんし)に受け答えしてる中で、ということだと思いますが。
東北大学特任教授・増沢隆太さん:
ご高齢の70代の方ですから、見てて気の毒でしたね。
宮司キャスター:
そういった点では、運営側の仕切りがどうだったのかという、フジテレビ側の問題というのもあらためて検証していくべきだと思います。
青井キャスター:
ーー今後、どういったところが注目になりますか?
東北大学特任教授・増沢隆太さん:
結局、新たな事実が出てくるにはかなり時間がかかりまして、その検証を考えると結構なものがありますね。第三者委員会がすぐだと言っても、それでも数カ月では無理だと思います。
長期戦になるため、企業としての体質改善と、調査は並行して進める必要がありそうだ。
(「イット!」1月28日放送より)