かわいい鬼の絵で知られる美里町在住の画家・瀧下 和之さん。6冊目の画集刊行を記念した新作展が熊本市の鶴屋百貨店で開催されています。注目の人気画家の素顔に迫ります。

鬼ヶ島で自由に遊ぶ可愛い鬼たち。2000年から描き始めた桃太郎が出てこない『桃太郎図』はシリーズ1000作を達成しました。

15日から熊本市の鶴屋百貨店で始まった美里町在住の画家・瀧下 和之さんの新作展です。6冊目の画集刊行を記念して全国9カ所で開催されます。

【画家・瀧下 和之さん】
「3年ぶりの熊本の個展なんですけど、すべて作品はこのために描き下ろした30点ほどなので、ここでしか見ることができないものですし、果物を入れた作品は、熊本の名産を描いていたりもするので、そういったところを見てほしいですし、風神雷神も普段は富士山をバックに描くんですけど、熊本城を描いていたりとか、熊本らしい作品もいくつかあるので、ぜひ見てほしいです」

【来場者】
「毎回違う絵やデザインがあるものですから、それがもう楽しみで楽しみで。新しい作品ばかりですからすごいですね」
「とても可愛いけど、ダイナミックで熊本ご出身なので、親近感も湧いているので、原画はなかなか手に入らないので、(購入を)即決させていただきました」

【画家・瀧下 和之さん】
「15年ほど前、1冊目の画集を出した時から2、3年おきに画集を出していきたいと考えていて、今のところそれ通りにちゃんといっているので、もう7冊目の構想も実はあるんですけど、それを本当に楽しみにしていただきたいと思ってます」

美里町にある瀧下さんのアトリエです。

1975年生まれの49歳。この世代の画家で6冊目の画集を出せるのはきわめてまれだそうです。

木のパネルに鉛筆で描き、その線を彫刻刀で彫っていきます。そして、アクリル絵の具で何度も色を重ねていきます。

深みのある色合いを「漆器のようだ」と評する声もあります。

手が届くところに数枚のパネルを置いて同時進行で描いていきます。

並んだパネルの数々は注文を受けたもので完成はまだまだ先のものが多いといいます。

【画家・瀧下 和之さん】
「2年待ち、3年待ちとか待っていただいている中で『これを描いてください』と言われても、すぐ描けるわけじゃないので、描き出せるまでの間に、案を煮詰めるというか、画面を置いたときに筆が止まることはないので、どんどんアイディアが今たくさんあって、行き詰まることは全くないです」

絵を描き始めたきっかけは40年前、子どもの頃に読んだ漫画『キン肉マン』でした。

チラシの裏にキャラクターたちをまねして描き、絵の楽しさを知りました。

憧れの作者・ゆでたまごの2人と会う機会に恵まれ、去年、コラボ企画が実現。

東京で開かれた『アートフェア東京』の出展ブースには瀧下さんと『キン肉マン』、両方のファンが駆けつけ、大盛況だったといいます。

【画家・瀧下 和之さん】
「『阿修羅マン』という、手が左右に3本ずつある(超人)とジャンケンをしている赤鬼。『阿修羅マン』がグー、チョキ、パー、全部出して、赤鬼は何やっても勝てない。普段の作品でも遊び心を結構重視しているので、それがよく出せている絵だと思います」

去年8月、漫画家コンビ『ゆでたまご』で原作を担当する嶋田 隆司(しまだ・たかし)さんが瀧下さんのアトリエを訪れました。

【画家・瀧下 和之さん】
「僕は赤が好きなので、赤を最初どこにやるかを決めるんです。最近、意識しているのはちょっと明るめの黄色を絶対どこかに入れると、絵が完成した時にすごく印象が明るくなる」

【ゆでたまご/原作担当 嶋田 隆司さん】
「瀧下先生の作品を見たときに『これ漫画やな』と思ってユーモラスだし、ちょっと目力があって怖い面もありますし、すぐにビビッと来て、大の『キン肉マン』のファンだと分かりまして、自分たちがそれだけ影響を与えたんだなというのが光栄で、本当に漫画をやっていてよかったなと。(今の漫画家は)原画展ができないんです。パソコンやタブレットで(漫画を)描くので。やっぱりキャンバスに向かって描くのは迫力が全然違いますし、だから瀧下さんの絵も絶対そうだと思うので」

そして、11月にはゆでたまごの作画担当、中井 義則さんも瀧下さんのアトリエを訪れました。

【ゆでたまご/作画担当 中井 義則さん】
「『キン肉マン』の影響を受けてなんて、そんなうれしいことを言ってくれて、逆に励まされますよね。自分の地元でやっていらっしゃるのがすごくいいことだと思いますし、ちょっとうらやましいところがありますね」

(美里町立中央小学校)
去年11月、母校の後輩たちを前に話す瀧下さんの姿がありました。

同じ年頃に絵を描く楽しさを知り、そして、今があります。

【瀧下和之さん】
「(キャラクターを描くのは)よくやるんですけど、難しいのが出てきましたね、ドラゴンボールとか。なんとかこなせてよかったし、全く知らないアニメ(のお題)が出てきたらどうしようかと思いましたけど。ちょっと視野を広げてもらえればなと。こういう職業もあるんだなと、ちょっと気に留めてもらえると。ほかにも絵描きだけじゃなくていろんな仕事がその先にもあるんだろうなと気にしてもらえればいいなと思います」

【熊本市現代美術館 冨澤 治子 学芸員】
「いろいろな作品を作る世代なんだと思うんですよ。瀧下さんは人とつながって自分の世界を広げていくタイプの作家さんで、それはやっぱり今の時代、すぐ飛行機でどこかに行けちゃうとか、東京行けちゃうとか金沢行けちゃうとか、そういう時代性とか本人のポテンシャル、そういうことがやりたいと思ったらできる時代という時代の作家さんならではだなというところはあります」

【講演を聴いた児童】
「すごいと思いました」
「勉強になったし、左手で描けるのがすごいと思いました」

この愛嬌あふれる鬼をモチーフにしたのは大学生の頃からで、今ではもう瀧下さんの分身のようにも見えます。

【画家・瀧下 和之さん】
「毎年、作品数が多くなって、どんどん集中できているかなと思います。時代に流されずに流行りとか気にせず、自分のスタイルを深めていこうと思っています」

美里町のアトリエで思いのまま、同時進行で描く日々が続きます。

鶴屋百貨店で開催中の瀧下さんの新作展は1月20日(月)までです。

テレビ熊本
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