高速で駆け抜けるマシンのエキゾーストノートに、オイルとタイヤの焼ける匂い… 

モータースポーツファンを惹きつけてやまない、生で見るF1レースの醍醐味だ。

そのF1が2020年11月、トルコに帰ってくる。F1の主催者は8月25日、今季のF1カレンダーにトルコとバーレーン2戦、アブダビでの最終戦のあわせて4レースを追加すると発表した。

これで今季のF1は全17レースで争われることが確定した。

9年ぶりの開催

トルコGPは2005年から「イスタンブール・パーク」サーキットで行われてきたが、2011年を最後にF1カレンダーから外された。

ところが、2020年は新型コロナウイルスの影響で日本GPをはじめ多くのレースが中止となり、当初のレースカレンダーは大幅な変更を余儀なくされ、9年ぶりのトルコGP復活が急きょ実現したのだ。

開催発表から間もない9月1日、トルコGPのサーキット運営会社が現地で開いた記者会見を取材した。新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中でのトルコGP復活への意気込みを紹介する。

ピットガレージで行われた記者会見
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サーキットはイスタンブール市内中心部から車で2時間ほどの開けた場所にある。現地に到着して真っ先に目に入ってきたのは、至る所に設置された「F1トルコGP」の旗だった。

早くも「FORMULA1 DHL TURKISH GRAND PRIX 2020」と印刷されており、サーキット側の意気込みが伝わってきた。

旗にはしっかりと「F1トルコGP 2020」と印刷されていた

観客10万人の動員に自信

気になるのは観客の動員だ。

今季のF1は当初の予定より4カ月遅れて7月に開幕し、これまでに7戦を消化したが(9月4日現在)、いずれも「無観客」で行われた。

こうした中、サーキット運営会社の社長、ヴラル・アク氏は記者会見で11月のトルコGPは観客を入れて開催すると明言した。その数、実に10万人。

トルコの新型コロナウイルスの感染者は累計で約28万人(9月4日現在)。感染対策はどうなっているのだろうか。

記者会見するイスタンブール・パーク運営会社社長 ヴラル・アク氏

イスタンブール・パーク運営会社社長 ヴラル・アク氏:
「われわれは観客席の最大収容人数が、オープンエリアを含めて22万人であることを知っている。安全上の理由から一部の施設を閉鎖するが、およそ10万人がソーシャルディスタンスを守りながらレースを観戦できるはずだ」

つまり感染対策として入場者を半分以下に抑えるというのだ。

アク氏によると、トルコGPの前に行われるトスカーナGP、ロシアGP、ポルトガルGPも観客を入れて行う方向だが、それぞれ3~5万人だと伝えられている。

トルコGPが目指す10万人は突出している。ただ、今後の感染状況次第では無観客での実施もあり得るとしている。

10万人の観客動員を目指す

ヴラル・アク氏:
「まだ2カ月半ある。海外からも2万人はやってくるだろう。開催時期のホテル予約も非常に好調で、非常に大きな経済効果をもたらすだろう」

チケット価格は1日あたり約450円!?

感染拡大で打撃を受けた地元経済への波及効果に期待を示すアク氏だが、チケット価格についても取材陣を驚かせた。

ヴラル・アク氏:
「F1には特定の基準があり、チケット価格もその基準に合わせている。ただ、われわれはこのイベントで利益を得ようとはしていない。そのため、チケット価格は3日間通しの最安のもので90リラ、1日あたりに換算すると30リラとなる。来週には発売し、直ぐに売り切れるだろう」

30リラは日本円で450円ほど(※注)、まさに破格といえる。

そもそもトルコではモータースポーツ文化はそれほど根付いておらず、F1でさえファンは多いとは言えない。過去に7回開催されたトルコGPも、年を重ねるごとに観客は減っていったのが実情だ。運営側としては破格チケットを用意してでも、できるだけ多くの人数で席を埋めたいのだろう。会期中には会場内で多くのF1関連の集客イベントを実施するという。

※1トルコリラ=14.23円(9月4日現在)

コースのコンディションは「F1基準」

一方で2011年以来F1レースが行われなかったコースの状態が懸念されるが、これについてもアク氏は自信をのぞかせる。

ヴラル・アク氏:
「先日、F1の責任者の1人が来て路面のアスファルトとインフラをチェックしたところ、ほとんどオープンした時のようだと太鼓判を押してくれた。今後、本格的なチェックが行われるが、アスファルトを2週間ほどで整備する用意もできている。我々は毎日レースが行われているかのように常に準備をしてきたので、トルコGPを開催することができるのだ」

スターティンググリッドもきれいに塗り直される

イスタンブール・パークは2005年にオープンした比較的新しいサーキットで、F1には数少ない反時計回りのコースだ。

特に「ターン8」と呼ばれる複合高速コーナーは、ドライバーの体に強烈なGがかかることでも知られ、F1でも最難関コーナーのひとつとされている。

トルコGPの「完全復活」を目指す

アク氏は2011年以来、トルコGPの復活をずっと望んできたという。

実際には2021年にF1と長期契約を結ぶ交渉を予定していたものの、現在の開催国が撤退しない限りトルコの新規追加は難しかった。それが新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で状況が一転したわけだ。

ヴラル・アク氏:
「契約は今年1年だ。ただ、今回のレースが成功すれば来年以降の長期契約も視野に入れている」

トルコ政府から運営を委託されたヴラル・アク氏(左から2番目)

アク氏によると、トルコ政府からはレースの運営を完全に委託され、財政的にも政府の補助は一切受けないという。

トルコGPの決勝は11月15日。

トルコで新型コロナウイルスの感染者数が再び増加の傾向を見せる中、果たして10万人の動員は本当に可能なのか?

そもそも、開催できるのか?本番まで2カ月あまり、今後の動向から目が離せない。

【執筆:FNNイスタンブール支局長 清水康彦】