能登半島地震からまもなく1年。被災地の人々はどのような思いを胸にイブを迎えているのかーー。被災地の1つ、石川・輪島市で店主として働いていた飲食店が全壊した男性を取材した。
能登の食材を生かした料理で人気だった「のと吉」は地震で全壊
クリスマスイブを彩るきらびやかな光でいっぱいの列島各地。

東京駅すぐ近くでは、地震と豪雨の被災地、石川・能登地方の樹木や能登の工芸技法が使われたクリスマスツリーが人々の目を楽しませている。

一方、被災地の1つ、石川・輪島市では、大きな被害が出たスーパーのかつて総菜コーナーがあった場所に、復興への思いがこもったツリーがあった。

23日、地元食材を丁寧に下ごしらえする男性は、震災前、輪島市内で飲食店「のと吉」を営んでいた坂口竜吉さん。

「のと吉」店主・坂口竜吉さん:
明日は地元でクリスマス会があるので、そこの出張料理の準備(を行っている)。これは一回煮含めた里芋を揚げたもの。「里芋の唐揚げ」を食べたいというので。(Q.明日のメインは?)能登牛のローストビーフを。
料理作りにいそしんでいたのは、知り合いの店の厨房(ちゅうぼう)。
自宅を兼ねていた坂口さんの店のあった場所に連れて行ってもらった。

坂口さん:
ここに…正面に店が(あった)。ちょうど更地になっているところ。

創業以来、能登の食材を生かした料理で人気だった坂口さんの店は、元日の地震で全壊し、営業を続けることはできなかった。

青井キャスター:
今は1年がたとうとしていますが、この時間軸は?

坂口さん:
先が見えないという不安の中にずっといるので。もう1年になるのに、何もできていないのかという…。

そこで、現在は出張料理人として県内外に出向き、妻と3人の子どもを養う日々を送っている。
ただ、その家族は坂口さんが残る輪島ではなく、金沢市で避難生活を続けているという。

坂口さん:
子どもたちはもう金沢の環境に慣れてしまったので、家族一緒に生活したいというのが一番の思いなので…。
震災からの1年で深刻化しているのが、より若い世代の被災地離れ。

この1年の輪島市全体の人口減少率が9.3%なのに対し、30代では14.7%、20代で18.6%、10代では22.9%にも上っている。

「輪島を離れて、金沢で仕事を探す選択肢を常に持っている」と話す坂口さん。
このまま輪島にとどまるべきか悩んでいる。
家族と離れ友人宅で料理を振る舞う坂口さん
家族と離れたまま迎えるクリスマスイブ。
坂口さんは、腕によりをかけた自慢の味を友人宅でのパーティーに届けている。
輪島市にあるそのご友人宅、「谷川醸造」の谷川さん夫婦のお宅に青井キャスターがお邪魔した。

青井キャスター:
こんばんは。今は何を作られていますか?
坂口さん:
こんばんは。サラダを作っています。
青井キャスター:
クリスマスを迎えましたが今どんなお気持ちですか?
坂口さん:
いい一日になればいいなって。
青井キャスター:
ご家族は金沢にいらっしゃるんですよね。
坂口さん:
一緒にクリスマス迎えれば良かったなとは思います。

輪島市内で同じように商売をしている仲間たちに声をかけて集まってもらったという「谷川醸造」の谷川千穂さん。
「この1年、皆さん大変な思いをしているので、この時だけでもちょっと忘れて、楽しい時間を過ごしていけたらいけたらいいかなと思っています」と話し、坂口さんの料理を楽しみながらのクリスマス会を満喫するという。
(「イット!」 12月24日放送)
能登半島地震の発生から1年の節目にあたり、被災地域である石川テレビと富山テレビはそれぞれ報道特別番組を放送します。
○富山テレビ
「ライブBBTスペシャル 命と未来をまもる~能登半島地震から1年」
12月31日(火)午後3時30分~午後4時50分
○石川テレビ
「能登とともに〜能登半島地震から1年〜」
1月1日(月)午後0時半~午後1時40分
両番組はFNNプライムオンラインのYouTubeチャンネルでも生配信されます。