アーティスト村上隆の新作展覧会が、ロンドン中心部にあるガゴシアン・ギャラリーで始まった。ロンドンで大規模な展覧会を開催するのは、実に15年ぶりだ。村上氏がFNNの単独インタビューに応じた。
原画の魅力と村上隆の再解釈
この展覧会の目玉作品は「洛中洛外図屏風:岩佐又兵衛RIP」(2024年)と題された全長13mもの巨大な絵だ。「洛中洛外図」とは、京都の景観を俯瞰で書いた絵を意味し、この作品は江戸時代の画家・岩佐又兵衛(1578-1650)の作品「洛中洛外図屏風(舟木本)」をモデルにしている。

17世紀に描かれた又兵衛の作品は、六曲一双の屏風に京都の市街と郊外が緻密に描かれている。村上の作品は一部にAI技術を使用し、風神雷神などの神々や、村上の代表的なキャラクターを登場させることで、作品をカラフルに再構築している。
AIを作品に取り入れたことについて、村上は次のように語る。
「この作品はかなりの部分が削られてしまっていたため、模写する際に絵がぼやけてしまったり線がなくなったりした。そこを補完するために、スキャンしてAIに少し計算させて何種類かのアウトラインを作ってもらい、その中で自分がこれだと思うものを選んでコラージュした」

村上隆はムーブメント「スーパーフラット」を提唱したことで知られる。ロンドンで作品を発表する意義について、村上は次のように語る。
「日本で(作品を)発表してもほぼリアクションないし、99.9%日本で売れないので、活動拠点であるこちらで発表することを常に考えて活動している」
「洛中洛外図屏風:岩佐又兵衛RIP」はギャラリーの壁一面を占め、その緻密なディテールは観る者を圧倒する。村上の色彩豊かなキャラクターたちが作品の各所に散りばめられているのも見どころだ。
展示には風神雷神をモダンに描いた作品も含まれ、真っ白な壁に飾られたそれらの作品は、村上の鮮やかな色使いとユーモラスなアプローチによって、空間に明るさと遊び心をもたらしている。
「日本の美術史に触れているのもいい」
村上隆の作品がロンドンで人気があることは、ギャラリーと連動したポップアップショップに長蛇の列ができていることからも分かる。ギャラリー近くのバーリントン・アーケードでは、200枚限定のTシャツを購入するために、ファンたちが1時間以上も並んだ。

訪れたファンは「彼の色彩がとにかく好き。アートに物語性があるのもいいし、この展覧会が日本の美術史に触れているのもいい」と話す。Tシャツやグッズを購入した人は「みんなに見てもらえるように、もう少し暖かくなるまで待ちます」とTシャツの着用できる季節を楽しみにしていた。
展覧会は2025年3月8日まで開催される。
(FNNロンドン支局 ライアン・キーブル)