特殊詐欺の被害を未然に防いだとして、新潟県胎内市にあるスーパーの男性店員が警察に表彰された。どのように特殊詐欺の被害を防いだのか。被害を防いだ店員と、被害を免れた男性に当時の状況を聞いた。
店員が声かけるも…“通信会社”名乗る相手を信用
「詐欺だと全然思っていないです」
こう話すのは、特殊詐欺の被害を免れた新潟県胎内市に住む80代男性だ。

11月6日、男性のもとに実際に契約している通信会社を名乗り、サイトの未納料金を請求するメールが届いた。
その後、男性はメールに記載があった電話番号に連絡。複雑な説明を受けた末に、電話口の男から指示が出されたと明かす。
「電話を切らないで、スーパーのATMからお金を下ろしてという話だった」

男性は指示された通り、電話をつないだまま胸ポケットにスマホを入れ、自転車で近くのスーパーマーケットに行き、ATMで現金約10万円を引き出した。
“電話番号”検索し警察へ通報!被害を未然に防ぐ
電話をしながらATMの操作をしていた男性。その様子を見ていたのが、ウオロク中条店の金子雄太さんだ。

金子さんは当時の男性の様子について「通帳を持っていて、このATMは通帳を入れる機能がないが、それを入れようとしていて、さらに携帯で電話もしていたので、ちょっと怪しいなと思った」と振り返る。
勤務中だった金子さんは、ATMを利用していた男性の様子がおかしいことに気づき、声をかけた。
しかし、男性は電話の相手を信じ込んでいて、金子さんが「大丈夫ですか」と尋ると、男性は「問題ないところからの電話なので大丈夫だ」と答えたという。
男性は当時を振り返り、「これは自分がいつも携帯電話料金を引き落とししている会社だから、これは確かだなと思った」と電話口の相手を疑わなかった理由を話した。

そこで金子さんは、男性の携帯電話に表示されていた相手の電話番号をインターネットで検索。すると、“詐欺”という検索結果が出てきたという。
詐欺の可能性が高いと考えた金子さんは上司に相談し、店舗から警察に通報。
通報してから警察が到着するまでの間に男性は店の外に出て行ったというが、金子さんは「警察が到着するまでもずっと電話をしていて、メモをしていた。どこかに行かないように一緒にいた」と明かす。
警察が男性のもとに到着し、電話を代わると、電話口の男が「警察に話すことはない」と電話を切ったことで特殊詐欺だと判明した。
特殊詐欺被害の認知件数増…「勇気持って声がけを」
特殊詐欺の被害を未然に防いだとして表彰を受けた金子さん。
「また何か怪しい動きがあれば、お声がけをしていくようにするし、周りの方もやっていければと思う」

被害を免れた男性は金子さんに感謝しているとした一方、「やはり浅はかだった。信じたところからきてもやっぱり一応確かめることが一番大事」と反省していた。
新発田署管内では2024年、11月末時点で14件・1967万円の特殊詐欺被害が認知されていて、2023年の同じ時期の7件・731万円と比べて件数は倍増、被害額は倍以上となっている。
新発田警察署の渡辺寿智署長は「高齢の方がそわそわしていて、電話をしながら動いているような状況を目にしたら、一歩踏み込んで、勇気を持って声がけをしてもらうということがあれば、もっと特殊詐欺も減るのではないか」と被害防止に向けた注意と周囲の協力を呼びかけた。
(NST新潟総合テレビ)