大手都市銀行の元行員が銀行をだました疑いで逮捕された。
かつて、銀行員だった男が、銀行をだますという、まるでドラマのような事件。『金融のプロ』を自認する男は逮捕前、関西テレビの取材に対し「銀行をだませたワケ」を語っていた。
■元銀行員で『銀行融資の審査』を知り尽くしていた男 銀行を欺く

粉飾決算で、銀行からおよそ5,000万円の融資金をだまし取った詐欺の疑いで5日、逮捕された経営コンサルタントの平井登容疑者(50)。
平井容疑者は2021年、一緒に逮捕された大阪市淀川区の内装業「ベンリッチ」の社長・山口博巳容疑者(59)と共謀して、会社の業績が赤字であるにも関わらず、売上高を水増しするなどして黒字のように見せかけて、銀行からおよそ5000万円の融資金をだまし取った疑いが持たれている。
元銀行員で、銀行融資の審査を知り尽くしていたことを悪用し銀行を欺いていたのだ。
■1998年に大手都市銀行に就職 トップクラスの早さで昇進 退職後『経営コンサルタント』に転身

1998年に地元・長野県の大学を卒業し、大手都市銀行に就職した平井容疑者。
同期数百人の中でもトップクラスの早さで管理職になったというが、2008年1月、退職。 顧客の誘いに乗って、経営コンサルタントに転身した。
■銀行から融資を引き出すことを任された男 転職先で『赤字体質』に直面

この時、転職した先が、今回、粉飾決算の舞台となった内装関連の企業「ベンリッチ」を含む企業グループ。 コンサルタントと言いながら、銀行の融資を引き出すことを中心に任された平井容疑者がすぐに直面したのは、赤字体質だった。
平井登容疑者:(グループの)一番大きな会社が大きな赤字を出したのね。大きな取引先から取引を切られて、だいぶ赤字になって。そこが1つの大きな転機。それと時を同じくしてみんな(グループ全社)しんどくなった。
中核企業が大口の取引先を失い、グループ全体が赤字に。
■延命策として「粉飾決算」を重ね 銀行融資を継続的に引き出す仕組みに手を染める

『このままでは全社が倒産する』 そんな状況で平井容疑者が手を染めた延命策が、グループ全体で粉飾決算を重ねて銀行融資を継続的に引き出す仕組みだった。
平井登容疑者:売上高のかさ上げだったり、不良資産、ベンリッチでいったら不良在庫の処理だったり、そのようなことを方法として指導させて頂きました。
Q粉飾決算の評価としてははなまるに近い?
平井登容疑者:意地悪な質問だなあ。(Q客観的に見てどう?) はなまるです。
■金融のプロ自認する男 グループ企業の社長に「虚偽の黒字決算書」でっち上げる手法を指南

元銀行員の平井容疑者は、銀行が融資の審査で何に注目し、どこまで調べるかを熟知。 その経験から、グループ企業の社長たちに虚偽の黒字決算書をでっちあげる手法を指南。
そして、粉飾された決算書を元にだまし取った融資金は、グループ全体で共有。返済時期が来たほかの融資の返済に充てる、自転車操業を繰り返していたとみられる。
■粉飾決算が露呈 グループのほぼ全ての会社が倒産 負債は返せる見込みなし

平井登容疑者:融資金を詐取するというのは粉飾決算の目的ではなくて事業継続を前提とした時間稼ぎで、なんとか事業再生をしてお借りしたものを返していくと。その気持ちには揺るぎはなかった。
こう動機について語ってはいるものの、粉飾決算が露呈。 グループのほぼ全ての会社が破産。 負債総額はおよそ9億5000万円に膨らんでいて、返せる見込みはない。
■『実行したのは各社長』自分は罪に問われないと豪語

なぜ、こうも簡単に銀行は騙されてしまったのか、平井容疑者は『銀行をだませたワケ』をカメラの前で語った。
平井登容疑者:金融機関の融資能力の低下です。あ、言っちゃったわ。これあかんやろ。
Qもしご自身が行員だったらベンリッチの粉飾(決算)は見抜けていましたか?
平井登容疑者:難しいかな。
Qそれだけ上手な(粉飾の)指南をされていたということか?
平井登容疑者:お恥ずかしい限りです。
自らの能力を誇示したうえで責任を社長たちに擦り付ける姿勢を見せた。
Q刑事罰を受けるリスクは考えなかったのか?
平井登容疑者:当然、それは常に考えています。粉飾(決算)をするに至った前提は、各社の放漫経営です。赤字を垂れ流したこと、これが前提であって、そのための手段の1つが粉飾(決算)。刑事的な責任については、各社長にあると思います。
あくまで実行した社長たちに責任があって、自分は罪に問われないと豪語。
■やり玉に挙げられた社長 食い違う主張

やり玉に挙げられたベンリッチの社長・山口博巳容疑者は逮捕前の取材に対し「(平井容疑者の主張は)間違っている」と語った。
Q平井容疑者の主張は合っていますか?間違っていますか?
山口容疑者:僕の中では間違っていると思います。
Q平井容疑者は、実行はあなただと言っていますが?
山口容疑者:そこもちゃんと調査した上でお答えさしてもらいます。
Q平井容疑者が粉飾を指示して、金融機関から融資を騙し取ることを提案したじゃないですか。当時それがこれは詐欺罪に当たるという認識が全くなかったといえますか。
山口容疑者:そこがね…調査中なので。
Qそこは思いの部分だと思いますが?
山口容疑者:そこもちょっと、わからないです。
Q当時を振り返っても思い返せない?
山口容疑者:というところもありますし。
■「金融機関出身者としてモノを申し上げるとすれば、これは金融機関も悪い。お互いさま」

警察は、捜査に支障があるとして2人の認否を明らかにしていないが、平井容疑者がコンサルとして関わっていたほかの会社でも余罪があるとみて捜査している。
平井容疑者は、取材の最後に、カメラに向かってこう吐き捨てた。
平井登容疑者:盗人猛々しいという部分が出てくると思うが、金融機関にも責任があると思う。金融機関出身者としてモノを申し上げるとすれば、これは金融機関も悪い。お互いさま。
(関西テレビ 2024年12月5日)