モーリシャスの座礁事故で日本の技術に期待

インド洋のモーリシャス沖で座礁した日本の貨物船から重油が流出した事故。1カ月が経った現在も、ボランティアや各国の支援で油の除去作業が行われている。

そのような中で、東京・大田区の繊維メーカー「エム・テックス」が独自に開発した、油だけを吸い取る「マジックファイバー」の効果が期待を集めている。
 

2015年に創業した「エム・テックス」は、これまで大量生産が難しいとされていた直径が1~1000ナノメートル(nm)の繊維状物質(ナノファイバー)の製造に関する特許を取得し、「マジックファイバー」という油吸着材を商品化した。

ナノとは10億分の1のことで、「マジックファイバー」の繊維はヒトの髪の毛の100分の1程度の細さだという。
 

出典:エム・テックス(以下全て)
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「マジックファイバー」の原料はポリプロピレンなど一般的な合成樹脂で、配合などによって撥水性や抗菌性、断熱・吸音など様々な特性を持たせることが可能だという。

油を吸い取るが水は吸わない特徴があり、昨年8月の佐賀豪雨で鉄工所の油が流出した事故に使用された実績がある。また昨年10月に宮城県大崎市で川が氾濫し、油が流出した際も回収作業にも使われた。

昨年の佐賀豪雨では鉄工所から油が流出した

そして7月25日に発生したモーリシャスの座礁事故では、流出した重油が漂着したマングローブ林などへの影響が指摘されている。

日本からは8月19日に国際緊急援助隊の第2陣が成田空港を出発し、この「マジックファイバー」も現地に持参した。

環境保護のカギとなりそうな「マジックファイバー」。他の油吸着剤と比べて何がすぐれているのか?なぜモーリシャスの事故に使われることになったのか? 担当者に聞いてみた。

油1000トンを20トンの吸着剤で回収

――まず「マジックファイバー」のメリットは?

弊社の製品の大きな特長は3つあります。

1、「水を一切吸わずに油だけを吸う」
他社製品はどれも水を吸ってしまいますが、マジックファイバーは一切水を吸いません。水を吸ってしまうと、油の吸着量が減るほか、水に沈んでしまって回収しにくくなります。

2、「吸った油を垂らさない高い保持力」
他社製品は1度吸った油を保持しきれず、放置していた時、あるいは回収時に油を垂らしてしまいます。その為、使用する油吸着材の量が増えるのと、油の回収作業を何度もしなければならず、作業効率が悪くなり、また二次汚染のリスクを伴います。マジックファイバーは一度吸った油を垂らしませんので、回収は容易です。
 

3、「少量で大量の油を吸着する」
マジックファイバーは30㎝×30㎝、重さ20gで1リットルの油を吸います。コンパクトで軽く、それでいて大量の油を吸うため、災害地に送る際、1コンテナに積載できる量は他社製品の油吸着量を大きく上回ります。

また、昨年の佐賀県大町町での災害では、油の回収作業をするのにボートを使用したため、コンパクトなことから積載しやすく、また回収しやすいというメリットが高く評価されました。この時の災害では、マジックファイバーをメインで使用して災害対応をし、結果として9割の油吸着材が弊社のマジックファイバーでした。


――例えばモーリシャスで1000トンの油を回収するならマジックファイバー20トンとなる?

おっしゃる通りです。

油が漂着したマングローブ林

政府関係者から問い合わせがあった

――今回モーリシャスで活用されるようになった経緯は?

佐賀県の災害でメインで使って頂いて以降、メディアにも沢山取り上げて頂いて、様々な方々に弊社のことを知って頂くようになりました。その為、災害等があった時に、お問い合わせを頂くことが多く、今回もモーリシャス事故があってから一般のユーザー様からは勿論、政府関係の方々から問い合わせがありました

また、事故のニュースを見て、弊社も何かできないかと考えており、問い合わせと弊社の考えも一致し、今回の流れとなっていきました。


――海岸に漂着した油など、どんな種類・状態でも吸着できるの?

おっしゃる通りです


――これからモーリシャス事故ではどんな取り組みをする?

第2団の派遣団の方々が、マジックファイバーを使用し、その結果どうであるかなどのレポートが上がってきます。それをもとに、追加で送るものの量やタイミングなどを考えていきます。また、現地のボランティアの方々ともやり取りをしており、頂いた情報をもとに、今後の方針を考えていきます。
 

マジックファイバーイメージ

エム・テックスは「マジックファイバー」を、吸音材・断熱材・アパレル商材・マスク・エアフィルター・水耕栽培用品・人工羽毛などに使うための研究開発を進めているという。ちなみにマスクは一般的な繊維よりはるかに細いため、通気性に優れるものができるそうだ。

こうした日本の技術が、「インド洋の貴婦人」とも称され、豊かな自然とサンゴ礁で知られるモーリシャスの海を守るために役立つことを期待したい。