2024年6月、新潟市中央区にあるブランド品などの買い取り専門店で、現金を奪おうとした強盗未遂などの罪で起訴され、有罪判決が言い渡された20歳の男。事件のきっかけはSNSで見つけた、いわゆる「闇バイト」だった。金欲しさから指示役からの指示に従い、仮面ライダーの悪役「ショッカー」のような衣装を身にまとい犯行に及んだ20歳の若者は、なぜ「闇バイト」に応募したのか。指示役とのやりとりが裁判で明らかとなった。

逮捕時は否認も…初公判で起訴内容認める

強盗未遂と窃盗の罪で起訴された名古屋市の長友龍斗被告(20)。

長友龍斗 被告
長友龍斗 被告
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起訴状などによると、長友被告は2024年6月19日、新潟市中央区のドラッグストアで包丁を盗み、その後ブランド品の買い取り専門店で男性店長に包丁を突きつけ、「金を出せ」などと脅したものの、何も取らずに逃げた罪に問われている。

逮捕当初、警察の調べに対して「身に覚えがない」と容疑を否認していた長友被告だったが、9月4日に新潟地裁で行われた初公判では…

長友龍斗 被告:
間違いありません

こう話し、起訴内容を認めた。

借金をきっかけに闇バイトに応募

また、冒頭陳述で検察側は長友被告が生活費の支払いや借金の返済に苦しみ、いわゆる「闇バイト」に応募したと指摘。そして…

検察側:
被告人は6月9日ごろから、SNSアプリ「テレグラム」を通じて連絡を取るようになった。闇バイトの仲間と見られる相手とのチャット履歴には、「新潟の叩き」など強盗を表す「叩き」という隠語を使ったやりとりが残っていた。その後、被告人は指示役からの指示を受けてショッカーの衣装を用意し、レンタカーで新潟市内に向かい、犯行に及んだ

イメージ
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借金の返済に困窮したことが、闇バイトへ応募する一つのきっかけだったという長友被告。

なぜ、20歳の若者が借金を抱えることになったのか。その理由は、10月11日に行われた2回目の公判で明らかとなった。

弁護側:
なぜ借金があったのか?

長友龍斗 被告:
入社予定だった会社の車を無断で借りて事故を起こした

弁護側:
どのくらいの金額?

長友龍斗 被告:
270万円ほど

長友被告は当時、入社予定だった会社の車で事故を起こし、約270万円の借金を背負っていた。その返済に苦しんだことが闇バイトに応募するきっかけだったという。

「死ぬかやるか脅された」指示役とのやりとり

闇バイトはX(旧ツイッター)で知ったという長友被告。指示役とのやりとりも裁判で明らかとなった。

事件現場(新潟市東区・2024年6月)
事件現場(新潟市東区・2024年6月)

弁護側:
何をするか聞いていた?

長友龍斗 被告:
詳しいことはわからなかった。代行の運転する役と聞いていた

弁護側:
いつ強盗をするとわかったか?

長友龍斗 被告:
被害店舗に入る1時間前に指示役から強盗をする指示があった

弁護側:
いくらもらえると聞いていたか?

長友龍斗 被告:
5万円ほどもらえると聞いていた。今思うと、割にはあっていない

弁護側:
なぜ断らなかったのか?

長友龍斗 被告:
指示役から「殺すぞ、死ぬかやるか選べ」と指示され、自分の命に危険を感じ怖かった

弁護側は、長友被告が広汎性発達障害、いわゆるADHDを患っていて、思いついたことを行動しやすい性格にあったなどとして、情状酌量を求めた。

衣装は万引き 高速道路は強行突破…

一方で、検察側は長友被告の悪質性を指摘。

犯行時に着ていた「ショッカー」のような衣装や自宅のある名古屋市からの移動手段についても質した。

新潟地裁
新潟地裁

検察側:
犯行時に使用した衣装はどのようにして入手した?

長友龍斗 被告:
服は新潟に来る前に愛知県で、店から万引きし用意した

検察側:
愛知県から新潟県に来る時はどのように移動したか?

長友龍斗 被告:
レンタカーで高速道路を使って来た

検察側:
高速道路の料金は清算した?

長友龍斗 被告:
払っていない。高速道路の出口のバーを強行突破した

検察は懲役5年を求刑

さらに長友被告には、特殊詐欺のいわゆる受け子を含む詐欺や窃盗による前歴が4件あるほか、今回は前歴による保護観察期間中の犯行だったことも明らかとなった。その上で…

検察側:
被告人は犯行後の6月21日に闇バイトの仲間に「叩き気になる」とメッセージを送っている。また、自分から闇バイトを募集するような書き込みもしている

自ら闇バイトに応募していることや犯行後のチャット履歴などから、検察側は再犯の可能性が極めて高いとして懲役5年を求刑。

最後に裁判官から言い残したことがないか問われた長友被告は次のように語った。

長友龍斗 被告:
自分勝手な行動で警察や地域の人に迷惑をおかけして申し訳ない。二度と犯罪はしない

言い渡された“有罪判決”

迎えた10月28日の判決公判の日。上下グレーの作業服でまっすぐ前を見て、入廷した長友被告は、表情を変えないまま証言台に立った。

新潟地裁 塚本友樹 裁判官:
主文、被告人を懲役3年に処する。5年間刑の執行を猶予し、その猶予の期間中被告人を保護観察に付する

塚本裁判官は、自らSNSを通じて闇バイトに応募し、事前に凶器や服を準備するなど犯行の実行役として、重要な役割を果たしたと指摘。さらに…

新潟地裁 塚本友樹 裁判官:
被害店舗の店長は、黒色のキャラクターコスチュームを頭部までまとった被告人に目の前で包丁を突きつけられ、大きな精神的苦痛を与えられた。犯行は人の生命身体を脅かす粗暴で危険な様態。ただ、被告人は犯行計画の全貌を知らないまま指示役の指示に従った、いわば「使い捨ての駒」のような役割であり、従属的な関係にとどまる。また、被告人が犯行を認め、反省の態度を示し、二度と罪を犯さない旨を誓約していることや若年で前科を有していないことなどを考えれば、今回に限り、刑の執行を猶予し、社会内で更生する機会を与えるのが相当である

最後に裁判官から「二度と罪を犯さないようにしてください。次は、執行猶予はありません」と言われた長友被告は、まっすぐ裁判官を見つめ深くうなずいた。

生活費や借金返済に窮したことから、SNSを通じて「闇バイト」に応募し、強盗未遂事件まで起こした長友被告。

特殊詐欺や窃盗の前歴がある中で、裁判官から文字通り“最後のチャンス”を与えられたが、「闇バイト」に手を染める怖さを感じたに違いない。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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