「通販サイトで購入いただいた商品が欠品中のため、PayPayで返金します。この認証コードを入力してください」― 返金手続きのため、カスタマーセンターの指示通りに入力した番号が、実は「送金する額」だった-という詐欺が急増している。
手軽さから多くの人に普及している「キャッシュレス決済アプリ」を悪用した手口で、東京都内の今年の総被害額は急増していて1億5000万円に上っている。高齢者のみならず若者まで「全世代型」がターゲットという悪質かつ巧妙な手口を取材した。
「返金はPayPayのみ対応」“認証コード”入力したつもりが実は“送金額”
都内の40代の女性は今年5月、ネットで検索した格安の通販サイトで「アイドルチケット」を1万5000円で購入し、銀行振り込みで入金した。業者から「24時間以内に商品の発送を手配いたします」とメールが届く。きわめて「普通」の対応だ。

その後ほどなくして、「商品欠品のお詫び」というメールが届く。「お返金の手続きは弊社の公式LINEまでご連絡をお願い致します」「できるだけ早く返金いたします」と、LINEでのやりとりに移行する。ここでも誠意があるような、丁寧な文面だ。
女性がLINEで連絡すると“カスタマー・センター”というアカウントから「銀行カードでの返金には対応しておりません。電子返金はPayPayのみで対応しています」とのメッセージが届き、通話でのやりとりを求められる。

女性は担当者から言われるがまま、送られてきたQRコードを読み込み込むとPayPayの画面に移行し、認証コードとして「69985」「79998」など5桁の数字を入力するよう指示される。

ところが、女性が入力した「69985」「79998」は認証コードではなく、PayPayで“送金する額”。「69985」=6万9985円・「79998」=7万9998円だったのだ。女性は知らないまま、3回であわせて約25万円を送金させられていた。
ネット口座でも・・知らぬ間に1000万円を送金
その後、担当者は間髪を入れずに、「エラーがあり返金手続きができない」などと説明。女性は「ネット口座があれば、送金するので指示通りに操作して欲しい」と言われるままに、同じ手口で「返金コード」と称した「4900010」など7桁の数字を2回にわたり入力した。

これも数字は“送金金額”で、490万円のこと。2回合わせて980万円を送金させられたのだ。
もともとの「通販サイト」も詐欺グループが作った「偽物」なので、
1)「ニセ通販サイト」での商品代 1万5000円
2)「PayPay」での送金3回 およそ25万円
3)ネットバンキングでの送金2回分約980万円
の3回に分けて、あっという間に1000万円あまりを騙し取られていた。
女性は「あくまで返金手続きで、指示通りに操作すれば戻ってくると思った」と話しているという。
「ターゲットは全世代」被害総額1億5000万円
都内では、同様の被害が去年40件ほどだったのが、今年は138件と急増。被害総額は1億5000万円と爆発的に増えている。被害者は10代~70代と幅広く、捜査幹部は「ターゲットは全世代。PayPayなど世の中に浸透してきたキャッシュレスアプリを利用した悪質な詐欺」と警鐘を鳴らしている。

この幹部は「購入時は銀行振り込みなのに、返金は決済アプリのみということがおかしいポイント。まず詐欺を疑ってほしい」と話す。メッセージの日本語の文章が少しおかしかったり、電話先の担当者の日本語も片言だったケースもあるといい、警視庁は外国人詐欺グループによる犯行の可能性もあるとみて捜査を進めている。
【執筆:フジテレビ社会部警視庁担当 風巻隼郎】