ジャンルを超えた審査が特徴の国際ダンスコンペティションの小学校高学年の部で2024年夏、秋田・能代市の小学生バレリーナが出場70組の頂点に輝いた。天真らんまんな素顔の一方で、小学生とは思えない大人びた表現力を見せる少女に注目だ。
「踊りの神様に愛されている」
67年の歴史がある秋田・能代市の「たなはしあゆこバレエスクール」には、子どもから大人まで約30人が通っている。取材した日は9月23日の発表会に向けて、子どもたちがレッスンに励んでいた。

12歳の工藤理瑛さんは、3歳からスクールに通い始め、クラシックバレエやモダンダンスを習い、さまざまなコンクールにも出場している。
踊りを始めたきっかけについて、工藤さんは「私には姉が2人いて、どちらもバレエを習っていた。スクールの外からずっとのぞいて、どうしてもやりたくて憧れて、お母さんに頼んで始めた」と話す。
幼い頃から大好きな踊りを続け、めきめきと上達する工藤さん。

指導するたなはしあゆこバレエスクールの棚橋絵里奈代表は、「本人も踊りをすごく愛しているので、踊りの神様にも愛されているような感じ。筋力がものすごく強くて、何があってもへこたれない、練習を続けるという強みがある」と工藤さんの能力を評価する。

先生お墨付きの筋力を生かして、片脚を後ろに高く上げる技「アラベスク」も上達。最近は表現力も伸びてきた。
棚橋先生は「小さい頃はとにかく楽しく踊っていて、好きで好きでたまらないという感じだったが、年相応に本を読んだりして、深い内容を出せるようになってきたんじゃないかなと思う」と工藤さんの成長ぶりを分析する。
国内外の頂点に歓喜!特別賞も受賞
その成長ぶりを表すうれしい出来事があった。8月に開催された「東京なかの国際ダンスコンペティション」の小学校高学年の部で、工藤さんが国内外から集まった70組の頂点に輝いたのだ。

大会は、ダンスのジャンルを問わず「見る人に感動を与えることができるかどうか」を重点に審査が行われる。工藤さんはモダンダンスのオリジナル作品で、命のはかなさを表現し、技術面の特別賞も受賞した。

工藤さんは「びっくりして、本当に自分が1位なのかなと、叫んで飛び跳ねた」と喜びを語り、ダンスについては「踊りながら、自分も泣いちゃうくらいの勢いで、その気持ちになりきるということを意識して頑張った」と振り返った。
喜びの一方で悔いも残った。大会ではアラベスクでふらついてしまったり、ターンで軸がぶれてしまったりしたからだ。

23日の発表会でも同じ作品を披露するため、演技に磨きをかける。棚橋先生は、縮まった時のポーズで、顔の向きが気になるとアドバイスした。
工藤さんは「今持っている自分の力を精一杯出し切って、見てくれている人に感動を与えられるような踊りが踊れるように頑張りたい」と意気込みを語った。
「心も踊りもきれいなダンサーに」
そして迎えた発表会当日。会場には、リハーサルを終えて仲間と写真を撮る工藤さんがいた。

ステージに向かう気持ちを聞いてみると、「緊張と楽しみです」と返ってきた。

本番では、8月の大会で1位に輝いた作品「泡沫(うたかた)」が披露された。水面の泡のようにはかなく消えてしまう一瞬を、しなやかに表現する。
このプログラムは、秋田・大仙市出身で関東在住の米沢麻佑子先生によるリモートレッスンと、スクールの棚橋先生の指導のもと作り上げた。初めてのリモートレッスンに加え、今まで習ったことのない体の使い方や表現方法などに戸惑うことも多かったという工藤さんだが、大会からさらにブラッシュアップを重ねて発表会に臨んだ。
棚橋先生も舞台裏で優しく見守った。そして「これからもどんどん高みを目指して、成長していってくれたら」と将来への期待を口にした。

工藤さんは、ほかのプログラムでもさまざまな表情を見せてくれた。

練習ではつらいこともあるが、踊っている時は本当に楽しいという工藤さんは、「人に感動を与えられるような、心も踊りもきれいなバレエダンサーになりたい」と語った。
(秋田テレビ)