東京・中野区のシンボルだった「中野サンプラザ」。2023年に閉館し、跡地や周辺には複合施設が建設予定となっているが、この計画に波紋が広がっている。建設費用が当初試算の“倍”となる見通しなのだ。では何故このような事態に陥ったのか。
この記事の画像(13枚)三角形のデザインが特徴的な中野サンプラザは、1973年にオープン。結婚式や成人式の会場として利用されたほか、コンサートホールでは数々のアーティストが公演した。
中野のランドマークとして、地元民のみならず、多くの人に愛されてきた。しかし老朽化などによって、2023年7月に惜しまれつつ、50年の歴史に幕を下ろした。
2029年度完成予定だが…着工できず
そんな、中野サンプラザの跡地や周辺に建設予定なのが「NAKANOサンプラザシティ(仮称)」。地上61階、高さ262mの高層ビルに商業施設、最大7000人規模の大ホール、ホテルやマンション、オフィスなどが入る複合施設で、2029年度に完成予定となっている。
地元の人からも「中野にこういうのがあるんだなって、人が集まってくるでしょう。活性化すると全然違うからね」「(中野サンプラザの閉館で)町の雰囲気が寂れてるじゃないけど、寂しいなと思う。あるだけで中野が盛り上がるのかな」と期待の声が上がっていたが、まだ着工できていないというのだ。
建設費用が約2倍の「3539億円」に
当初の予定では、9月中に着工が始まっていたはずなのだが、9月30日に現場を訪れると、中野サンプラザは残されたまま。周囲に工事用のフェンスは設置されているが、重機は見当たらず、建物の解体作業も始まっていない。いったいなぜか。
理由は資材確保や人件費の高騰などによる、度重なる「建設費用の引き上げ」だという。事業計画が提案された当初、NAKANOサンプラザシティの事業費は約1810億円だったが、見直しが繰り返される度に増額していった。
2024年9月には、施工主から中野区に「さらに900億円以上増える」と伝達があり、当初の試算の約2倍となる、3539億円にのぼる可能性が出てきたというのだ。
中野区は当初、430億円の補助金を投じる予定だったが、建設費用の大幅な増額に区民はどう思っているのか話を聞くと「中野区全体が発展するかもしれないのでメリットはあると思うんですが、そこまでお金かけてやるべきことなのかな」「個人的には反対。こんな金があるんだったら他に使ってほしいと思う」という声が。
一方で「不確実性が高い世の中なので、最初に予定していた通りには進まないと思うので、想定金額に差ができるのは仕方ない。詳細を区民がわかりやすく理解できる説明であればいいと思う」という意見もあった。
区は再開発事業の見直しも検討
SPキャスターパックン:
市民の負担が増すのはやっぱり心配なんですけど、税収アップ、活性化。そして子供の屋内遊び場を作ったり。負担が増す分だけ、還元も期待されます。期待に応えていただきたいです。
青井キャスター:
それでは、度重なる費用の引き上げに区はどのように対応するのでしょうか。
東京・中野区担当者は「今回900億円以上の建設費用が増えるとわかったことで、計画内容や補助金額の見直しの検討が必要だとわかった」とし、今年度(2024年度)内の着工と2029年度中の完成の見通しが立たなくなり、再開発事業計画自体の見直しも視野に検討するということです。
そうした中、中野駅周辺の商店街で長年惣菜店を経営している店主からは、こんな切実な声もありました。
中野区で78年営業する「健康食卓 わしや」店長:
イベントとかコンサートがあると、お客さんがどかっと来るので全然違いますし。うちなんか特にお惣菜なので、買って帰られることが多かったので。1.5倍くらい違うんじゃないすかね。ある程度、人件費の高騰とかは予測できたとは思うので、それが理由でやりませんよっていうのは、ちょっとおかしいんじゃないかなとは思います。
さまざまな声が上がる中、再開発計画はどうなっていくのか、今後の動向に注目だ。
(「イット!」 9月30日放送より)