消臭剤メーカーの「エステー」が、香りを活用した「ウェルネス事業」に参入する。
従来の“香り技術”を生かし、企業との協業や地域特有の香りの商品化を進め、販路を拡大する。
専門家は、狭い領域から脱却し、心身の健康に貢献する新ビジネスモデルを評価している。

香りとウェルネスで心身を癒す新事業へ

消臭剤などを販売するエステーが、香りで心と体の健康を実現する「ウェルネス事業」に参入した。

ある仕掛けがある名刺
ある仕掛けがある名刺
この記事の画像(11枚)

二つ折りのこちらの名刺には、ある仕掛けがある。

フジテレビ経済部・福井慶仁記者:
かんきつ系の香りです。

香りを武器にした新たな挑戦として、消臭剤などを販売する「エステー」が17日、新たに本格参入を発表した「ウェルネス事業」は、「心の安らぎや健やかな暮らし」を意味し、ビジネスなど、幅広い分野に広がりを見せている。

エステー・上月洋社長:
われわれのもともとの強みである「香り」。この技術、ブランド、その強みを生かして、香りとウェルネスを組み合わせていきたい。

香りを使った展開例
香りを使った展開例

ドラッグストアなどでの従来の商品展開ではなく、今後、企業や自治体とも協業し、販路を拡大させていきたい考えだ。

名刺にはAIを活用した企業独自の香り
名刺にはAIを活用した企業独自の香り

例えば、AI(人工知能)を活用した企業の香り付きの名刺では、企業の口コミやイメージなどをAIで分析し、それをもとに、「企業独自の香り」を作り出し、ブランド戦略の一環として提供する。

廃棄される枝葉などを再利用する「地域特有の香り」
廃棄される枝葉などを再利用する「地域特有の香り」

また自治体とは、伐採で廃棄される枝葉などを再利用した「地域特有の香り」を商品化し、地方創生につなげていくとしている。

消臭芳香剤や防虫剤など、いわば“空気ビジネス”で、数多くのブランドを展開するエステーの新領域。

2022年には、ペット用品市場にも初参入するなど、新たな市場の開拓を加速させる背景にあるのは、“日用品メーカーの限界”だ。

エステー・上月洋社長:
われわれは、臭いなどの負の解消、これがビジネスの事業領域の中心になっていた。その中で戦っているだけでは限界があるので、われわれは提供価値を広げていこうと。日用品メーカーから、ウェルネスカンパニーへ。まず、「香り×ウェルネス」で、国内で勝ちきって、海外にも展開していこうと考えている。

伸び悩む市場から新たな成長を模索

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
ーーエステーによる新たな試み、どうご覧になりますか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
自社のビジネスを再定義することは、成長を続けるためには、とても大切なことです。エステーはパーパス、10年後のありたい姿を「日用品メーカーから、ウェルネス・カンパニーへ」と定めています。

「消臭力」などの「空気を変える」製品を提供するメーカーという、やや狭い認識から、空気を通して、社会の課題解決を図り、心と体の健康を実現していくとしています。

堤キャスター:
ーー進むべきビジネスとして、大きくかじを切った背景には、どんなことがあるのでしょうか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
室内用の消臭剤や芳香剤の国内市場は、これから大きな伸びは期待できず、2024年は300億円を割り込むと予想されています。

これに対して、エステーが新たな価値創造を目指す、香りとウェルネスの領域は、今後の成長分野とされています。

例えば、香りによってストレスの軽減や、エネルギーのチャージ、さらには集中力を高めたりなど、機能的な効果が期待できるとされています。

香りでブランド体験を深める新アプローチ

堤キャスター:
ーー気分が落ち着く香りなど、アロマを暮らしに取り入れている方もいますよね?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
いま、没入体験の可能性が広がる中、「香り」についても、ビジネスの広がりが期待されています。

香りを活用したマーケティングは、嗅覚が持つ優れた記憶力などをうまく利用することで、消費者の購買意欲を向上させたり、イメージの醸成を促すとされています。

堤キャスター:
ーー具体的には、どんな活用例があるのでしょうか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
エステーのグループ企業が手がけたケースでは、プロサッカーチームの横浜FCをイメージした「ハマブルーの香り」というスプレー製品があります。サポーターが、この香りをまとうことで仲間意識が強まったり、チームを1日中感じられると評判なようです。

ブランドをイメージさせるアプローチとして、目に映るマークやカラーが重要視されてきましたが、これからは、香りについてもプロデュースが進んでいくかもしれません。

堤キャスター:
香りは、私たちの生活において常に共にあるものです。
人によって好みは異なりますが、気分に与える影響は、とても大きいですよね。
「空気を変える」製品を提供してきたメーカーだからこそ、香りに敏感な方にも優しく、暮らしをより豊かなものにしてくれることを期待したいです。
(「Live News α」9月17日放送分より)