新型コロナウイルスの影響で状況が一変したホスト業界。

8月20日放送の「直撃!シンソウ坂上」(フジテレビ系)では、新宿・歌舞伎町のホストクラブに約8ヵ月密着。新型コロナウイルスで“危険地帯”と化してしまった歌舞伎町のホストクラブで何が起きていたのか。地獄へと突き落とされてしまったホストクラブ、ホストたちの内幕に迫った。

1ホストを卒業して自分の店を開店

東京・新宿区、歌舞伎町。立ち並ぶホストクラブは約240店。約5000人のホストがしのぎを削るといわれている。

今回、密着したホストの一人、桐生レイラさん33歳。歌舞伎町最高峰のカリスマホストと呼ばれ、年間売り上げ1億円を何度も達したつわもの。日系ブラジル人の父とフランス人の母を持つ、超イケメンだ。

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2月初旬。レイラさんは人生の勝負に出ようとしていた。業界大手のAIRグループの1ホストを卒業し、オーナーとして初めて自分の店「RHYTHM(リズム)」を開いた。

グランドオープン当日、歌舞伎町が誇る超人気のホストたちがお祝いに駆けつけた。

ゴージャスな雰囲気が漂う店内の広さは約260㎡。家賃は月200万円はくだらない。こだわりのシャンパンセラーや調度品はすべて自分で選び抜いたもの。

レイラさんは「お店の空間だけでも楽しめるように作りたかった。歌舞伎町でも天井が6メートル以上もあるホストクラブはなかなかないと思う。はっきりは言えないけど1億円は超えました」と明かす。

こうしたレイラさんの背中を若いホストたちは追っている。彼はホストたちの憧れの存在だという。

グランドオープン2日間の売り上げ目標1000万円は達成できなかったが、この時レイラさんは「今日足りなかった分は明日頑張って。売り上げはいつでも作れます」と前を向いていた。

レイラさんの家は、新宿区にある超高層マンション。広さ105㎡の2LDKで家賃は61万円。最近飼い始めたという、トイプードルのドルちゃんと一緒に暮らしている。

レイラさんは「まだまだ稼げるし、50歳までがむしゃらに仕事して。33歳で“お金、お金”ってなっていたら…お金に執着するのが逆に怖い」と語っていた。

1987年にブラジルで生まれたレイラさんは、16歳のときに日本へ出稼ぎに来ていた父を頼り、単身来日。19歳の時に東京・表参道でスカウトされてホストになった。当時、日本語ができなかったレイラさんは、客に受け入れてもらえず苦戦したという。

「勉強して、勉強して、営業して。『絶対いつか倒してやる!』って思っていた。その日の一日の売り上げでナンバー1じゃなかったら泣きながら帰っていたタイプ。最初は本当に一匹狼でした」と当時を振り返った。

“ホスト”というだけではなく、レイラさんのような“会えるアイドル”の人気ぶりは全国にまで。Instagramには約3万人のフォロワーがいて、2月のバレンタインデーでは日本中から宅配便でチョコレートが届いた。

歌舞伎町には、至るところにイケメンの看板が立っている。新型コロナウイルスがまん延する前は、イケメンを売りにしたアイドルホストも誕生し、SNSを駆使して、日本中から新たな顧客を取り込んでいた。

憧れのレイラのもとに若者が続々

バブルもあってホストクラブは華やかさを増し、超イケメンの“アイドルホスト”たちが隣でもてなしてくれる…その特別感が女性客を虜に。

また、バブルでホストクラブへの抵抗感は格段に下がり、今や若者たちにとって、手軽にお金を稼げる選択肢の一つになった。

レイラさんのもとには、彼に憧れる若者が1ヵ月で100人以上も面接に来ることも。地方から歌舞伎町を目指していたり、学生と二足のわらじを履いていたり、さまざまな若者が集った。

こうして面接を通過してホスト人生をスタートさせた、あか抜けない若者たちを一人前の“アイドルホスト”に育て上げるのもレイラさんの大事な仕事。

自身が経営に携わるヘアメイクサロンでヘアセットをしたり、ときには若いホストの全身をプロデュースするために、自分の服やアクセサリーを使うことも。

その理由は、ホストにとって“見た目”が重要だから。ホスト業界では写真や動画を撮影する機会が多いが、これは客はまず最初にプロフィール写真などの映像からお気に入りのホストを選んでいくため。PRでのビジュアルには気を遣うのだ。

そして、レイラさんも通ってきた新人ホストの登竜門であるシャンパンコール。閉店後の午前1時30分。ホストたちはクタクタになった体にムチを打ってシャンパンコールの練習を行っていた。何種類もある掛け声を新人ホストはすべて覚えなければならない。さらに、照明や音響などもすべてホストが担当している。

元カリスマホストが経営改革に着手

ホストバブルに沸く歌舞伎町。しかし、歌舞伎町に新型コロナウイルスが迫ろうとしていた。

番組が1月から取材をしていた、もう一人の人物はSmappa!Groupの会長、手塚マキさん42歳。20歳から歌舞伎町で生きてきた元カリスマホスト。

Smappa!Groupはホストクラブを6店舗構え、在籍するホストは120人。19歳からアラフォーまでのホストが売り上げを競い合っている。

グループで年間売り上げトップの店「APiTS」にも“アイドルホスト”が揃っている。取材すると、ホストたちはSNSを積極活用していた。これがホストバブルの最大の要因といえるのだという。

APiTS代表・凰華麗さんは「SNSが普及して良い意味でも悪い意味でも、女の子からの選別がすごい。良いものは本当にフィーチャーされて、一気に有名になれたりする。それくらい良い時代ではあるんですけど、逆にちょっとダメなことをしたら叩かれるので、悪いことはできない」と明かす。

グループ全体の売り上げが右肩上がりの中、歌舞伎町の革命児・手塚会長はホストにも積極的な経営参加を求めてきた。手塚会長の改革の一つが美容院やネイルサロンなどを展開する多角化経営。加えて9店の飲食店なども運営し、自社のホストは安く利用できる。

書店や介護事業にまで進出し、福利厚生の一つとして系列店で利用できる社内通貨「マッパ」も発行。1万マッパは1万円相当だというが、これもホストクラブを中心とした企業体を目指す会長のアイデアだ。

手塚会長は「水商売だってバカにされたくないという思いもあるし、俺もバカにされたくないし、みんなもバカにされたくない。一般的な会社がやっているようなことと同じようなことをやってもらいたいし、ビジネスマインドを持ってもらいたいという思いがあります」と語った。

歌舞伎町に迫るコロナ影響

2月には日本で新型コロナウイルス感染の問題が本格化し、2月27日には事態を重視した政府が全国の小中学校や高校に休校を要請。

3月には、APiTSでもアルコールやトイレットペーパーなどの必需品が手に入らなくなってきた。

3月3日にはまだ外出や営業の自粛要請は出ていなかったが、従業員たちは体温のチェックを始めた。検温して37度を超えた従業員は病院へ行かせ、出勤をさせないという対応も。従業員たちは新型コロナウイルスを意識しつつも、いつも通りの接客を心掛けていた。

実は、APiTSは感染拡大の波が迫る中で拡大移転をすることが決まっていた。その規模は歌舞伎町最大級の260㎡超えで、家賃月300万円はくだらない。

3月4日はグループのHPでコロナ対策を告知。さらに、手塚会長は新型コロナウイルスとどう向き合うのかを定例幹部会議で示した。

この頃、「密」というキーワードが生まれ、WHOがパンデミックを宣言。明らかに新型コロナウイルス問題のステージは変わった。
ホストクラブも、使ったテーブルはその都度消毒するなど、徹底した対策が求められるようになっていた。

3月24日は東京オリンピックの延期が決定するなど、手塚会長も含めたホストたちは“会社倒産”という恐怖を感じ始める。

3月30日には事務所の会議室で、どう営業していくのか会長とホストたちの話し合いが開かれた。この3時間後に東京都の小池百合子知事が接待を伴う飲食店などに行くことを控えるよう都民に要請。4月7日は政府が緊急事態宣言を発出した。

そして東京都では一部を除く業種に対し、4月11日から休業を要請した。Smappa!Groupも営業自粛を余儀なくされた。

“夜の街”歌舞伎町で感染が広がる

Smappa!Groupは自粛期間を、著名人を講師に招いてのリモート勉強会など、ホストの教育にあてていた。

そして休業要請から1ヵ月半後の5月25日に緊急事態宣言が解除された。

しかし、ホストクラブには逆風が続く。6月には“夜の街”という言葉が日本中に広がり、歌舞伎町に厳しい目が向けられていた。そんな中、手塚会長は歌舞伎町の主だったホストクラブの代表者たちと新宿区役所を訪れた。

新宿区からの依頼を受け、行政とホストの橋渡し役として動き始めていたのだ。そして「第1回 新宿区繁華街新型コロナ対策連絡会」では、ホストクラブが積極的にPCR検査を受ける方向になった。

手塚会長は「行政とは取り締まる側とされる側というイメージでした。でも、この街全体が同じ歌舞伎町の住民という意識を持って、お互いが歩み寄ることができると、街は変わっていくのかなと思います」と話した。

こうした中、手塚会長率いるAPiTSは6月19日に拡大した店舗に移転。スタッフたちは3密を避けるために席数を制限し、全員がロゴ入りのマスクをつけ接客に当たることになった。客にも感染対策に協力してもらい、手はもちろん靴底まで消毒し、入店。検温も行い、感染者が出た場合、追跡調査ができるように個人情報を聞き取っていた。

ホストたちは席を移るたびに手の消毒を行い、常に扉を開けて出入りの業者も店に入れないよう徹底。シャンパンの注文が入ってもホストクラブの華である掛け声“コール”は行わず、対策をしながら来店した客を盛り上げていた。

一方、3月中旬の取材の際には「RHYTHMのオーナー社長としてどう判断するか。営業した方がいいのか、でもお客さまも従業員、キャストも新型コロナウイルスになったりしたら責任を感じる」と話していたレイラさんも必死に戦っていた。

8月に入り、RHYTHMでは業者に依頼して光触媒コーティングという作業を実施。抗菌作用やウイルス感染予防の効果が期待できるという。

休業要請があけて2ヵ月、レイラさんはスタッフの生活を守るために必死で走り続けている。

なぜ、ホストたちに感染が広がった?

そして新たなスタイルのホストクラブを追求し、“夜の街”歌舞伎町で新宿区との橋渡し役としても活動するSmappa!Groupの手塚会長に番組MCの坂上忍がリモートでインタビュー。

坂上が感染拡大した“夜の街”=歌舞伎町のようなイメージになった状況について聞くと「実際にウイルスが入り込んでしまったのは事実で、感染者が出たということも事実。その対応が少し後手に回ってしまった部分は否めないと思います。その中で僕たちがどう対応すれば良いかをみんなで考えた。決して開き直って、『俺たちは関係ない!』という人たちはいなかったと思います」と手塚会長は話す。

さらに、ホストに感染が広がった実態について手塚会長は「ホストの団体行動」が原因だとする。「彼らは深夜に仕事が終わってミーティングして、ご飯も食べに行くし、中には地方から出てきて一緒に住んでいる人もいる。集団行動することが多く、その生活習慣がホストたちの感染者を増やしたと考えています」と明かした。

坂上が営業自粛による経営状況に迫ると、手塚会長は「当初は、銀行の融資が受けられなかった」と告白。ただ、5月15日の支援制度拡充で接待飲食業も融資の審査対象になったことで融資を受けられるようになったという。

そして手塚会長は「我々の業界は何か新しいモノをイノベーションして生み出して社会を牽引していく業種ではなく、そもそもある社会の足りない部分を補完したり、補う意味の方が強い業界なので、補完していくことをしていくだけだと思っている」と今後のホスト業界の展望を語った。

(「直撃!シンソウ坂上」毎週木曜 夜9:00~9:54)