夏の休暇を観光地の宿泊施設で楽しんだ方も多いだろう。そんな宿泊施設を悩ませているのが人手不足だ。静岡県の人気観光地・伊豆にあるホテルでは外国人の採用に踏み切った。フロントスタッフ7人のうち日本人は支配人だけであとは外国人だ。日本のホテルの近い将来の姿なのだろうか。
民宿は高校生を求めるも少子化で…
この記事の画像(13枚)2024年7月。静岡県西伊豆町の海水浴場では待ちに待った海開きを迎え、さっそく多くの観光客が訪れていた。
本格的な海水浴シーズンを迎えると同時に忙しくなるのが民宿やホテルといった宿泊施設だ。
1年を通して一番の書き入れ時とあって 夏の間は従業員を増やして対応する。ただ、人材確保が難しくなっているという。
老舗の民宿・乗浜荘は、毎年この時期は臨時のアルバイトを雇って営業しているが、ここ数年は人材確保に頭を悩ませている。
乗浜荘では体力のある高校生を頼りにしていて、乗浜荘の石田弘之さんは「高校生が主力じゃないと民宿の場合は成り立たないので、やっと見つけて頑張ってもらっています」と話す。
温泉民宿 乗浜荘・石田弘之さん:
(人手確保は)めちゃくちゃ大変です。1年を通してやっているホテルや旅館でも大変で、まして夏の1カ月しかやらない私たちのような民宿はなおさら来てくれる人が少ない。年々少なくなっている
次から次へと宿泊客がやってくるなかアルバイトの力は必須で、かつては8人ほどを雇用していたが、2024年は高校生も含めた3人だけだ。
少子化でこれまでのように知人や友人のツテで人を集めるのは難しい状況になっているという。
温泉民宿 乗浜荘・石田弘之さん:
(民宿業は)この先もまだ続けてくつもりだが、(働き方など)やり方をどんどん変えていかないと、このままだとちょっと厳しい
派遣が3割 費用増と教育が課題
人手不足は規模の大きなホテルや旅館などの宿泊施設でも深刻だ。
老舗ホテルの堂ヶ島ニュー銀水も従業員の募集をしているものの、夏季限定のアルバイトどころか通常のスタッフの確保すら厳しい状況で、人材派遣会社に頼らざるを得ないという。
森健児 支配人は「労働人口の流出が進んでいて、地元からの新卒・中途採用とも大変厳しい雇用環境にある」と打ち明ける。
何とか派遣スタッフで必要な人員を確保したが、人材派遣会社を通すとコストがかかるうえ、通常が1~3カ月の短期契約のため、仕事に慣れてきた頃には退社してしまい、新たな派遣スタッフへの教育をやり直さなければならず手間がかかるという。
堂ヶ島ニュー銀水には8月の1カ月だけで1万人あまりの宿泊に訪れるホテルで、約140人の従業員を抱えているが、2024年7月時点でその3割が派遣社員だ。
堂ヶ島ニュー銀水・森健児 支配人:
年間を通してある程度の稼働を維持するためには、やはり短期間の派遣スタッフより中長期的に活躍してもらえる地元の人材を求めている。そのためにも、より福利厚生を向上させ、働きやすい環境であることをPRできるように企業努力が必要だと思い取り組んでいる
外国人雇用に活路を求める
地元だけでの従業員の確保が難しくなるなか、外国人の雇用に舵を切ったのが2019年にオープンしたホテルの繭二梁(まゆふたはり)だ。
フロントスタッフ7人のうち日本人のスタッフは支配人1人だけで、副支配人もスリランカ出身のパサンさんが務めている。
音羽恵津子 支配人はパサン副支配人のことを「思いやりもあり、この仕事が彼にはとても合っている。お年寄りが大好きで、日本人も日本という国も大好きなので。彼から学ぶことも多々ある」とほめる。
繭二梁・パサン副支配人:
子供の頃から日本に興味があって、いつか日本に来て働きたいと思っていた。日本人のおもてなしの心が知りたくて、この会社の支配人からも勉強させてもらっている
来日してから6年。
日本語での接客にも問題はなく、評判も上々で、宿泊客は「こういう時代なので多様性も進んでいて特に違和感はなかった。すごくまじめな雰囲気も伝わってきて、安心感もあるので、特に問題はない」と、パサン副支配人を評価する。
とはいえ、その外国人スタッフの採用も容易ではなくなっていることから、音羽支配人は教育の重要性を実感している。
繭二梁・音羽恵津子 支配人:
より優秀なスタッフを育てていく。素質のある子たちを1日でも早く育て、一人前で、お客様に不愉快な思いをさせないように、逆にお客様から褒めてもらえるようにしたい
観光業にも押し寄せる人手不足の波。
それぞれの施設の苦悩やチャレンジは、この先もしばらく続きそうだ。
(テレビ静岡)