戦後最大の人権侵害と呼ばれる「旧優生保護法」。この法律のもと、不妊手術を強要された人たちが最高裁判所の裁判官に対し、初めて思いを伝えた。

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大阪府に住む野村さん夫婦(仮名)。聴覚障害を持つ2人は、この裁判で国と闘い続けている。29日、最高裁判所の裁判官に自分たちの思いを訴える最初で最後の機会。

野村さん夫婦:すごくドキドキしてます。赤ちゃんのこと、妻の悲しい体験のことを聞いてほしいと思う。

2人は1970年に結婚。3年後、待望の第一子を授かったが、妊娠から9カ月たった時、医師から「赤ちゃんに異常がある」と言われ急きょ帝王切開をすることに。

その際、何の説明もないまま、同時に不妊手術を受けさせられていたのだ。産まれた子どもは翌日、亡くなった。

夫・野村太朗さん(仮名・80代):亡くなった赤ちゃんを抱いたんですけど、すごい重たかったです。ずっと抱え続けるのも大変なぐらい重たかったです。しばらくたってから赤ちゃんできないということだけ聞いて、亡くなったから二人目が生まれないという意味でいっているのか、なんでなのかなと分からなかった。だいぶたってから、不妊手術をしたということだと分かった。

なぜ、不妊手術は行われたのか。それは1996年まで存在した「旧優生保護法」。この法律の下、障害のある人たちに強制的に不妊手術が行われ、その数は分かっているだけでも2万5000人にも上る。

2人は手術から40年以上がたった2018年、同様の経験をした人が起こした裁判で不妊手術について知り、翌年、国に対し損害賠償を求めて提訴。
裁判で争点となったのは、訴えを起こすまでにかかった時間だった。

国は損害賠償を求める権利について不法行為から20年で消滅するという「除斥期間」の規定をもって「2人にはもう損害賠償を求める権利はない」と主張してきたのだ。

一審は2人の訴えを退けたものの、二審では「除斥期間をそのまま認めることは、著しく正義・公平に反する」として国の賠償責任を認めた。画期的な判決に喜んだのもつかの間、国は最高裁に上告したのだ。

野村太朗さん(仮名):最初は早く終わるものだと思っていたけど今もこれだけ時間がかかっているのでおかしいなと思っています。

高裁判決から2年がたった29日。最高裁で初めての弁論が開かれ、原告の意見陳述が行われた。

花子さんは法廷で「知らない間に不妊手術を受けさせられ、手術したと誰も何も言ってくれなかった。そのままの体でいさせてほしかった」と話し、太朗さんは「国は責任を持ってほしい」と訴えた。

一方、国は改めて除斥期間を適用すべきと主張したうえで、「もし適用を制限する場合、ほかの民事裁判全般に影響し、法的秩序を不安定にする」などと述べました。

野村太朗さん(仮名):このような差別は二度と起きてほしくないと一番に伝えたかったのでそれだけは何とか伝わったかなと思います。

野村花子さん(仮名):私たち夫婦だけでなくこれから続く障害を持つ夫婦のためにもきょうの裁判は頑張って戦いたい。これからの若い夫婦に、産み育てる、幸せな家庭を築く権利をみんなに持ってもらいたい。

全国で裁判が起こされてから6年、救いの手は差し伸べられるのか。ことしの夏ごろには判決が言い渡される見通しだ。

(関西テレビ「newsランナー」5月29日放送)

関西テレビ
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