富山市で行われた“軽トラック”を舞台にした戦い。それは荷台の上の美しさと技術を競い合うものだった。
富山市観光協会(@toyamacitykanko)の公式X(旧Twitter)アカウントが「今年の軽トラ庭園コンテストもすごかった」とのコメントと共に投稿したのは3枚の写真と1本の動画。そこには軽トラでは、まず見かけることがない姿が写っていた。
軽トラの荷台に“庭園”があるのだ。草花や木、石や砂利、滝が流れていたり、金魚が泳いでいるものもある。荷台という限られたスペースにもかかわらず、技術や工夫が詰まった独自の美しい世界が広がっているのだ。
これは5月11~12日に、富山市で開催された「花と緑のフェスティバル」のイベント「軽トラ庭園コンテスト」で集まった作品。名前の通り、軽トラの荷台の上に再現された庭園のコンテストだ。
2011年度から年に1回開催されており(2020年度はコロナ禍で中止)、2024年度で13回目を迎えた。毎年10台ほどが展示しており、今年度は造園職人の力作13台が並んだという。
軽トラの荷台で展開された姿に驚き、そして、庭園の美しさに魅了されたことだろう。SNSでも「こんな世界があるんだ」「初めて知りました 魅力的なイベントですな」「独特の世界だなあ」という驚きと感動の声が多く寄せられていた。
たくさんの人に見てもらえるのでは?
「軽トラ庭園コンテスト」はそもそも、1人の造園業者のアイデアがきっかけで始まったという。
「花と緑のフェスティバル」でのメインイベントとして花や木を販売していたが、売れ行きが下がりつつあった。そこで代わりの新たなメインとなるイベントとして、「西田幸樹園」の代表取締役・西田茂基さんが発案。
「小さな庭がいろいろな所へ移動する事ができたら、たくさんの人に見てもらえるのでは」と思いついたのが、“軽トラック”だった。造園業では軽トラをよく使っていて、また、昔から野菜などの移動販売を目にしていたことで、“軽トラ”の荷台に庭を造ることを思いついたという。
庭師のこだわりと技術が凝縮
荷台という限られた空間で庭を魅力的にみせるには、一体どのような技術や工夫が施されているのだろうか? 富山市役所と共にコンテストを運営する「富山造園業協同組合」の代表理事・伊藤志朗さんに話を聞いた。
ーーコンテストのルールを教えて。
富山造園業協同組合の会員であることです。事業所または班(組合は地域ごとに7班に分かれている)を代表して出場します。
2023年までは「富山らしさ」「遊」などのテーマを決めていましたが、2024年は自由としました。ルールとしては、軽トラのあおりを広げない(面積を広げない)があります。
ーーどのように評価しているの?
投票は(1)フェスティバルの来場者(2)来場した組合員投票があります。来場者は自分の気に入った作品を3つ選んで投票します。組合員はプロの目線で見て、良いと思う作品を2つ投票します。
一般投票から、1位「富山市長賞」賞金5万円、2位「花と緑の銀行富山支店長賞」賞金3万円
、3位「富山市緑化推進委員長賞」賞金2万円。富山造園業協同組合組合員特別賞は1位のみで 賞金5万円、となっております。
ーー2024年度の1位作品は?
城造園による作品でした。「富山市長賞」と「富山造園業協同組合組合員特別賞」とのダブル受賞となりました。
底に穴の空いたかめを地中に逆さまに埋め、かめのなかで穴から滴り落ちる水滴が共鳴音を奏でる「水琴窟(すいきんくつ)」という仕掛けを作り、来場者一人一人にその音を聞かせる努力をしており、それが得票に繋がったと思います。
ーー軽トラ庭園の魅力はどんな所にある?
限られた狭い空間に庭師のこだわりと技術が凝縮されている点です。
「軽トラ庭園」はいわば、造園業者の移動できるお庭のショールームです。いかに狭いスペースに美しく作庭するか、そして軽トラックの重量制限があるなかで、発泡スチロールでかさを増したり、軽量土壌などを使用したりなど、さまざまな工夫が施されています。また、伝統技術や作庭技術を駆使しただけでなく、近代の庭造りのニーズに合わせ、それぞれの独自性をだした、さまざまなアイデアを凝らした物となっております。
ちなみに、SNSで話題となっている事に対しては、「造園の魅力、庭の魅力を伝えることができて素直に嬉しく思っています」とのことで、「来年も2024年同様ハイレベルな競い合いをして、来場者に喜んで頂ければ幸いです」と今後への意気込みも話していた。
今年の軽トラ庭園コンテストもすごかった pic.twitter.com/CylD77dUJ0
— 富山市観光協会 (@toyamacitykanko) May 11, 2024
荷台の美しさと技術を競い合う「軽トラ庭園コンテスト」。次はどのような素晴らしい作品が誕生するのか楽しみだ。