新潟県上越市で田んぼの給水栓に設置されていた鉄製のフタが複数枚盗まれる被害があった。犯人は盗んだ鉄を売り、利益を得ようと考えていることが想像できるが、鉄の買い取りなどを行う業者は「お金になるものではない」と指摘している。現場と業者を取材した。
“鉄製のフタ”計116枚盗まれる
農業用設備のフタが盗まれる被害があったのは上越市吉川区にある田んぼだ。
この記事の画像(10枚)大潟あさひ土地改良区の五十嵐文吉理事長は「4月の雪どけと同時になくなった。1カ所ではなく、60カ所くらいあるので大変なこと」と話す。
大潟あさひ土地改良区管内では、2024年3月下旬から4月上旬にかけて58カ所で田んぼ脇にある給水栓の鉄製のフタが合わせて116枚、盗まれる被害が確認された。
フタは縦30cm、横60cmの長方形で厚さは9mm、10kgほどの重さがあるという。
五十嵐理事長は「道路の近い所でみんなやられている」と車を使って盗まれた可能性が高いと話す。
新しいフタ設置には50万円以上…
フタは転落や装置の劣化などを防ぐために設置されているもので、現在は応急的に木の板でフタをしているが、やはり耐久性には不安が残る。
五十嵐理事長は「鉄のほうがいいかもしれないが、金もかかりますからね…」と漏らす。
新たにフタを設置するには全部で50万円以上かかると試算されるうえに再び盗まれる恐れもあるため、大潟あさひ土地改良区は農家と相談し、今後の対応を決めるという。
「一時も早く返してほしいということと絶対にしないようにしていただきたい」
鉄の盗難「買うところがあるから…」
鉄の盗難が相次いでいる問題について、新潟市西区で鉄くずなどを買い取っている中哲商店の中川武士代表は「またかと思った。いま、インボイスなどで身分証確認とかあるので、簡単に業者も買わないとは思うが、それでもたぶん買うところがあるから盗みがあるのだろうな」と話す。
県内では8年前にも上越市で鉄製の側溝のフタが盗まれる被害が確認されていて、警察によると、毎年、鉄や金属の盗難があるという。
鉄は「お金になるものではない」
特に近年は円安の影響などで金属の価格が高値で推移。中川さんはこうしたことが背景にあるとする一方で、「鉄を10kg~20kg売ったからといって、いくらにもならない。お金になるものではないよとは頭に入れてほしいなと思う」と話す。
鉄の価格は現在、1kgあたり35円~45円で犯罪と天秤にかけると全く割に合わないという。また、業者の多くは不審な金属の買い取りには応じていない。
中川さんも「そんなもの盗むなよとしか言いようがない、本当に。公共のものというのは周りが困る。そういうものを簡単に持っていくという神経が分からない」と憤りを口にする。
一体誰がどんな目的で盗んでいるのか…警察は盗難事件として捜査している。
(NST新潟総合テレビ)