日本家屋の文化財に汚れが…

代を重ねて豪農の道を歩み、越後一の大地主となった伊藤家。その歴代当主のコレクションなどが保存されているのが新潟市にある北方文化博物館だ。

建物や庭、美術品を見学することができるが、今、北方文化博物館のある注意喚起ツイートが話題になっている。

【拡散希望】お願いです。日本家屋等文化財の建物に入る際は《素足での入館はご遠慮下さい》。夏はサンダルで外出する機会が増えますが「皮脂汚れ」が床につくと完全には落ちません。お子様ご友人にもお伝えいただき、どうか文化財を汚さないという意識のもとご見学いただきたくお願い申し上げます。

文化財の建物に入る時は素足で入らないように北方文化博物館が、投稿しているのだ。素足で建物に入ると、皮脂汚れが床に付き、完全には落ちなくなるという。

投稿写真を見てみると、たしかに床に“皮脂汚れ”らしきものが付いているのが分かる。大切な文化財を一般公開しつつ、いい状態で保存したい博物館にとっては悩ましい問題である。

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この投稿には「無知で知らずにご迷惑をかけていたかもしれません。是非ともこういう大切な事は、広めて下さい」や「うちの近くにある古民家を公開している資料館は、靴下を着用していないとチケットが買えません」などのコメントが寄せられ、10万超のいいねが付いている。(8月4日現在)

同館では対策としてスリッパの貸し出しもしているというが、なぜこのタイミングでツイートをしたのだろうか。北方文化博物館にお話を伺った。

これからサンダルでの来館者が増えるため注意喚起

ーーなぜこのタイミングで「素足での入館」を控えるよう拡散した?

このたび、当館の大広間の縁側において、素足によると思われる大きな汚れを発見したのが、8月1日の開館前の朝でした。この汚れの対処に当たりながら、これから本格的な夏を迎え、サンダルでお出かけになる方も増えてくるため、和風建築の文化施設を楽しむ上での注意点をお伝えしたいと考えた次第です。

こうした旧家の屋敷などに素足のまま上がると、足の裏の皮脂汚れが、床などの木材にこびりつき落ちにくくなることを、お伝えしたいと考えました。


ーーこれまで素足で入館する人は多かったの?
 
時々、いらっしゃいました。しかし、今までは日々の清掃で対応できました。一方で、当館は大型観光バスでいらっしゃる団体のお客様をどんどんお迎えしてきた性格のため、なかなかすべてのお客様へ注意はできずにおりました。


ーー皮脂汚れが床に付くと、文化財が傷んでしまう?

人間の脂は、床や柱の木材に付着すると、その部分だけ経年変化を起こし、つまり木材の色味を変えてしまいます。時間が経つと、まるで手や指や足跡が浮き上がるように、痕跡が残ってしまいます。これを取り除くのは大変難しく、薬剤を下手に使用するとかえって木材が汚くなってしまいます。

ーースリッパを履くことお願いしている範囲は建物の中全て?

汚れては困る場所はすべてそうなりますが、主屋が中心になります。

3つの対策で裸足による汚れを防ぐ

ーー拡散ツイートをして今のところ効果はあった?

手のひらや足の裏が床や柱に付着すると、汚れてしまうことを初めて知りましたというご感想をたくさんいただきました。概ね同意していただける方が多くいらっしゃいました。

他方で、当館に対するアドバイスも多くいただきまして、問題解決について様々なご意見が交わされたことは、特に私どもにとってありがたく感じました。


ーーこれまでの注意喚起は効果がなかったの?

施設によっては、入館の際、靴下着用を義務化しているところも多くあります。これを徹底するかどうか、その程度は管理者の考え方や状況によって各々異なります。

当館は、一日に数百人から千人以上のお客様をお迎えしてきましたが、これは「文化財保存」と同時に「積極的な公開」にも重きを置いてきたからです。しかし、その中で、注意喚起の頻度が少なくなっていたと反省しております。


ーー拡散ツイート以外に今後はどのような対策・注意喚起をする予定?

以下の3つの具体策を以て、裸足による汚れを防ぎたいと思います。

1.「注意喚起の頻度を増やす」
受付にてサンダルで来場のお客様にお声がけし、また建物への複数の入口に多言語で注意書きを設置します。

2.「靴下の販売」
実際にサンダルでいらっしゃったお客様、あるいは足元が汚れてしまったお客さまに対し、靴下を有償で提供できるよう在庫を増やしてゆきます。

3.「使い捨てスリッパの用意」
靴下の購入を拒否されるお客様には、廉価のスリッパをお渡しすることとします。そのため大量のスリッパを購入する予定です。
   
いずれも、文化財を守る意識を改めてしっかりともった上で臨みたいと思います。


ーー最後に来館者に伝えたいことは?

当館へおいでくださり大変嬉しく存じます。新潟県は地主王国と呼ばれ、江戸時代や明治時代の巨大な旧家の邸宅がたくさんございます。それぞれに個性があり見事な日本文化を見ることができますが、これらはすべて「文化財」にあたります。

文化財は国民みんなの大事なものです。みんなで大事にしながら、きれいなかたちで後世に残してゆきましょう。ご見学の際は、それぞれの施設の注意事項を事前にご確認いただき、あとはゆっくりと心ゆくまで、特色ある文化財の美しさを楽しんでいってください。

今回の投稿のきっかけは、建物内で素足によると思われる大きな汚れを見つけ、さらに今後、サンダルで来館する人が増えるためとのことだった。また、今後の対策については「注意喚起の頻度を増やす」「靴下の販売」「スリッパの貸し出し」の3つで対策するという。

文化財は後世に残していかなければならない大切な財産である。文化財を守るためにも、来館者一人一人の行動が重要だ。

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プライムオンライン編集部
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