現在6連勝と勢いが止まらない清水エスパルス。このところは上位チーム相手に勝ち切ること、そして下位チーム相手に複数得点を稼ぐことという定石通りの戦い方が出来た。首位を走る自信がいい意味でチームに浸透していると言える。
好調キープ…6連勝で首位快走
好調を維持するエスパルスは第14節終了時点で11勝2敗1分。
積み上げた勝ち点は34と、1節あたり2ポイントという目標と照らし合わせると6も上回り、昨季J2を制した町田が14節終了時に勝ち点が30だったことを鑑みれば上出来な成績を残している。
「超攻撃的」「超アグレッシブ」を標榜する秋葉エスパルスだが、今のチームの強さを探ると、指揮官の発した過去の言葉がいくつか思い起こされる。
「公平な競争を促し、メンバー選出で忖度はしない」
「ペナルティボックスしか興味がない」
「勝負強さとしたたかさ」
直近の群馬戦では前節から先発を4人も入れ替えた。
ゲームの開始時点で3バックを採用するのも初めてで、これは相手チームと同じシステムで戦うという戦略面での理由もあったが、それ以上にレギュラー争いをする選手たちに“平等”に機会を与えるという意図も透けて見えた。
この選択は見事にはまり、今季初先発の西澤がタンキのアシストでシーズン初ゴールを挙げると、今度はタンキが宮本のクロスに合わせてチーム加入後初ゴール。
さらに住吉の縦パスから上がった北爪のクロスを北川が決めてダメ押しと、3得点いずれにも入れ替えで先発に入った選手が絡んだ。
まさに人選が生み出したシナジーであり、これからの競争はますます熾烈になるだろう。
一方、第13節の栃木戦では1点目・2点目・4点目でペナルティボックスへの意識が垣間見えた。
1点目を決めたのは矢島。相手への圧を強めながらボックス内を北川・住吉とコンビで前進し、戻ったパスを左隅にループシュート。2点目はブラガがドリブルで進入し、個人技でディフェンスを剥がすと、今度は右隅へ。4点目もカルリーニョスと松崎が相手ボックス内にスピード感を持って入ると、最後は松崎がコースを突いてゴール。相手の嫌な場所に積極的に入り込む得点パターンは、引いて守る相手の戦略を打ち砕くのには効果てき面だった。
ここ3試合で失点は1。岡山戦と群馬戦は無失点で、特に群馬戦では後半、距離感のよいボールのつなぎが目立ち、相手の守備的アタックをかわし余裕をもって相手陣内でゲームを進めるしたたかな姿が印象的だった。
こうした戦いを続けたことが、秋葉監督の言う「相手が我慢しきれずに崩れる」事態につながったとも言えよう。
次節は初対戦となる鹿児島が相手だ。秋葉監督がどのように選手を評価し、どんな戦略を立てるのか、楽しみな一戦となるのは言うまでもない。
秋葉監督「やるべきことをやって」
この記事の画像(5枚)-群馬戦を総括して
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
悔しい思いをしてきた選手が躍動してくれた。彼らが結果を引き出したのは日頃のトレーニングの賜物。急にチャンスが回ってきて結果が出せるほどプロの世界は甘くはない。それだけしっかりとしたものを準備してくれたのだと思う。また、システム(3バック)を含めて2日間の準備でチームが機能したのは嬉しかったし、自分自身も選手の能力の高さに驚いている。戦術の幅が広がって実りが多かった。
-選手層が厚くなった印象
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
誰が出てもやれるという状態になっている。どの選手を出すか、頭が痛いし、悩みが増えるのだが、とても嬉しいこと。ただ3バックをミーティングだけで実践に落とし込むというのは、レベルの高いエスパルスの選手だからできていること。今は誰を出してもギラギラしているし、やってくれる期待感もある。それだからいい成績を残し、よい循環ができている。これを手放さないように、自分たちから崩れるとか、おかしいことが起きないように気を引き締めて勝利を目指して行きたい。
いま我々がやるべきことをやっていれば、周りの方が我慢し切れずに崩れているように見える。それで勝ち点差が開いてきている。だからこそ自分たちはやるべきことをやって、その上で結果を待つことが大事。このまま右肩上がりでシーズンを通せるものではないとわかっている。そういった時にどうすればいいか、心構えを持っているのといないのとは違う。だからこそ自分たちから崩れないことからもう一段階上げてやれるようにしたい。
-鹿児島戦について
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
前へ前へとアグレッシブに攻撃的姿勢を崩さないチーム。それを受けに回ってしまうと足元をすくわれる。我々はホーム・アイスタでできる。あのサポーター・ファミリーの大声援がある中で、相手以上に走る、ゴールに向かう、ボールを奪うということを前面に押し出しながら、勝ち点3を手にしたいと思う。
-エスパルスに所属していた藤本選手、井林選手がいる
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
並々ならぬ思いで来ると思うし、チームの情報もある程度知っているだろうから大いに警戒しなくてはいけない。だが、その情報以上のものを我々が出せるかどうかにかかっている。そういう大事なゲーム。誰か1~2人というのでなく、全員で一丸となって戦いたい。
北爪選手「準備してきたものが…」
清水エスパルス・北爪健吾 選手:
アウェイの地で連勝を続けられたこと、プラスして自分も出場して結果を出せたこと、自信にもなるし、準備してきたものが出せたと思う。
前半なかなかペースがつかめない時間帯もあり個人的には苦労したが、交代せず出し続けてくれたことに結果で示したいと思っていたので、チームの勝利は大前提として、ゲームの締め方を含めてよかった。
縦への意識はチームの中でもあって、3点目はジェラ(住吉)からボールを受けた時に、シュートかクロスの選択肢があって航也(北川)が見えた。ファーストタッチをしてから少し時間があって、航也がいい走り出しをしてくれて、ボールを当てる足の位置まで考えて中に入れた。決めてもらってよかった。
代わって入ったメンバーというのは注目される。健太(西澤)もタンキも結果を出した。自分も続きたいというのは思っていた。GWの間、連勝を続けられたのはチームにとって間違いなくポジティブなことで、また、これをどこまで続けられるかというのは秋葉監督も常に言っている。その意味で全く満足していないし、次に向かっている。いろんな選手がいることをアピールしたい思いがあった。個人的にはもっと食い込んでいけるように頑張りたい。
連戦でいろんなオプションがチームに増えた。改めて競争がある中で、個人的にはチームに還元できるものをどんどん出して行きたいし、活性化しながら、「より見たい」「応援したい」と思ってもらえるようなチームに成長していきたい。
西澤選手「他のチームより…」
清水エスパルス・西澤健太 選手:
群馬戦で先制点を挙げたが難しい試合になるだろうと思っていた。自分たちも新しいことにチャレンジしているし、入りの時間が大事だと思っていた。その時間に(点を)獲れたというのは大きかった。
個人的にもようやく1点が決まりよかった。相手が思ったほど間合いを詰めてこなかったので、左足で思い切って振り抜いてみようと思った。前の日の練習で同じようなシーンがあったので、それもいいイメージになった。
今季は複数のポジションで出場しているが、どんなポジションもハイレベルでプレーすることが求められていると思う。悔しい一面もあるが、必要とされるのも出場の形だと思う。全ポジションの守り方や決まり事だとか、それぞれの動きを頭に入れながらというのは頭も疲れるし、大変な部分もある。でも、やりがいがあるし自分のサッカー人生としてはいい経験になっていて、ポジティブに捉えている。
自分は下のチームを全く意識していない。自分たちがどれだけ連勝を伸ばしていけるか、勝ち点を積み上げて行けるかを考えている。昨季は勝ち点1に泣いた。必ずどこかで流れが悪い場面が出てくると思う。そうした時に崩れずに、自分たちで力強く戦っていけるかが大切なこと。
他のチームよりまずは自分たちのチームのことを考えている。勝つのはチームにとって一番の薬。この流れを途切れさせないことが大事。でも、1つの負け、1つの失点といった些細なことで崩れることがある。そうしたスキを作らないようにしたい。去年の経験でそれをわかっている選手がたくさんいるのであまり心配はしていないが、気を配りながらチームで戦いを続けたい。
鹿児島には井林選手や藤本選手がいてちょっと不思議な感覚だが楽しみ。もちろん相手はJ3から上がってきて、知らない選手も多い。そういった選手に、「エスパルスはこういうチーム」「強いな」と思わせるように、これまでの流れを継続するゲームをしたい。
タンキ選手「自信はついてきた」
清水エスパルス・ドウグラス タンキ選手:
群馬戦ではエスパルスに入って初めての得点を決めることができた。宮本がすごくいいボールを上げてくれて、自分もジャンプできた。ボールを上手く相手のゴールに運ぶことができて嬉しかった。勢いが弱いボールだったので合わせるのは簡単ではなかったが、練習からいろいろな形でクロスを上げてもらっている。試合で活かせてよかった、ゴールへの自信はついてきたと思う。だが、一番大事なのはチームの勝利。勝ち点3を獲得することが第一。
ゲームではポジショニングが徐々に良くなってきた。さらにリズムが良くなれば、もっとチームに貢献できると思う。2トップでの出場についても、他の選手との連携の方もとても上手くいくようになってきた。あとはタイミングを合わせて試合で活かしたい。
次節の鹿児島戦はブラジル・デーということで、PR用に羽織袴を着させてもらった。このイベントに参加するのは初めてだが、清水の周りに住んでいるブラジル人がたくさん見に来てくれると思う。その中でブラジル人が点を決めて、チームが勝てばすごく幸せな日になると思う。ファン・サポーターは6連勝で幸せな気分だと思う。さらに幸せにさせるために戦いたい。
(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)