4月16日で北陸新幹線が福井県内に延伸して、ちょうど1カ月を迎えた。首都圏とのアクセス向上に加え、新幹線がもたらす人流の増加や経済効果に大きな期待が持たれているが、観光地や新幹線駅周辺は、開業効果をどのように感じているのか、取材した。

関東圏からの来県者が7割増

整備計画から約半世紀…「新幹線開業」という歴史的な日から1カ月。杉本福井県知事は11日の定例会見で「全国からの来訪者が増加している。特に関東からが大幅に増加している」と説明した。春休み期間をはさんだこともあり、来県者は好調に推移しているという。  

新幹線周辺の来訪者が2023年に比べ8万9000人増加した
新幹線周辺の来訪者が2023年に比べ8万9000人増加した
この記事の画像(16枚)

県の推計によると、開業日の3月16日から半月で、芦原温泉・福井・敦賀の新幹線3駅周辺を訪れた人の数は合わせて38万2000人で、前年の同時期から8万9000人増加。特に関東圏からは7万1000人と、約7割増となった。

恐竜博物館と朝倉氏遺跡博物館も来場者増加
恐竜博物館と朝倉氏遺跡博物館も来場者増加

主要な観光地の状況を見ると、福井・勝山市の県立恐竜博物館はコロナ禍前の2019年と比べて36.9%の増加。福井市の朝倉氏遺跡博物館では開館した前年と比べ26.7%の増加と、天候の影響を受けづらい屋内の観光地を中心に顕著な増加が見られた。

老舗和菓子店も開業効果にびっくり

一方、福井駅周辺の商業施設では、開業効果の実感に濃淡が出ていた。福井駅西口前の複合施設にあるフードホール「ミニエ」で、クラフトビールの製造と販売を行っている「アワーブルーイング」では、すでに常連を獲得するなど滑り出しは順調だという。

アワーブルーイング・岡田朋大さん:
手応えは非常にあって、特に県内のお客さんを中心にいろんなお客さんに来てもらっている。毎週来てくれる人もいて、週末を中心にすごく忙しくさせてもらっている

アワーブルーイングでは4月から、隣接する醸造所でつくられた正真正銘の“福井エキマエ”産ビールの提供も始まった。岡田さんは今後、ファンと一緒にビールをつくるイベントも考えていて「色んな人に関わってもらい、よりにぎわい作りに貢献したい」と意気込む。ゴールデンウイーク前後には新種のビールがデビューする予定で、開業直後の勢いを加速させたいとしている。

しかし、同じ「ミニエ」に入る他の店舗からは「欲を言えばもうちょっと盛り上がってほしい。平日ももうちょっと来てもらえるとうれしい」との声が聞かれた。地場産品の販売店などは、県民の日常的な利用よりも観光客をターゲットにしているものの、駅直結の施設と比べると認知度が低く、観光客の呼び込みに苦戦しているようだ。

駅周辺から少し足を延ばした路面店にも話を聞いた。柴田神社近くに本店を構える老舗和菓子店・村中甘泉堂では、開業当初は期待したほどではなかったものの、春休みに入って手ごたえを感じたという。

村中甘泉堂・村中洋祐代表:
春休みに移ってから、新幹線ってこんなにすごいのかというくらい。びっくりした

客足はサクラの時期まで途絶えなかったという。村中代表は「今の開業効果がずっと続くとは思っていない」としながらも「2~3年は今の感じが続いて、少し落ちたとしても(開業前の)3~4割増しで推移してくれれば」と期待を込める。

「新幹線開業は追い風」

一方、福井県内唯一の新幹線新駅「越前たけふ駅」周辺では、開業効果の実感には至っていないようだ。駅から車で10分の所にある越前打ち刃物の工房見学などができる「タケフナイフビレッジ」で話を聞いた。

タケフナイフビレッジ協同組合・笠島道代事務局長:
まだ1カ月なのでそこまで(開業効果の)実感はない。新幹線開業後、急に客が増えるのかなと予想していたが、思った程たくさん人が来たということはない

ただ、打ち刃物は季節性の商品ではないことや、北陸新幹線の沿線上に刃物の産地がないこともあり「新幹線開業は追い風でしかない」という。笠島事務局長は「継続して関東方面へのPRや集客に力を入れ、当社を知ってもらうための情報発信をしていく」と今後の展開を考えている。

北陸新幹線が福井にやってきて1カ月。“100年に1度”と言われるチャンスを逃すまいと、試行錯誤が続いている。

(福井テレビ)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(16枚)
福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。