日本の春を象徴する花、桜。
この桜を夏の暑い時期に咲かせる生産者がいる。

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神奈川・川崎市で生花作家として活躍する名古屋徹さん(58)。20年前から試行錯誤を繰り返しこの技術を改良してきた。

低温で管理し、つぼみの状態によって湿度や温度を変えることで夏に桜を咲かせている。

なぜ、夏に咲く桜にこだわるのか。

名古屋徹さん「春以外の色々な季節に世界中の方に桜を楽しんで頂きたい。この一枝を家や会場で見て頂くことで、いっぺんに日本の風景が出来上がる」

名古屋さんが期待を寄せていたのが、今年開催されるはずだった東京オリンピック・パラリンピックだ。

名古屋徹さん:
夏のオリンピックの中で桜が咲いてくれたら、そこに楽しみが、桜でさらにおもてなしというか、感動が湧き上がるのでは?

名古屋さんの夏咲きの桜は、東京大会の会場で展示される予定だった。

本来であれば、今、大舞台で満開になるはずだった桜は、箱根のホテルで展示され、訪れた人の目を楽しませている。

開催の延期が決まった東京大会。1年後に向けて、名古屋さんは動き出していた。

名古屋さん:
(来年の準備が)ぼちぼち始まります。世界の方にぜひ、日本の桜はこんなに素敵なのだと皆さんに喜んでいただきたい、感動していただきたい

夏咲きの桜は、多くの人を楽しませる日を待ちわびている。

親子2代の努力

桜を春以外の季節に咲かせるアイデアは20年前からあった。

2013年にオリンピックの東京招致が決まると、夏のオリンピックの時期に東京を訪れる外国人に、日本の桜を見せたいという気持ちが強くなった。

息子の大地さんは夏に桜を咲かせるという考えに、否定的だったという。
「春に咲く桜が一番だから、夏に桜を見たくない」という理由からだ。

しかし、父と同じ花の仕事を始めてから考えが変わった。

春に咲く桜とは違う風景。

違う景色が広がるのを目の当たりにし、夏に桜を咲かせようと、父と一緒に努力してきた。

以前は冷蔵庫のような施設に入れて、桜が咲く時期を遅らせる「抑制」という手法をとっていたが、考えを一新した。

桜にとって、常に過ごしやすい環境を作ることを第一に考え、専用の開花調整施設を造った。温度と湿度が管理されたことによって、桜の咲き方に劇的な変化が見られた。

専用施設内の桜

それでも満足していない。今の桜は、春に比べると60点ぐらいだと厳しい評価だ。

一年一年着実に桜は良くなっている。

来年の東京オリンピック。今年より綺麗な桜を、会場を訪れた人に見せてあげたいと、名古屋さんは思っている。

動画

<撮影・取材・執筆>石黒雄太
<撮影>三浦修