きょうスタートした宮内庁の公式「インスタグラム」。宮内庁にとってSNSへの挑戦は初めてのことだが、初日からさっそく、宮内庁にとって思いがけない”気づき”があった。

すでにフォロワー13万人超え

4月1日午前0時に開設した宮内庁の公式インスタグラムは、正午の段階ですでにフォロワーが13万人を超え、注目の高さが伺える。公式インスタには、ここ数カ月の天皇皇后両陛下のご活動の様子が19件アップされている。

宮内庁公式インスタより
宮内庁公式インスタより
この記事の画像(9枚)

2024年1月に行われた新春恒例の宮中行事「歌会始の儀」や、2月の長女の愛子さまも同席されたケニアの大統領夫妻を招いた昼食会、陛下の国会開会式ご出席などが写真と共に投稿され、2月の天皇誕生日の一般参賀については、おことばの動画も掲載されている。

インスタには動画も掲載
インスタには動画も掲載

中でも最も多い1万6000「いいね」(午前11時半現在)がついたのは、3月8日、愛子さまがきょう就職された 日本赤十字社の社長などから能登半島地震について両陛下と共に説明を受けられた際の投稿だった。 

公的な活動が投稿対象

一方、インスタ開設と同じ日の愛子さまの日本赤十字社への就職は、皇族としての公的な活動ではないため、投稿されていない。SNSの活用は、あくまで、公的なご活動を広く知ってもらうためのもので、一定の公私の線は引かれている。

日本赤十字社に初出社された 4月1日
日本赤十字社に初出社された 4月1日

就職に関する投稿は無いものの、愛子さまの就職のニュースに接した人たちが、公的な活動についても関心を持ち、インスタを「見に来た」ことが、「いいね」の数に繋がっているとも考えられる。

「惑星と衛星の関係」

皇室の活動を積極的に情報発信するためのSNSへの初挑戦。あまたあるSNSの中から、インスタを選んだ理由について、宮内庁の広報室は、視覚的に分かりやすく、若い世代が多く利用している点を挙げ、「次の時代を担う人たちにも皇室への理解をより一層深めてほしい」と説明した。

小室眞子さんの結婚が宮内庁広報室誕生のきっかけだった
小室眞子さんの結婚が宮内庁広報室誕生のきっかけだった

そもそも、SNSの活用については、秋篠宮さまが長女・小室眞子さんの結婚を巡る一部のバッシングなどを受け、皇室の情報のタイムリーな発信を提案されたことから検討が始まった。

そして、宮内庁は一年前の2023年4月に新たに広報室を設置し、まずはホームページのリニューアルに着手した。今回のSNSは広報室の設置から1年後に新たに始まったものだ。

以前、秋篠宮さまは記者会見で、SNSの活用について「惑星と衛星」の関係と発言されている。

秋篠宮さまは2022年11月の会見で宮内庁の広報の在り方について発言された
秋篠宮さまは2022年11月の会見で宮内庁の広報の在り方について発言された

スマホで調べものをする時代には、SNSで短く大事な情報を知り、詳しく知るために宮内庁のホームページを見る傾向があり、ホームページが惑星であれば、その周囲にある衛星がSNSにあたる、というたとえを使って説明された。「惑星」=ホームページの充実に取り組んだ上で、4月1日付けで「衛星」が周回し始めた形だ。

思いがけない“気づき”「お始め」は分かりやすい?

開設から数時間後、「X」にはある言葉に対する指摘が上がった。

元日の新年行事に関する投稿の説明文「皇嗣同妃両殿下お始め皇族各殿下から祝賀をお受けになる…」の「お始め」という表現は誤字ではないか、「を始め」が正しいのではないか、との指摘だ。

SNSで「誤字では?」との指摘が出た投稿
SNSで「誤字では?」との指摘が出た投稿

一般的な言葉に翻訳すると、「秋篠宮ご夫妻を始めとする皇族方から祝賀を受けられ」となる。これまで宮内庁の発信では、『お始め』という言葉がよく使われてきたので、記者にとってはある意味なじみがあった。いわば「宮内庁語」として認識していたものだが、一般的に耳慣れない表現でもある。

そこで、広報室に確認したところ、「『お始め』は『始め』の丁寧な表現としてこれまで使用している表現ではある」とした上で、「今回の件は我々にとって新たな気づき」「新しい世界に足を踏み入れたので、分かりやすい内容や表現を心がけていきたい」との説明だった。

こうした新たな気づきこそ、若い世代や一般的な感覚と皇室とをつなぐ、SNS活用の持つ意義とも言えるかもしれない。

宮内庁インスタの“中の人”はほんの数人
宮内庁インスタの“中の人”はほんの数人

外部の人材も登用して始まった宮内庁広報室だが、実際にはほんの数人で、まさに試行錯誤でSNSに取り組んでいる。

宮内庁は今後、両陛下以外の皇族方の活動の投稿のほか、海外の王室からフォロー申請があった場合に 相互にフォローすることについても検討していく方針だ。

海外の王室と相互フォローすることも
海外の王室と相互フォローすることも

記者自身もSNSに明るいとは言えず、同僚や娘に教わることが多いのが現状。投稿の範囲の広がりとともに、これまで分かりづらかった「宮内庁語」がどのように分かりやすい言葉に変化していくのか、たくさんのネットユーザーと共に今後の「進化」をゆっくり見守りながら、自身のSNSとの向き合いも「進化」させていきたいと思っている。
(執筆:フジテレビ宮内庁クラブキャップ兼解説委員 宮﨑千歳)

宮﨑千歳
宮﨑千歳

天皇皇后両陛下や皇族方が日々取り組まれる様々なご活動をより分かりやすく、現場で感じた交流の温かさもお伝えできるような発信を心がけています。
宮内庁クラブキャップ兼解説委員。1995年フジテレビジョン入社。報道局社会部で警視庁クラブなどを経て、2004年から宮内庁を担当。上皇ご夫妻のサイパン慰霊の旅、両陛下の英エリザベス女王国葬参列などに同行。皇室取材歴20年。2児の母。