13年ぶりに、村に賑やかな明かりが灯った。「葛尾村に交流の場を作って盛り上げたい」と、震災前に村で飲食店を営んでいた男性が、再びふるさとに”のれん”を掲げている。

震災後初 夜に営業する飲食店

2024年3月15日、福島県葛尾村に13年ぶりに夜の明かりが戻ってきた。宿泊施設の一画にオープンした「御食事処政」は、震災後 村内で夜に営業する初の飲食店で、店主の渡辺政廣さんが、故郷で店を再開させた。「本当にこっちに戻ってきて、良かったって思いますね」と渡辺さんはいう。

みどりの里せせらぎ荘の一角に夜営業の飲食店がオープン
みどりの里せせらぎ荘の一角に夜営業の飲食店がオープン
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村の全域に避難指示

原発事故で、村全域に避難指示が出された葛尾村。住民・約1600人が村外に逃れた。当時、オープン10周年を迎えていた渡辺さんも、店をそのままにして避難せざるを得なかった。

震災前に営業していた店舗を案内する渡辺さん
震災前に営業していた店舗を案内する渡辺さん

渡辺さんは「最初は2週間とか1カ月で帰れると思ってたが、どんどんと2カ月・3カ月になって。全部モノも悪くなるので捨てたりした時に、店はできないんだと思った」と振り返る。

故郷での営業 突きつけられた厳しい現実
故郷での営業 突きつけられた厳しい現実

新たな地で店を再開

不安を抱えながらも、同郷の人達の繋がりを作りたいと、原発事故から7カ月後には福島県三春町の仮設店舗で店を再開。2016年には、三春町の中心部近くに新たな店を構えたが、2023年に転機が訪れた。

村民をつなぎ留めたい 避難先で店を再開
村民をつなぎ留めたい 避難先で店を再開

帰還始まるも夜に営業する飲食店は…

村の宿泊施設「葛尾村宿泊交流館みどりの里せせらぎ荘」の責任者・米谷量平さんは、渡辺さんに村のある「問題」を相談した。
「村では食堂が午後6時半に終わってしまう。その後の、少し遅くなった人が食事できる場所が葛尾村になくて困っている」

渡辺さんに相談を持ち掛けた米谷量平さん
渡辺さんに相談を持ち掛けた米谷量平さん

葛尾村は2016年に村の大部分で避難指示が解除され、463人が帰還している。
村内では飲食店が3軒 営業しているが、村に住む人が夜食事をする店はなかった。
渡辺さんは「熱く説得されたので。やっぱり自分も地元好きなので、じゃあって感じでしたかね」と話す。

帰還が始まるも夜に外食できる店はなく
帰還が始まるも夜に外食できる店はなく

地元食材にこだわりたい

オープン2日前に訪れたのは、村の復興交流館「あぜりあ」。ここで、ネギやダイコン、ハクサイなど地元産にこだわって食材を仕入れた。「地元のモノだけあって甘かったり、新鮮ですし保存状態も良い。だから使えると、最高ですね」と渡辺さんはいう。

葛尾村産の野菜を積極的に仕入れる
葛尾村産の野菜を積極的に仕入れる

看板メニューは葛尾村で育ったハーブ鶏の焼き鳥。長年継ぎ足してきた秘伝のタレで味付けする。

看板メニューの焼き鳥
看板メニューの焼き鳥

集える場所 住民に笑顔

迎えたオープン当日。午後5時、いよいよ開店…すぐに店内は満席に。変わらないおいしさに、笑顔がこぼれる。
訪れた村民からは「葛尾に戻って来て、村のためにという心意気は素晴らしいと思う」「今までこういった施設がなかったので。夜7時以降、葛尾村はひっそり。みんな家に籠っている事が多いので、集える場があるというのは若い世代にとっても良いのかな」との声が聞かれた。

誕生日を祝うために利用した人も
誕生日を祝うために利用した人も

今後やりたいことも

葛尾村の夜に、再び賑わいを取り戻した渡辺さん。今後は、村の特産品を使ったイベントの開催も考えている。「新しい人もどんどんと入ってきているので、そういう人も仲良く、みんなが仲良い葛尾村にしていきたいなと思っています」と渡辺さんは語った。

帰還した村民も移住者も仲良く 
帰還した村民も移住者も仲良く 

住民の笑顔があふれる交流の場を、これからもずっと。渡辺さんは明るい未来を思い描いている。

(福島テレビ)

福島テレビ
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