春闘の賃上げ率が33年ぶりに5%を超えるなか、新藤義孝経済再生相が17日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、高水準の賃上げについて「みんなうれしくなる数字だと心強く思う」と歓迎した。

一方、日本銀行が近くマイナス金利を解除するとの観測があることについては、「日銀として様々な経済指標やデータを見て、そのなかで最適の決断をするのではないか」と述べた。

また、政府のデフレ脱却宣言の時期を問われ、「本当に心強い動きがいくつも出ている」としたうえで、「33年ぶりの賃上げもあるし、株価も史上最高と。そういうなかで、これは後戻りしない状態で、きちんと社会通念として定着するかが重要になる」との認識を示した。

番組コメンテーターの橋下徹氏は、マイナス金利の解除に関し、「中小企業の価格転嫁も消費拡大もこれからというときだから、日銀の判断はもう少し後でもよいのではないか」と持論を述べた。

これに対し、経済ジャーナリストの後藤達也氏は、「長い目で見て経済が安定的に成長するという観点では、このタイミングでマイナス金利を解除するのは悪くはないのかなと思う」と述べた。

以下、番組での主なやり取り。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
この大手企業中心に高い水準の賃上げが相次ぐ状況をどう見ているか。

新藤義孝(経済再生相):
非常に心強いと思っている。そして大事なことは、大企業の、また、組合の皆さんとの交渉がいい数字になった。であるならば、それをいかに全国のそれぞれの裾野へ、地方や中小企業、それから、一人親方とか、そういういろんな方たちがいる。そこまで裾野を広く賃上げをどうやって構造的に実現させるか。これは私たちの課題だと思っている。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
(賃上げ率)5.28%という賃上げの数字は予想外にいい数字と受け止めているのか。

新藤氏:
これはやっぱり、みんな嬉しくなる、そういう数字だと心強く思う。

後藤達也(経済ジャーナリスト):
5.28%は本当に強い数字。事前に市場のエコノミストが見ていた数字よりもかなり高い感じになっている。やっぱり企業もかなり稼いでいるし、人手不足も強まっているので、しっかり人を確保するためという観点で、今までと違う力学で賃金設定が行われているという感じだ。去年、今年だけじゃなくて、割と持続していく可能性は高いかなと思っている。ただ、中小企業に関しては、いろいろハードルもあるとは思うが。

松山キャスター:
日銀が今月19日までにマイナス金利を解除するという、大きな政策転換を図る可能性があるとの指摘が出ているが、こうした経済状況、賃上げも非常に高い水準で推移するなかで、今の経済状況と照らし合わせて、今後の日銀の判断をどういうふうに見るか。

新藤氏:
これはどのようになっていくかは日銀に委ねられているし、私の立場で、いま日銀の政策にコメントすることは従来から差し控えている。結局、日銀としても様々な経済指標、データを見て、そのなかで最適の決断をするのではないかなと思う。

松山キャスター:
日銀の金融政策決定会合、これは2日間にわたって行われるが、去年12月には新藤大臣も出席した。今回も出席する可能性はあるのか。

新藤氏:
私は会合のメンバーだが、国会日程とかそういったものを含めて、出席はその都度検討している。今回どうするかは、今のこのような状況のなかではコメントしないことになっている。

橋下徹(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
日銀の独立性ということで、政府、政治は口を出さないのだろうと思う。日銀は確かに金融のプロ、専門家が集まっているが、日銀の判断がこれまで必ずしも全部正しかったわけでもないだろう。これは個人の感覚だが、中小企業の価格転嫁も今やっと始まりそうになっているし、消費者の消費拡大も、さあこれから!という時に日銀がすぐ(マイナス)金利(解除)なんていうことを今言わなくても、過去にゼロ金利解除して、すぐに元に戻したこともあるのだから、現実の感覚からしたら、もうちょっと後でもいいのではないかと思う。

後藤氏:
ただ、物価も賃金も記録的な上昇率なってきているし、利上げするといっても1%、2%に上げていくわけではない。アメリカはこの2年間で(金利を)ゼロか5%に上げたが、日銀はマイナス0.1から、プラスちょっとに上がるという程度で、目先一年を見ても、せいぜい0.5%ぐらいまでしか上がらないということなので、何かそれで急に景気を殺してしまうだとか、株価にものすごく逆風になってしまうというようなリスクは、それほど大きくないのかなと思う。

橋下氏:
裏を返すと、なぜそんなあまり効果が見えないようなことをそこでするのか。単なるメッセージ性だけなのか。

後藤氏:
長く金融緩和し続けると、物価が上がりすぎてしまうリスクもあるし、円安が続くと、それはそれで困った問題だということもある。ただただアクセルを踏み続ければいいというわけでもない。長い目で見て経済が安定的に成長するという観点では、このタイミングでマイナス金利を解除するというのは悪くはないのかなと思う。

新藤氏:
大前提として、日銀関係者は何一つ喋っていない。報道が、こうではないか、ということで誰かが言うと、それがワーッと流れて、それに対する是非の議論が出てくる。やっぱりここはとても重要なところなので、日銀に(判断が)委ねられているわけだから、しっかりとした検討して最適な判断すると。このことに尽きると思う。

松山キャスター:
日銀が今回金融政策の転換を決定したとしたら、これがデフレ脱却宣言につながるのかどうかというのも一つの焦点になっている。今の岸田政権がデフレ脱却宣言をどこかでするのではないかという観測があるが、どういう状況になったらデフレ脱却という宣言ができるのか。

新藤氏:
私たちは、デフレ脱却をいつできるか、そして、新しい次の経済に移行する。それがいつそういう状態になったかということを常に検討している。大事なことは、ある一点の数字ではなくて、恒常的に物価が安定して上がっていき、それを上回る賃金が確保され、かつ、それをもとに業績も上がるし、消費も拡大するし、しかも、こういう状態が後戻りしないほど強くなっている。安定した状態が作れると。その判断をしなきゃいけないので、まずは、今、そういう意味では力強さのある、本当に心強い動きがいくつも出ている。ついに投資も100兆円をあの超えた。33年ぶりの賃上げもあるし、株価も史上最高と。そういうなかで、これは後戻りしない状態で、きちんとこれが社会通念として定着するか。そこまで、しっかりと応援したいと思う。

日曜報道THE PRIME
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今動いているニュースの「当事者」と、橋下徹がスタジオ生議論!「当事者の考え」が分かる!数々のコトバが「議論」を生み出す!特に「医療」「経済」「外交・安全保障」を番組「主要3テーマ」に据え、当事者との「議論」を通じて、日本の今を変えていく。
フジテレビ報道局が制作する日曜朝のニュース番組。毎週・日曜日あさ7時30分より放送中。今動いているニュースの「当事者」と、橋下徹がスタジオ生議論。