岩手・久慈市では、将来予測される巨大地震による津波で、徒歩での避難が間に合わない人が1000人以上いるとされている。
こうした中、市は車を使った避難のルールづくりを模索しているが、思うように進んでいない。

能登半島地震で見えた避難方法の課題

現在、内閣府の指針では、津波発生時、避難の方法は原則「徒歩」とされている。しかし、元日に発生した能登半島地震で、沿岸から平野が広がる富山県では郊外に高いビルが少なく少しでも早く避難したいと考え、多くの人が車を使って高台に向かったという。

このことについて自然災害と防災に詳しい岩手大学の齋藤徳美名誉教授に聞いた。

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岩手大学・齋藤徳美名誉教授:
冷静に行動することが結構難しい。そうすると手っ取り早く車に乗ってという行動に走りやすい現実はある。多くの外部(地域外)からの車をコントロールするのはやっかいで、ますます渋滞に発展しかねないという危惧がある。

徒歩だと避難が間に合わない久慈市

岩手県内でもこの課題に直面しているのが久慈市だ。

県は2022年、日本海溝沿いで巨大な地震と津波が発生した場合、県内で最大7100人が犠牲になるとの想定を発表している。このうち最も多いのが4400人と想定されている久慈市で、震災当時、被災を免れた市役所庁舎でも最大6.85m浸水するとされている。

久慈市は、中心市街地が海から近い平野部に形成されているため、徒歩での避難が間に合わない地域がある。特に避難ビルへの避難も難しい地域は「特定避難困難地域」と設定され、その対象者は、最大で1040人いるとされている。

被害が最も多く出るとされるのが冬場。久慈市が大雪に見舞われた2月26日、住民に話を聞いた。

「(能登半島地震で)車が流されている映像も見たので車はどうかと思ったが、でもとっさにはやっぱり車ですよね」、「どうしてもこういう所だと車を使いたくなる、冬だとなおさら」などと、高齢者がいる世帯や寒さ対策といった理由で車での避難を考える人が多くいた。

岩手大学・齋藤徳美名誉教授:
高齢者、それから体の不自由な方、この方々は徒歩で早く逃げることは不可能です。そうすると何か工夫をして車避難をするしかない。

ルールづくりは地域ごとに話し合いが必要

2023年9月に市が改定した津波避難計画では、原則「徒歩」での避難としつつ車を使った避難を検討するとしていた。
しかし避難のルールづくりは思うように進んでいない。

久慈市 防災危機管理課・田中淳茂課長:
地域ごとに地形とか地域の状況もそれぞれ違うし、我々行政主導でやるのもなかなかルールづくり難しい。

市が検討しているのは、地域ごとに避難ルールを定めることだが、地形やそこに住む人の年齢がバラバラで意見をまとめることが難航している。

こうしたことを踏まえ、齋藤教授は訓練を通して地域ごとに話し合いをすることが大切と話す。

岩手大学・齋藤徳美名誉教授:
できるだけ地域ごとに呼びかけて話し合いをする。防災士も育成しているから、そういう人たちも交えてどうするか工夫をしてもらう。それはすぐに結論が出るわけじゃないので、そういうきっかけを作ってお互いに訓練をしてみるとか、いろんな取り組みをしてみることで何か答えが出てくると思う。

避難目標地点の設置 津波避難ビルは3カ所に

一方で、市内で1カ所だけ指定されていた津波避難ビルは、久慈第一ホテルと久慈地区合同庁舎が新たに追加指定され3カ所となった。

避難場所まで間に合わなくてもここまで来れば最低限の安全は確保できるとされる地点「避難目標地点」を新たに定めた。

市内に93カ所設け3月から順次設置していく予定だ。

(岩手めんこいテレビ)

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