アメリカ大統領選挙の候補者選びが2月27日、中西部ミシガン州で行われた。民主党は、バイデン大統領が勝利したが、投票者の13%に上る10万人以上が「該当者なし」に投票する異例の事態となった。
ミシガン州は、スウィングステートと呼ばれる大統領選の勝敗を左右する激戦州の一つ。
アラブ系アメリカ人の有権者の割合が約2%(21万1405人)と全米で最も高く、4年前の大統領選ではバイデン氏の勝利を後押しした。
しかし、27日の予備選では、ガザ侵攻を続けるイスラエル支持を明言するバイデン政権への失望と怒りが、抗議票としてあらわれた。
この記事の画像(4枚)ミシガン州のアラブ系アメリカ人で組織する「Listen to Michigan(ミシガンの声を聞け)」は27日の民主党予備選で、投票用紙上の「該当者なし」に印をつける事実上の“白票”を投じることで、バイデン氏に抗議の意を示すことを決め、目標を1万から1万5000票に設定した。しかし結果は、それを大きく上回る巨大な抗議の波となった。
それでもバイデンは「10万人の声を無視している」と反発
「Listen to Michigan」は、予備選の結果を受けて28日会見を開き「取り組みは成功したと自らの活動を評価した。メンバーの一人アッバス・アラウィー氏は「バイデン大統領にイスラエル政策を変える必要があるという明確なメッセージを送ることが出来た」と選挙結果を振り返った上で、ガザ情勢に一言も言及しなかったバイデン氏の勝利の声明を「10万人以上の有権者を無視した」と怒りの声を挙げた。
さらに、団体を支援するディアボーン市のアブドラ・ハムード市長は「大勝利だった。いつの日か平和を求める大統領が就任することを願っている。私たちが何よりも望んでいるのは、11月に民主主義が崩壊しないよう活動することだ。その選択は、大統領の手に委ねられている。それでもネタニヤフ首相を支持し続けるのか」とバイデン氏に対応を迫った。
アラブ系アメリカ人だけではない、今回の予備選挙で注目すべきは「該当者なし」に投票した有権者の3分の1近くが、学生街からの投票だったと言うことだ。ミシガン州ほどアラブ系アメリカ人のコミュニティが大きい激戦州はないが、全米では、学生の有権者が多い州はいくつかあり、バイデン氏が11月の大統領選で勝利するためには、彼らの投票が必要となる。
前回、4年前の大統領選の30歳以下の投票先は、バイデン氏が6割でトランプ氏が3割とバイデン氏がトランプ氏にダブルスコアをつけた。しかし、27日の予備選では、アラブ系アメリカ人の動きに大学生をはじめとした若い有権者が「該当者なし」の動きに呼応した可能性もある。
27日の投票結果を受けて、「Listen to Michigan」は、抗議の動きを全米で加速させようと動いていて、予備選挙が集中するスーパーチューズデーでもバイデン氏の獲得票と同時に「該当者なし」の票数も注目となる。
2020年の大統領選挙ではミシガン州、ペンシルバニア州やウィスコンシン州などといった激戦州でバイデンを勝利に導いたのはアラブ系アメリカ人や若い有権者層だったとも言われている。今後、ミシガンの「抗議票」のうねりが大きくなればバイデン氏の再選の道のりが一層厳しくなることが想定される。
(FNNワシントン支局 千田淳一)