熊本地震の本震から4月16日で2年がたった。
災害への備えの大切さが再確認される中、NPO法人「日本トイレ研究所」の調査で、大地震の際、排水管が壊れた水洗トイレを使うと、逆流してあふれる危険性があることが、十分に知られていないことが分かった。
この調査は、3月30日~4月2日にかけて、東京と大阪に住む成人男女2000人からインターネットで回答を得たもので、排水管が壊れている場合に水洗トイレを使うと、汚水が溢れたり逆流したりする危険性があることについて、44.4%が「知らない」と回答。
この傾向は若い世代ほど顕著で、60代以上が31%なのに対し、20代は56%が「知らない」と回答した。
大地震が起きたら、なぜ水洗トイレは逆流する恐れがあるのか?
自宅のトイレが使用できない事態に備え、どのような準備をしておけばいいのか?
意外と知られていない大地震が起きたときのトイレ事情を、日本トイレ研究所の加藤篤さんに聞いた。
大地震が起きたら自宅のトイレは使わない方がよい
ーーそもそも大地震が起きると、なぜトイレは逆流する恐れがあるのでしょう?
排水設備が損傷(閉塞、逆勾配、断絶など)した状態で使用すると、汚水が漏水やオーバーフロー、逆流することが考えられます。
ーー大地震が起きたとき、自宅のトイレは使わない方がよいのでしょうか?
地震発生直後は断水などの可能性が高いので、そのまま使用しない方がよいです。
給排水設備の状況を確認することが必要で、詰まらせたり、オーバーフローさせると、復旧が大変です。
しかも、すぐに業者は来てくれません。
集合住宅の場合、他の住戸に迷惑をかけると損害賠償になる可能性もあります。
携帯トイレの使用が望ましい
ーー自宅のトイレが使えない場合、どうすればよいのでしょう?
初動対応としては、携帯トイレを使用することが望ましいです。
その上で給排水状況を確認します。
確認方法は確立されていませんが、自宅周辺のマンホールが隆起してないか、宅地内の汚水ますに土砂が入ってないか、地盤沈下や液状化していないかなど、リスクを減らすことはできます。
とくに集合住宅は災害時のトイレ対応に関する合意形成が大切です。
ーー改めて携帯トイレとはどういうものなのでしょう?
その名の通り持ち運べるトイレです。
便と尿を入れる袋で、水が流れなくなった便器に取り付けて、その中に排泄します。
「袋の中に吸収シートが入っているタイプ」と「使用前や後に凝固剤を入れるタイプ」があります。
便と尿はほとんどが水分なので、それを吸収もしくは凝固して安定化することができます。

ーー大地震に備え、携帯トイレはいくつ備蓄しておけばいいのでしょう?
自分が1日に何回トイレに行くかを把握することが必要です。
例えば、1人が1日5回(災害時なので少なめ)とすると、最低でも7日間は必要だと思いますので、35回となります。
災害への備えは、時間がたつとつい忘れがちになってしまうが、凝固剤のように使用可能期間があるものもあるので、こうした機会に改めて確認しておくことが大切だ。