「うちの子は4月から保育所に入れるのかしら」。2月はその可否について結果が出る時期だ。“保活”をしたことのある保護者はその大変さを実感した方も多いだろう。保育所の見学予約、紙の申請書の記入、市役所への提出など、とにかく手続きが煩雑だからだ。

ところが2026年4月に入所する児童から、民間のアプリを活用し、保育所の入所申請がオンラインで出来るようになる。保護者にとって負担が大きかった煩わしい手続きが、スマートフォンで完結できるようになるそうだ。保護者の負担軽減だけではなく、自治体にも大きなメリットがあるらしい。その仕組みを詳しく見てみよう。

書式を統一し、DX化実現

保育所への入所手続きは、一部の自治体ではオンライン申請が始まっているものの、多くの自治体が書面で申請を受け付けている。家族の情報や利用希望園など記入欄が多く、記入するだけでも時間がとられる作業だ。一方、自治体側でも、書面で受け付けた申請書をパソコンに入力する作業が行われていて、膨大な時間と労力を費やしているという。

これまで、デジタルトランスフォーメーション、いわゆるDX化が難しかった背景には、全国に1700以上ある自治体で申請の届け出の内容にばらつきがあることが挙げられる。こうしたばらつきを、国が届け出てもらう内容を全国共通のものに“標準化”することで、どの自治体に住んでいても、スマホからオンラインで申請が可能になるという。こども家庭庁は、早ければ2026年の4月に入所する児童から使えるよう仕組みを整備し、希望する全国の自治体が順次導入できるようにしたい考えだ。

こうした「保育所入所申請のDX化」は、保護者にとっても行政にとっても一石二鳥の効果があるとこども家庭庁の担当者は話す。

2026年度からは保育所の情報収集から申請書の提出までスマホで完結できる(画像はイメージ)
2026年度からは保育所の情報収集から申請書の提出までスマホで完結できる(画像はイメージ)
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保護者にとっては、以前から度々問題となっていた“保活”の負担の大きさが解消される。これまでは、自治体によって異なる“保活”制度を一から学んだり、施設の見学のため電話予約をしたり、申請書を記入し書面で提出する…といった、せっかくデジタルに慣れている親世代がアナログな申請を強いられてきた。だからこそ、行政サービスもアナログからデジタルに変えていかないといけないという。

2026年度からは、民間アプリを活用し、保育所の情報収集から、施設の見学予約、申請書の提出までスマホで完結することになる。

中規模の自治体でもシステム導入が可能に

一方、行政サイドとしても、業務の軽減に繋がることが期待される。多くの自治体では、4月入所に向けて前の年の10月頃から半年程かけて、家庭の状況を「点数」に換算して高い順に入所の順位を決める作業などを行っている。保護者から提出された申請書の内容をパソコンに打ち込んだり、点数を計算したりする作業を手作業で行っている自治体が大半で、労働負荷の高い業務となっているのが実情だ。

点数の計算システムを導入しているところもあるが、自治体ごとに考慮する基準が異なるためオーダーメイドで一からシステムを作ることになり、費用が高く、導入できるのは財政力のある政令指定都市などの大きな自治体に限られている。

保育所申請の手続きが全国共通のものとなれば、中規模の自治体でもシステムを導入できる可能性が広がるという。また、オンライン申請によって手入力が必要なくなるため、自治体の業務の軽減にも繋がり、本来人を割くべき窓口での相談支援などに人を充てることが出来るようになるという。

政府のデジタル行財政改革会議(2023年12月)
政府のデジタル行財政改革会議(2023年12月)

入所の優先順位を決める基準を全国共通のものにすることについて、こども家庭庁は、「これまで国としてはルールを作ってこなかったことから、まずは複数の自治体に状況を聞くなどして、共通化するべき事項についての実態把握を進めたい」としている。

一度「全国一律の保育所入所申請システム」が確立すれば、“保活”以外の様々なサービスにも応用できる可能性があるという。こども家庭庁の担当者は「例えば、延長保育や一時保育、さらには病児保育の予約の申請手続きについても、ワンストップでできるような仕組みになっていけば」と期待感を示している。
(フジテレビ社会部 松川沙紀)

松川沙紀
松川沙紀

フジテレビ社会部・省庁キャップ こども家庭庁担当