2024年の米国の大統領選挙で民主党は、シンガーソングライターのスーパースターで、最近日本でもライブ・コンサートを開いたテイラー・スウィフトさんに勝利への鍵を託すことにしたという。

“スウィフト効果”でフロリダを“青い州”に

スウィフトさんは16歳の時に発表したアルバムがいきなり大ヒットして「神童」と呼ばれ、以来レコードの売り上げは2億枚を越え、Spotify(スポティファイ)のリスナーは2023年11月だけで1億人にのぼる。米音楽界最高峰の祭典「グラミー賞」で史上初となる4回目の「最優秀アルバム賞」を2月4日に受賞したばかりで、「21世紀の最もポピュラーなレコーディング・アーティスト」とも称されている。

スウィフトさんのフロリダ州でのコンサートを民主党が“利用”?
スウィフトさんのフロリダ州でのコンサートを民主党が“利用”?
この記事の画像(4枚)

そのスウィフトさんだが、次に「フロリダ」というタイトルの曲を収録した新しいアルバムをリリースし、そのために2024年後半にフロリダ州で集中的にライブコンサートを開催する予定を組んでいる。

「テイラー・スウィフトはフロリダを青い(民主党の)州に変えられるか?民主党は夢想する」

政治専門のニュースサイト「ポリティコ」は7日、こういう見出しの記事を掲げた。

記事の中で、フロリダ州選出の下院民主党のマックスウェル・フロスト議員はその思惑をこう吐露している。

「大統領選直前にこの機会を逃す手はない。彼女のファンに(民主党のために)投票へゆくようコンサートなどでぜひ働きかけたい」

フロリダ州の民主党は、スウィフトさんのコンサートで若いファンたちに有権者登録をするよう働きかけるとともに、スウィフトさんからも直接投票に行くことの意義を語ってもらいたいと考えていると記事は伝える。

スウィフトさんは2020年の大統領選挙でバイデン氏を支持。今回は誰を支持するか、まだ表明していない。
スウィフトさんは2020年の大統領選挙でバイデン氏を支持。今回は誰を支持するか、まだ表明していない。

そのために、フロリダ州でのスウィフトさんのコンサートには、必ず民主党の活動家が参加して若いファンたちへの働きかけを行うようにするという。

スウィフトさんは2024年の大統領選で誰を支持するかまだ明らかにしていないが、前回2020年にはバイデン氏支持をしており、地方選でも民主党の支援をしている。

若い有権者の“民主党離れ”歯止めかけられるか?

フロリダ州は俗に「スイング州」つまり、民主、共和いずれの党にもスイングする(揺れ動く)州とされる。また、大統領選で各州に割り当てられた選挙人は29人でカリフォルニア州、テキサス州に次いで多い。つまりフロリダ州の投票の行方は大統領選の行方を大きく左右するもので、それも選挙人制度が「勝者総取り」なのでこの州の一票は重い意味を持つ。

2000年の大統領選の場合、フロリダ州で共和党のジョージ・ブッシュ氏の得票が民主党のアル・ゴア氏を僅か537票差で上回って同州に割り当てられた選挙人25人(当時)を総取りした結果、全国的には選挙人で5人差で大統領に当選した。

そのフロリダ州では最近若い有権者の民主党離れが進んでいると言われ、それが2016年、2020年と州では続いて共和党に敗北する結果につながっているとも分析されている。

若者からの絶大な人気を誇るスウィフトさん
若者からの絶大な人気を誇るスウィフトさん

そこでZ世代(2000年前後に生まれたコンピューター時代の世代)の「女神」とも言われるスウィフトさんに民主党は希望を託すことになったようだが、ニューズウィーク誌が1月18日現在で行った世論調査では「今年の大統領選ではスウィフトさんが支持した候補者に”おそらく”或いは”必ず”投票する」と答えた有権者が18%もいて、「女神」のご利益は期待できそうだ。

一方、共和党陣営もスウィフトさんの登場には脅威を感じているようで、すでにスウィフトさんがトランプ氏を支持するような発言をするディープフェイクの偽動画も出回り始めていると言われる。

2024年の米国の大統領選を占うには、芸能ニュースにも目配りしなければならないようだ。【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。