自民党の甘利明前幹事長(元経産相)は、11月の米大統領選に向け、共和党の指名争いで3連勝中のトランプ前大統領が再び大統領に就任した場合、1期目の時よりはるかに「アメリカ第一主義」が強まるとの見方を示し、それに対応するには、「経験値を持つ安倍晋三元首相のチーム」の力を借りることが必要だと強調した。

11日のフジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)で見解を示した。

甘利氏は、トランプ氏が今回再選を果たした場合、(合衆国憲法の3選禁止規定により)この先は選挙を気にしなくてよいため「縦横無尽に自分の思い通りのことをやるという力がより働く」と指摘。「G7(主要7カ国)と(トランプ氏を)結べるのは安倍(晋三)さんしかできない。この人がいないことが西側にとってどれくらいの大きなダメージかを考えなくてはならない」と話した。

その上で、「経験値を持っている安倍チームを首相官邸のスタッフに(加え、)しっかり構えることがいま考えられる一番の策だ」と述べた。

ワシントン駐在経験のある松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員)はトランプ氏の現在の側近メンバーに関して「1期目は手堅い布陣をしいていたが、その人たちは氏から離れた。新しいメンバーはアメリカ第一主義だけを掲げる人たちばかりで、相当過激な政策に偏るのではないかとの見方が(米国内に)ある」と指摘した。

アメリカ政治・外交に詳しい上智大学の前嶋和弘教授は、「トランプ氏は今度(2期目)はやりたいことを全部やる。そのための人員を考えている」との見方を示した。あわせて「アメリカの(共和党系の)シンクタンクはこの8年で大きく変わった。最初はトランプ氏に反発していたが、いまはトランプ氏の大応援団になっている。アメリカ・ファーストをいかに実現するか、トランプ氏以上のことをしたいという人たちが手ぐすね引いて待っている」とも指摘、「我々は注意をしないといけない」と警告した。

以下、番組での主なやりとり。

安宅晃樹キャスター(フジテレビアナウンサー):
昨年12月、国内鉄鋼最大手の日本製鉄が、アメリカ鉄鋼大手USスチールを買収することで合意したと発表した。

トランプ氏は大統領に再び就任した場合、この買収を認めない考えを明かした。 

甘利明氏(自民党前幹事長・元経産相):
日本製鉄がUSスチールを買収するのには前段がある。USスチールは単独ではなかなか厳しい状況になっている。 そこで買収提案をしたところ、買収をすると言ってきた企業の条件があまり良くなくて入札にした。そうしたところ、日本製鉄の条件が一番良かった。雇用は全部守る、そして、USスチールの名前をそのまま使える、金額も一番大きい。 USスチール経営陣にも労働者にとってもベストな判断だ。ところが、それが政治的に利用されて、こういう状況になっている。一つは正確にこの経緯と内容をしっかり知らしめること。むしろ鉄鋼労組はいままでよりはるかに歓迎すべき案だ。ところが、誤解を受けている。政治利用されているから、両方(バイデン氏、トランプ氏)とも反対する労働者の側に立つぞ、と言っている。 ここは民民(民間同士の契約)のことだから、少しいったん引いて、本当にUSスチールにとって何がいいのか、あなた方(アメリカ側)がまず判断してくださいということでちょっと引いた方がいいかなと個人的には思う。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
安倍さんや甘利さんもそうだったと思うが、とにかくあのトランプさんに説明をして、アメリカの利益になっていますよということを、甘利さんはじめ、安倍さんもかなり説明したと思う。政権与党だったからこそ、トランプ政権の大変さということをもう身に染めてわかっていると思うが、これから準備するにあたり、どの点がポイントになってくるか。

甘利氏:
政策的な対応の前に、トランプさんが(大統領に)なった時に、G7(主要7カ国)が抱える、考えているリスクが2つある。最初の4年は次の選挙を考えると、それがかなり制御に働く。もし今回再選したら、それから先選挙はなく、選挙を気にしないから、縦横無尽に自分の思い通りのことをやるという力がより働く。それが一つ。前回のときには、それでもトランプさんをうまくなだめて誘導して「これがドナルド、あなたにとってもプラスだよ」と誘導できて、G7と結べる政治家がいた。それは安倍さんしかできない。この人がいないということが西側にとってどれくらいの大きなダメージかというのをこれから考えなくてはならないね。

橋下氏:
日本だけではなく、G7の中にもういないということがマイナスなのか。

甘利氏:
そうだ。その経験値を持っている安倍スタッフ、安倍チームがある。その安倍チームを首相官邸のスタッフに(加え、)しっかりと構えることが今考えられる一番の策かなと思う。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
アメリカ議会ではすでにウクライナ支援をどうするかで、与野党で一旦合意したものがトランプ前大統領の発言一つでひっくり返り、いま大混乱に陥っている。支援が止まるのではないか、ということも言われている。仮にトランプ前大統領が本当にホワイトハウスに返り咲いた場合、では、どういう陣営で臨むのか。一期目のトランプ政権のメンバーは、マティス元国防長官や、ケリー補佐官、マクマスター補佐官ら軍人を中心にかなり手堅い布陣をしいていた。が、いま、その人たちはすでにもうトランプ氏から離れてしまった。新しいメンバーは、アメリカ第一主義だけに専念して、それを掲げるような過激な人たちばかりではないかとみられている。相当過激な政策に偏っていくのではないか、という見方がある。

前嶋和弘氏(上智大学総合グローバル学部教授):
ええ、今のところそう見えられている。先ほど甘利さんが言ったが、一期目は次がある。今度は自分がやりたいことを全部やる。そのための人員をトランプさんは考えている。しかも、もう一つ、アメリカのシンクタンクがこの8年間で大きく変わった。最初はトランプさんに反発していたが、いまトランプさんの大応援団になっている。アメリカ・ファーストをいかに実現するかと。(シンクタンクの)トップだけではなく、下の方も、要するにトランプさんの頭になって、トランプさん以上のことをしたいという人たちがもう手ぐすね引いて待っている。やりたい方にもっていくのだと思う。それを我々は注意しないといけない。

松山キャスター:
トランプ前大統領は、中国からの輸入品に60%を超える関税を課す意向も示している。

甘利氏:
アメリカにとって中国は第3の輸出国、中国にとってアメリカは第1の輸出国だ。経済の第1位と第2位が完全に分断してしまったら、両国だけでなく世界経済にとって大マイナスになる。かと言って、今までと違って機微技術が武器に転用される時代だから、何を分断して何を今まで通りにするかということが大事だ。日用品の貿易関係は分断する必要はない。機微技術や、こちらの国益に関わるというところはリスクを分断する。デカップリングからデリスキングという方向になっている。 この手法を取るように、その方がプラスだよと、どうアメリカを誘導していくか、それを誰がするかだ。

橋下氏:
前嶋さんは、シンクタンクの考え方が変わってきたと言った。トランプさんの考えを世界の、いわゆる識者と言われる人たちは猛批判しているが、アメリカの識者たちは、トランプさんの政策の方が正しいのではないかと思っているということか。

前嶋氏:
少し注釈が必要だが、共和党側(のシンクタンク)だ。民主党側はそうではないが、共和党側はまさにそう、おっしゃる通りだ。いかにアメリカ・ファーストを実現するか。だから、関税を上げることもシンクタンク側から出ている。

日曜報道THE PRIME
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