中国の大型連休「春節」が10日にスタート。日本にも多くの中国人観光客がやって来るかと思ったら、そうでもなさそうだ。取材では「中国本土からの客が少ない」という声が聞こえてきた。いったい何が起きているのか。

旧正月の「春節」を前に、中国は新年の雰囲気に包まれ、多くの人が国内外に動く。

交通機関のラッシュもピークを迎えていて、上海の鉄道の駅は大勢の乗客であふれかえり、身動きが取れないほどの混雑ぶりだという。

今年の春節は10日から17日までの8連休。この期間の前後で、中国国内では過去最多となる、延べ90億人が大移動する見通しだ。(中国政府発表1月26日~3月5日の40日間で延べ90億人が移動)

■「90億人」移動というが日本の観光地にはあまり来ていない

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“90億人の大移動”。どれぐらいの人が日本にやって来るのか。 外国人観光客が多く訪れる大阪・ミナミの道頓堀で、「イー、アル、サン」中国語が聞こえてきたと思もったたら…

 (Qどこから来ましたか?) 「台湾」「マレーシア」「韓国」

しばらくインタビューを続け、ようやく中国本土から来た人に会うことができた。
上海からの観光客:上海から来ました。春節を楽しむために来たわ。USJに行ってきた。あとはディズニー。

台湾や韓国、東南アジアなどでも「春節」を祝う伝統があり、アジアの人が多くみられましたが、取材する中で中国本土から来たという人は10組中3組だけ。しかも団体客の姿はなかった。

「串かつ だるま」の社長で道頓堀商店会の会長、上山さんに話を聞くと…
道頓堀商店会 上山勝也会長:韓国、香港、シンガポール、タイ、その辺の東南アジアの方は全て増えています。中国から来られる方については2019年度比で4割ぐらい。

まだ「春節」の前なので、10日から多くの人が来ることを期待するという。
道頓堀商店会 上山勝也会長:ニーハオ!中国語ようしゃべらんけど、よろしくお願いします。

一方、宿泊客のほとんどが外国人という「道頓堀ホテル」では、春節のために600万円以上かけて、「ドリンクバーコーナー」を作った。
道頓堀ホテルグループ 橋本明元専務取締役:おかげさまで満室近く(予約を)いただいております。ことしは韓国・台湾が中心ですね。中国大陸の方は非常に少なくなっています。中国のお客さまが増えてくると、ホテルとしても安心かなって思っています。

実は去年、大阪に訪れた観光客の数を見ると韓国や香港はコロナ前と比べて増えている一方、中国本土から来た人は約7割も減っている。

■上海から「春節」の実情を生報告

延べ「90億人が大移動」というが、日本にはあまり来ていないとなると、どこへ行ったのだろうか?中国で取材を続ける沖本有二上海支局長が生中継で伝える。

沖本有二上海支局長:私は今、上海の豫園(よえん)という場所にいます。中国の伝統的な街が楽しめる人気の観光地で、頭の上には魚の飾り付けがされています。中国では魚は年越しの縁起物なんです。来年もお金や食べ物に困らないようにということで、すっかり大みそかの雰囲気になっています。ものすごい人がこちらを訪れているんです。中国はこんなに活気があるのに、どうして日本に観光客が来ていないのかという、2つの要素があると思っています。
 まず1つ目が、中国の景気が先行き不透明なところがあり、お金がかかる海外旅行よりも、近場の国内旅行を楽しむ人の方が増えているという実情があります。
 2つ目に、日本との関係について、日本と中国を結ぶ飛行機の便の本数はコロナ前の6割ほどにしか回復していません。日中関係が必ずしも良好ではない中で、日本から中国へ行く人のビザなし渡航がまだ解禁されない状態です。航空需要がなかなか増えていないので、いざ春節で中国から日本へ行きたいとなった時にも、本数が足りなかったりあるいは料金が高かったりしているのではないかと想像されます。

中国国内の経済状況と日中関係が影響しているという。それにしても「延べ90億人移動」というのはすさまじい数なので、日本への観光客がもっと多くてもいい気がするのだが。

沖本有二上海支局長:90億人という数字にも実はからくりがあると考えています。2つのからくりがあります。
 まず1つ目が、90億人という数字の内訳。そのうち8割の72億人が自家用車で移動する人の数となっています。中国では春節の時期になると高速道路が無料になります。お金を節約したい人ほど、車での移動を選びやすいという実情があります。
 そして2つ目ですが、これも自家用車に関わる話で、今まで中国政府は数字をカウントするときに一般道を走る自家用車の数は加えてこなかった。ことしはそれも数に加えますよということで、90億人と史上最多の数が積み上がった形になっています。

なぜ、中国政府は計算方法を変えたのか?

沖本有二上海支局長:根っこには中国の経済状況が必ずしも良くないというところがあるのではいかと思います。去年12月に中央経済工作会議(中国の経済政策を決める会議)が開かれました。非常に重大な会議でこれからの中国を左右するような大きな会議です。その中で『中国経済は明るい』と世論を指導・誘導するという方針が示されたということなんです。このような方針を示すというのも異例のことなんですが、やはり中国の景気の先行きについて、市民の不安を払拭しないといけないという流れの中で作られた『90億人』なのではないかと感じます。

(関西テレビ「newsランナー」2024年2月9日放送)

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