2月3日の今日は節分。恵方巻を食べる習慣もかなり広がってきたようだ。こうした中で帝国データバンクが1月24日、恵方巻の価格調査の結果を発表した。

全国の大手コンビニエンスストアや外食チェーン、スーパー、百貨店、著名な日本料理店など104社で販売される2024年節分シーズンの恵方巻の価格を調査した結果、一般的な五目・七目の恵方巻(太巻・1本当たり)における平均価格は948円(税込)だった。

一般的な恵方巻きは昨シーズンに比べ39円(4.3%)値上がり

1年前(2023年の節分=昨シーズン)の909円に比べて39円、率にして4.3%の値上がりとなった。

同社は「恵方巻の平均価格は値上がり傾向が続いたものの、1本当たりの平均価格で40円前後の値上げと小幅なものが多く、70~150円の値上げだった昨シーズンに比べると一服感も出てきた」としている。

なお、特に海鮮恵方巻では原材料価格が安値となり、大幅に値下げしたケースも目立つなど、昨シーズンと異なる動きもみられたという。

「恵方巻」平均価格の推移(提供:帝国データバンク)
「恵方巻」平均価格の推移(提供:帝国データバンク)
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また同社は「予約制の導入は食材廃棄コストの低減で利益面の恩恵を受けるケースもあるものの、高価格帯の商品や限定生産品などに限られ、店頭販売も多い1本1000円前後の恵方巻ではフードロス対策として効果が限定的とも聞かれる」としている。

今年は値上げに一服感が出てきたということだが、これはなぜなのか? 来年以降、値上げ幅はさらに小さくなるのか? 帝国データバンクの担当者に聞いた。

値上げ一服感の要因は「原材料価格の低下」

――最近の恵方巻の傾向は?

最近の恵方巻では、オーソドックスな材料で作られた「五目巻」に加え、海鮮素材を豊富に使った「海鮮恵方巻」、ローストビーフなどを使用した「西洋風恵方巻」、ロールケーキなどを恵方巻に見立てた「スイーツ巻」など、バラエティに富んでいるのが特徴的です。

こうした恵方巻は価格も高くなりがちですが、節分というシーズン物の商品でもあり、売れ行きは好調だと聞かれます。

2024年に関しては、コンビニ大手・ローソンをはじめ、余剰具材や規格外品の使用が、サステナブルな食品として、新たな付加価値を獲得しつつあるようにも感じます。


――今年は値上げに一服感が出てきたということだが、その理由は?

「原材料価格の低下」が大きな要因とみられます。去年は、前年同月に比べて鶏卵が30%以上、マグロやサーモンなどは40%以上も価格が高騰し、そのほかの素材でも大幅な値上げが相次ぎました。

一方、今年は一転して、マグロをはじめ多くの素材で値下がり傾向が続いています。

中国による水産物の対日禁輸や、アメリカの対ロ輸入制裁に伴うロシア産海産物の流入、マグロなどは特に欧州産の畜養マグロが豊漁で、安値で国内市場に流入するなど供給過剰感もあり、価格が大幅に下落したことで、去年に比べ原料コストが抑えられていることが背景にあります。

恵方巻(1本)の平均価格アップの要因・背景(提供:帝国データバンク)
恵方巻(1本)の平均価格アップの要因・背景(提供:帝国データバンク)

――一服感が出てきたとはいえ、去年に比べて4%値上げ。この理由は?

例えば、恵方巻に欠かせない海苔は、有明海産を中心に不作が続き、2024年も価格の大幅な上昇傾向がみられます。

味付けかんぴょうも、国内農家の減少や、特に中国産の不作で品薄感が強いなど、一部の食材では価格が上昇しているものもあります。

食品スーパーでは、光熱費や人件費など運営コストは上昇しており、全体では価格を引き上げざるを得なかったとみられます。


―――来年は、さらに値上げ幅が小さくなる?

何とも言えない情勢です。足元では、一定の値付けであっても「季節もの」の商材でもあることから手堅い購入量が見込まれ、多少の値上げでも買ってくれるだろう、という見方もあります。

人件費の上昇、物流コストの引き上げなども鑑みれば、引き続き、値上げは続くと思いますが、今年の売り上げ動向を見てからの判断になろうと思います。

予約制の定着継続には懐疑的な見方も

――「ほぼすべての企業が予約制を導入している」ということだが、これは具体的には?

食品スーパーや百貨店、大手コンビニなどが該当します。個別に予約を受け付ける料亭などでは、生産に限りがあることから限定生産として、完全予約制を採用しているケースもあります。


――予約制を導入する企業が増えた背景は?

近年、「フードロス対策」として注目されていることが背景にあります。2016年に世界初のフードロス対策法がフランスで成立しましたが、この成立日が皮肉にも2月3日でした。

当時、コンビニやスーパーで大量に売れ残っている恵方巻の写真がセンセーショナルなものとしてSNSで拡散され、話題になったことが決定打となったように思います。

去年は、想定外の原材料高から「フードロスできるほどの余裕がない」こともあり、予約制にして生産数を限定し、利益への影響を最小限に抑えたかった、という側面もありました。

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――恵方巻の予約制は定着していると思う?

現状では、恵方巻の予約制は「定着している」と思います。ほぼすべての企業で何らかの予約制を導入しており、特に高級なもの、限定生産品では予約完売のものもみられます。

2020年に施行された「食品ロス削減推進法」も後押ししています。ただ、今後も定着が続くかというと、少し懐疑的な見方もできます。


――それはなぜ?

高級なもの、限定生産品で予約完売が多いということは、裏返しで低価格品・普及価格品(1000円前後)の商品では予約完売まで売り切れていない、という現状があります。

また、その日の天候や集客状況でも左右されますが、特にコンビニやスーパーの場合「品切れを起こしたくない」という思惑もあり、以前に比べれば過熱感はありませんが、作りすぎてしまう場面はどうしても発生してしまいます。

特に恵方巻は、スーパーでは年に数回しかない「最も売れる“すし総菜”」を売るチャンスであることも、販売合戦に熱がこもってしまう要因です。

予約制を義務付ける、恵方巻の販売を高価格帯だけに制限するといった方法であれば予約制を強制的に定着させることもできなくはないですが、折角根付いた恵方巻の文化を閉ざすことになりかねません。

そのため、残念ながら予約制の定着に向けた施策、というものは現時点で、あまり考えつくものがないのが現状です。

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今年の恵方巻は値上げに一服感が出ていて、その理由は鶏卵やマグロ、サーモンなど「原材料価格の低下」だった。

来年については「何とも言えない情勢」としつつ、「値上げは続くと思うが、今年の売り上げ動向を見てからの判断になるのでは」といった見解を示してくれた。売り上げ次第ということだが、来年も値上げの一服感が続くことを期待したい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。