2023年7月、宮城県栗原市の小学校に軽トラックで侵入し、児童3人をはねてけがをさせた罪に問われている男の裁判が、1月15日に始まった。小学校での安全対策の見直しが急ピッチで進むなど、社会を震撼させたこの事件。男は直前に数回自身の体調について警察に相談していて、法廷では犯行までの経緯がつぶさに明かされた。

安全なはずの「小学校」 クラブ活動中に...

送検される小野寺章仁被告(2023年7月8日撮影)
送検される小野寺章仁被告(2023年7月8日撮影)
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 建造物侵入と傷害の罪に問われている、宮城県栗原市の無職・小野寺章仁被告(35)。起訴状などによると、小野寺被告は2023年7月6日午後3時ごろ、自宅近くにある若柳小学校の敷地に軽トラックで侵入し、時速7.5キロほどで4年生の児童3人をはね、全治2週間から3週間のけがをさせたとされている。

 栗原市教育委員会などによると、その当時学校ではクラブ活動を行っていて、教員と複数の児童が屋外で活動に使う物品を作っていた。その最中、突然児童たちは被害にあったという。軽トラックの速度が出ていなかったこともあり、重傷者は一人も出なかった。

現場となった若柳小学校
現場となった若柳小学校

「人をひく目的で侵入か覚えていない」

 1月15日に開かれた初公判に、上下ともにスウェットを着て出廷した小野寺被告。裁判官から起訴状について問われると、大筋で起訴内容を認めた一方「その当時、病状により錯乱状態で、人をひく目的で侵入したのか覚えていない」と、傍聴席にも聞こえるかどうかという、か細い声で話した。

 弁護側も事件当時、小野寺被告は「心神喪失」か「耗弱」状態で、無罪か刑の減軽を主張した。

「誰かに狙われている」 複数回にわたり警察に相談

 検察側の冒頭陳述では犯行にいたる経緯がつぶさに明らかになった。

高校時代の小野寺被告
高校時代の小野寺被告

 高校時代から同じものをいくつも買い込んだり、ごみをためたりするなどの行動を取るようになった小野寺被告。2022年ごろには、盗聴されているとして、自宅のブレーカーを落としたり携帯電話機の電源を切ったりするようになったという。

 事件前日の7月5日から当日にかけては「誰かに狙われている。電波を照射される」などと複数回にわたって、電話や警察署を訪れ警察に相談。事件発生の1時間ほど前の午後2時ごろにも警察署を訪れた。そののち父の迎えで、軽トラックに乗せられ帰ることになるが、父は小野寺被告の対応に疲弊し車を降り、被告自身に車を運転させることに。

小野寺被告が乗っていた軽トラック
小野寺被告が乗っていた軽トラック

 その後、小野寺被告は何かを照射されていると感じながら、照射を逃れるために軽トラックを運転し続けていたが、若柳小学校周辺で「もう殺される、誰かをひいて警察に逮捕され、警察署に留置されれば、一時的に命の危険から逃れられるのではないか」と考え、犯行に及んだという。

 また、捜査段階の供述調書で小野寺被告は「盗撮盗聴などの嫌がらせをされていて、犯行直前の日からは何かを照射されて具合が悪い、身の危険を感じた。警察に捕まれば命の危険から逃れられるかもしれないと人をはねることにした」と身勝手な動機を話していた。

 検察側によると、小野寺被告は犯行時、精神疾患の影響下にあったという。この日は1時間の裁判で、小野寺被告はうつむいて、動かずにじっと話を聞いていた。

進む安全対策の”見直し”

独自に作成された不審者対応マニュアル
独自に作成された不審者対応マニュアル

 この事件を受け、県内の多くの小学校では、不審者対応など安全対策の見直しが進められた。若柳小学校では、車の侵入を防ぐバリケードやポールが新たに設置されたほか、元々あった「危機管理マニュアル」の他に、定期的な訓練の実施などの不審者対策のマニュアルが独自に作成された。

新たに設置されたポール
新たに設置されたポール

 安全なはずの小学校を震撼させた今回の事件。小野寺被告の父によると、被害者3人にそれぞれ50万円の示談金を支払うことと、被害者に二度と接触しないことで和解しているという。

 次回は2月2日に被告人質問が行われ、結審する予定だ。

(仙台放送)

仙台放送
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