台湾総統選挙は盛り上がりを見せ、各陣営の集会では候補者に熱い声援が送られている。

「侯友宜!当選!」
「頼清徳!当選!」

その裏で働きかけを強めているのが中国だ。習近平国家出席は、新年を迎える前のテレビ演説で「台湾は中国の一部」という考えを改めて示した。

中国 習近平国家主席(12月31日):
祖国統一は歴史の必然であり、台湾海峡両岸の同胞は手を携えて心を一つに、民族復興の偉大な栄光を共有しなければならない。

■台湾の高級魚「ハタ」を中国が突然輸入禁止

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その影響は、中華料理の中でも高級魚として知られる「ハタ」にも。台北市から南に約400キロ離れた高雄市では、高級魚・ハタの養殖が盛んに行われている。このハタを巡り、“中国による嫌がらせ”ともとれる問題が起きた。

ハタ養殖業者:
これを知ったとき、みんな恐怖を覚えました。私たち養殖業者は、とても心配になりました。

2022年8月、中国は突然、台湾からのハタの輸入を禁止に。輸入したハタから「禁止薬物が見つかった」という。

ハタ養殖業者:
中国は、禁止薬物が入っているとだけ言い、薬の濃度などはっきりとした詳細は、台湾にも提供されませんでした。輸入を禁止、全面禁止にしたのです。

このような問題は日本でも起きている。2023年、福島第一原発の処理水が放出された後、中国は日本産水産物の輸入を全面的に停止した。中国は日本の水産物の最大の輸出先で、中でもホタテの9割は中国向けであったため大打撃を受けることに。このような規制をすることで、処理水の放出に対抗したのだ。

台湾で輸出できなくなったハタの養殖業者たち。現在の民進党政権・蔡英文総統が中国に厳しい姿勢を取っていることが原因ではないかと話す。

ハタ養殖業者:
多くの養殖業者は、『これは政治的なコントロールなのでは』と言っています。今の台湾の与党に不満がある、もしくは台湾が中国に対立的な立場を示しているからでしょうか。台湾と中国の関係が良ければ、私たちの生計も維持されるのです。

中国と仲良くしなければ経済的なダメージを受けるというメッセージなのだろうか。

■中国と融和を主張する国民党vs国家防衛を重視する民進党

そして2023年の暮れ、約400あるハタ業者のうち7つのみについて、中国が輸入再開を発表した。総統選挙が目前に迫ったタイミングでの方針転換。背景には、中国との融和を主張する野党第一党の国民党の働きかけがあったとみられる。

国民党国際事務部 黄介正主任:
農産物や水産物が中国に制限をかけられた時、民進党政権は解決法がほとんどなく、真面目に取り組んでいなかったのです。しかし規制が始まった2022年8月から、国民党は中国と交流し、輸出を最も重要な課題としてきました。

 国民党の幹部は、中国との交流を重視することで、市民の生活を豊かにしたいと訴える。
国民党国際事務部 黄介正主任:
選挙に勝ったら、台湾の人々に関係するような交流の回復に集中したいです。航空や宗教、観光、教育などの交流を、中国としたいと思っています。

これに対して、与党・民進党の幹部は…
民進党国際事務部 趙怡翔主任:
国民党は中国と交流するだけで平和を維持できると言っていますが、これは相当、安易な考え方です。中国共産党による軍事的なリスクがあり、中国の台湾や周辺地域へのたくらみは明らかです。民進党は“国家”を守ることが最も重要であると分かっています。自主防衛を強化しなければいけません。

蔡英文政権の8年間で防衛費を倍にするなど、軍事力の強化に力を入れてきた民進党。今後もアメリカとの関係を重視しながら、台湾の独立性を守っていくと主張する。

■中国への格安ツアーで親中派への投票促す介入も

中国の介入が疑われる事案は他にも。台湾で地域サービスを担う「里長」。日本でいう町内会長のような人たちが中国への格安ツアーに参加していたことが判明。招待していたのは、中国政府の関連機関だった。この問題をとりあげた市議は、中国による選挙への介入だとして訴えている。

高雄市 張博平市議:
このような交流は非常に多いのです。彼らは中国に招待され、1月の総統選挙で比較的親中派の政党や候補者に投票することを促されるのです。

北京市への5泊6日のツアーの旅行費はわずか1万3000円。台湾の最高検も、この時期に里長たちが中国側の接待を受けたことは、総統選挙に密接に関係していると注意を呼び掛けた。台湾総統選に迫る中国の影。1月13日の選挙結果にどんな影響を及ぼすのだろうか?

■総統選直前の台湾から最新情報

関西テレビ 吉原功兼キャスター:
中国がさまざまな形で総統選をコントロールしようとしているのではないかという情報があります。ただ現地で市民の方に『中国の影を感じるか』と聞くと、取材に応えてくれた方は『あまり感じない』と言っていました。

関西テレビ 神崎報道デスク:
ですが、中国側による情報操作が疑われる事例があります。中国に厳しい姿勢を取っている民進党の副総統候補がアメリカの国籍を持っていて、その副総統はアメリカの国益を優先してしまうんじゃないかというような報道が出ました。実はこの副総統候補は20年ぐらい前にアメリカ国籍を放棄していたのですが、中国側が意図的にうその情報を流した疑いがあると現地報道が出ています。こういう影の情報戦が繰り返されているのではないかと現地報道で言われています。

関西テレビ 吉原功兼キャスター:
台湾市民の皆さんが、そういった情報をどのように受け止めるのかというところも、ポイントになってくると思います。
  地元メディアによると、最新の世論調査で、民進党の頼候補が一歩リードしているという情報があります。もちろん国民党が逆転する可能性もありますし、現地取材をすると若い世代からは『民衆党を支持したい』という声も増えてきているんです。三つどもえの様相もあるのではという見方も示されています。
  また台湾の国会議員にあたる立法委員も選挙が行われますが、今のところ総統選で有利とされる民進党が、議会で過半数を取れないという見方があり、ねじれてしまう可能性も考えられています。ですので民進党の頼候補はこの後の演説会で、議会についても民進党への支持を呼び掛けると思われます。
  この後、本日12日の日本時間の午後8時ごろに民進党の最後のイベントが予定されています。そして明日13日に投開票が行われ、結果が分かるのは早くても午後8時ごろになるとみられています。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年1月12日放送)

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