能登半島地震から12日目。 安否不明者が多くいる石川県輪島市では、12日も一斉捜索が行われている。

また大学入学共通テストを13日に控え、被災地では、勉強も被災者の支援も懸命に行う受験生の姿があった。

■警察や自衛隊、消防による大規模捜索は4日目

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記者リポート:輪島市の輪島朝市です発生から12日目を迎えましたが、今なお焦げ臭いにおいが、辺り一面を漂っています。

地震直後の火災で約200棟が焼失した輪島市の朝市通りでは、12日も警察や自衛隊、消防による大規模な捜索が行われた。断続的に雨が降る中、捜索隊は、手作業で焼けた家の柱などを取り除きながら、安否がわからない人の手がかりを探していた。

輪島市朝市組合 長冨水長毅組合長:見るたびに、心が痛くなるような状況なものですから、この後一体どうなっていくのか、生活の糧もこういった形で(店が)できるような状況じゃありませんので不安はある。

 石川県でこれまでに死亡した人は215人、安否がわからない人は28人となっている。

■珠洲市で仮設住宅の工事が始まる 輪島市では土砂ダムが10カ所確認されている

そんな中、12日から珠洲市などで仮設住宅の工事が始まった。
仮設住宅40戸が立てられる予定の小学校では、水はけが悪いところに土を盛って、グラウンドを整える準備が行われた。

1カ月後をめどに完成の見通しで、被災者は無料で原則2年入居することができる。

しかし、仮設住宅が建てられる4カ所のうち3カ所は津波の浸水想定区域だ。
 石川県によるとスペースが他にないため、やむを得ない選択だったいうことだ。

珠洲市 泉谷満寿裕市長:今回の津波はこちらのグランドは影響なかったと聞いている。100パーセント大丈夫ってことは難しいかもしれませんが、応急仮設住宅としてまとまった面積の場所は、なかなかそうたくさんないのでご理解いただきたい。

また、輪島市では、地震が引き起こした土砂崩れによって水がせき止められてできた「土砂ダム」が少なくとも10カ所確認されていて、大雨により土砂が流れ出す恐れがある。

被災地では、今夜遅くにかけ警報級の大雨が降る恐れがあり警戒が必要だ。

■大学入学共通テストを控えながら避難所で手伝う受験生

12日朝、小雨がちらつく中、石川県珠洲市内の施設に続々と集まる受験生たち。

13日、金沢市内で行われる大学入学共通テストを受けるため、バスで送り出された。

最後の追い込み期間に被災した受験生は、厳しい環境を強いられていた。

人口約500人の能登町姫地区では地震が起きた後、電気や水といったライフラインが止まってしまったため地域住民たちの手により、避難所が立ち上げられた。

避難所で率先して手伝っていたのは、大学受験を控える高校3年の堂前和海(どうまえなごみ)さんだ。

堂前和海さん(18):共通テスト近いんですけど、諦めるわけじゃないんですが、最悪、受験は来年もできるんで、今できることをしっかりやろうかなと。

関西にある国立大学を目指す和海さんは、家が倒壊した訳ではないが、少しでも助けになれるよう避難所で寝泊まりをして、手伝ってきた。

持ってきた勉強道具は参考書1冊のみで、勉強できるのは寝る前のわずかな時間だけだ。

堂前和海さん:(Q.忙しくて勉強の時間がとれない?)はい。自分だけじゃない、みんな一緒なんでそこは頑張ろうかなって。

■「自分で選んでやっていたこと、言い訳にはしたくない」

和海さんが通っていた高校も被災したため、始業式も延期されたままだ。

自宅に戻った後も、避難所に通い勉強の時間を割いては手伝いを続けた。

弟・歩海さん(15):(Q.お兄ちゃんは?)今、家で勉強しています。

被災して9日目には避難所に物資などが届けられるようになり、和海さんは自宅で最後の追い込みに。その間は、弟の歩海さんが兄の分までサポートした。

弟・歩海さん:今まで頑張ってきたので、その力は出し切ってくれればいいなって。

地震の中、迎える受験。

父親の吉宏さんも息子の奮闘を見守る。

父・吉宏さん:コロナもあって、思うような学校生活もできないまま、やっと卒業かなっていうときに、こういうことがあって。社会人になってからちょっとやそっとのことでは、負けない根性ができたんじゃないかなってプラスに考えています。

堂前和海さん:こういう活動はしろって言われたわけでもないし、自分で選んでやっていたことなので、これは言い訳にしたくないし、目の前にある問題を必死に解いて頑張りたい。

12日朝、自宅を出発する時には避難所の人も見送りにきてくれた。

避難所の人:風邪ひいたらあかんで、頑張れ!いってらっしゃーい。

堂前和海さん:今までやってきたことを信じて、1点でも多くとれるようにがんばります。

地域の人を思いやりながら厳しい環境で耐えた若者が、また一歩前へと踏み出す。

大学入学共通テストについては、石川県が受験会場の受験生は、希望者全員が金沢で追試験を受けられる措置が決まった。高校生たちの努力が少しでも、報われることを祈っている。

■輪島市内には土砂ダムが10カ所程度あり雨や雪によって決壊の恐れも

輪島市内に土砂ダムが10カ所程度できているということで、解析した京都大防災研究所の松四教授によると、「小規模だが数が多い、まだ把握できてない危険な箇所もある」ということだ。小規模ということだが、土砂ダムが決壊すると大きな被害につながる。

石川県の天気は、12日が雨、13日が雪の予報ということで、雨と雪で増水し、土砂ダムを越えて土石流となる恐れがある。松四教授は「雨や雪が降った後も十分な警戒が必要、雪解けなどの影響により、決壊する恐れもある」と指摘している。

土砂ダムによって取り残される方もいるし、決壊の危険性も高まっているという状況だ。

京都大学大学院 藤井聡教授:過去に何百年も前からですが、当時はそういう知識もないですから、雨が降った後に土砂ダムが決壊して、鉄砲水という現象が起こって、非常に甚大な被害が起こるということが、しばしば起こっています。ですから、今回もそうならないとは限らないわけで、警戒が必要です。

土砂ダムを今後、解消していくというのも簡単な作業ではない。

関西テレビ 神崎報道デスク:紀伊半島豪雨の時に奈良の十津川などに土砂ダムができましたが、まず水がたまっているので、水を抜かないといけないのですけども、すごい山奥にあるので、重機を入れるのも大変苦労があります。まずは水を抜いて、さらにダムになっている所を元に戻さないといけないのですが、すごい土砂の量なので、それを解消するというのはかなり時間と費用がかかるということです。

(関西テレビ「newsランナー」2024年1月12日放送)

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