甚大な被害をもたらしている能登半島地震。これまでに石川県で94人が死亡、222人が安否不明になっていて、5日も懸命の捜索活動が続く。
今回の地震では発生からわずか1分で津波が到達した場所もあった。命を守るために、どうやって逃げたらいいのか。地震発生のメカニズムなどについて研究している、京都大学防災研究所の西村卓也教授に聞いた。

■能登半島地震 発生から1分で津波到達した場所もあった

地震発生から、津波到達までどのくらいの時間がかかったのかまとめると、
・石川県珠洲市1分、七尾市2分
・富山県富山市5分
・新潟県上越市12分、新潟市30分
これほど早く津波が到達したのはなぜなのか?
京都大学防災研究所 西村卓也教授:
津波というのは、地震の震源域から周りに向かって広がっていきます。今回、地震の震源域が陸のすぐそばだったので、これだけ早く津波が到達したと考えられます。日本海側には津波の原因となるような断層が、陸のそばにいっぱいあります。陸のそばで津波が生成して、すぐに海岸を襲うという地域的な特性もあります。
■沿岸部で「強い揺れ」を感じたら、少しでも早く「高い場所」へ避難を

今回の地震は元日に発生し、帰省や旅行という日常とはちょっと違ったタイミングで起こった。沿岸部に住んでいる人はもちろん、住んでいない人でも津波に遭うことがあるといえる。地震発生後すぐに来る津波から逃げる際の最善の行動とは?
沿岸部での「強い揺れ」を感じた場合、津波情報を待たず、少しでも早く「高い場所」へ避難することが大事だという。
京都大学防災研究所 西村卓也教授:
津波が来るような大きな規模の地震だと、まず強い揺れと、あともう一つ揺れが長く続くという特徴があります。このような地震を感じたら、まず一刻を争うように、高いところに逃げることが重要だと思います。
例えば1分で到達となると、避難することでかえって危険になることもありそうだが、自宅の高い所に避難するのではだめなのか?
京都大学防災研究所 西村卓也教授:
木造の家屋ですと、だいたい津波の高さが1~2メートルぐらいになると、家ごと流されてしまいます。コンクリート製あるいはマンションのような建物であれば、自宅の高いところに避難するとかビルの上の階に上がるのもいいのですけれど、一般の木造家屋の場合は、自宅より、周囲の安全な高いビルあるいは高台に避難することが重要だと思います。
「強い揺れ」の目安は?
京都大学防災研究所 西村卓也教授:
震度5強とか6相当の揺れ、普段感じないような大きな強い揺れですね。あと長いというのが特徴で、30秒とか1分ぐらい、長い揺れが続くと地震の規模が大きいということになります。『私たちが普段感じないような揺れを感じるのであれば逃げる』ということになります。
■南海トラフ地震発生時 早い場所は数分で津波到達が予想される

今回は日本海側の地震で津波が発生したが、南海トラフ地震など太平洋側でも起こる恐れはある。内閣府のデータで、南海トラフ地震発生時、1メートルの津波到達時間の最短時間の予想が示されている。例えば和歌山県串本町では2分。和歌山市46分、神戸の長田区86分、大阪120分などとなっている。
京都大学防災研究所 西村卓也教授:
南海トラフ地震の場合、津波の源となる震源ですが、地図の赤い線で示されている所から和歌山県の串本町あたりまで震源域になります。そこからの距離が津波の到達時間と関係しますので、串本町だとすぐ近くから津波がやってくるので早い。和歌山市とか大阪湾ですとそれなりに余裕はあるんですが、書いてある時間はあくまで1メートルの高さに達する時間です。それより前、書いてある時間の半分ぐらいの時間で第一波はやって来ます。また大阪湾だと、南海トラフ地震の場合は最初恐らく引き波で来ることが多く、潮が引いたりすることが前に起こりますので、そういうものも目安にしながら避難するのがいいです。大阪の場合は1~2時間は余裕がありますので、ある程度情報を受けてから、落ち着いて逃げることが大事だと思います。
■「津波避難ビル」「津波避難タワー」事前に避難場所確認を

大きな津波から逃げるために避難する施設について。
「津波避難ビル」
津波避難ビルはご覧のマークがある建物。このマークを覚えて。津波避難ビルは、例えば大阪市北区だとグランフロント大阪などが指定されている。住んでいる地域やよく出かける場所の市町村のホームページで確認できるので、ぜひ一度確認を。
「津波避難タワー」
高台などへの避難に時間がかかる地域で、緊急時に一時避難として活用する施設。和歌山県や徳島県などの沿岸部に設置されている。こちらもぜひ一度確認を。
津波避難ビルに関して、視聴者から質問。
Q.避難ビルなどは警報が出たら深夜でも開けてもらえるの?
関西テレビ 神崎報道デスク:
例えば大阪市ですと、ホームページで区ごとに避難ビルが確認できるようになっています。施設名や住所の横に利用可能な時間も載っていて、『24時間』とか『10~21時の営業時間内』など書かれています。また沿岸部の自治体で、避難ビルが載っていても時間が書かれていない場合があります。皆さんのお住まいの近くの避難する可能性があるビルを確かめて、一度立ち寄ってもらい、利用できる時間を確認しておいてもらいたいと思います。
■視聴者から質問

Q.南海トラフ地震で津波が来たら、マンションの何階の高さまで来るのか?
京都大学防災研究所 西村卓也教授:
大阪湾の周辺だと高さ4メートルぐらいの津波が来ると考えられますので、マンションの2~3階ぐらいの高さまで来ます。あの和歌山県とかより南海トラフに近いところは、10メートル、マンションの4階ぐらいまで来ると考えられています。住んでいる地域の高さにもよりますので、自分の地域でどのぐらいの津波が来ることが予想されているのか、市町村のハザードマップなどで一度チェックすることをおすすめします。
Q.淀川やそれ以外の大阪の川でも津波は来るか?
京都大学防災研究所 西村卓也教授:
淀川はもちろん、中小の河川、あるいは水路のようなところでも津波がさかのぼってくることが知られていますので、普段ほとんど水がないような所でも、津波が来る可能性があると気を付けていただきたいです。
Q.大阪市はどれほど浸水するか?どれぐらいで水は引くのか?
京都大学防災研究所 西村卓也教授:
いろんなケースが想定されますが、もともと大阪の場合は地面が低く、海よりも低い、いわゆる『0メートル地帯』と呼ばれる場所があり、そういう場所では津波が堤防を乗り越えて入ってきてしまうと、何日たってもなかなか津波が引かないということもあります。しばらく周りが水浸しになるということも、最悪の場合はあるとお考えください。
南海トラフ地震が起こると甚大な津波被害が想定されている。自分の命そして大切な人の命を守るために、備えをしっかりとしていただきたい。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年1月5日放送)