2024年の東京証券取引所の初取引は、日経平均株価が一時700円以上下落し、波乱の始まりとなった。
主な要因は、アメリカの10年債金利上昇と主要テクノロジー企業の株価調整だが、災害など発生した際には冷静な経済判断のために、客観的なデータや信頼できる情報が何よりも大切だと専門家は強調する。

日経平均株価が一時700円以上下落

東京証券取引所では2024年最初の取引が行われ、日経平均株価は一時700円以上下落し、波乱含みのスタートとなった。

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東京証券取引所では、2024年最初の取引となる大発会を迎えたが、鐘を打ち鳴らす「打鐘」は行われず、能登半島地震の被害者などへの黙とうが行われた。

市場では、地震による企業活動への影響を見極めたいとする動きがあった中で、前日のアメリカ市場での株価下落を受け、取引開始後の平均株価は一時700円以上値下がりした。

その後は日本経済が堅調だとの見方が広がって下げ幅は縮小し、平均株価は3万3000円台に戻して取引を終えた。

2024年の日本経済の最大の焦点は、日銀がこれまで続けてきた金融緩和から方向転換して、マイナス金利政策を解除し、超低金利の時代から金利のある世界へと移っていくかだ。

日銀は、物価高に負けない持続的な賃金上昇が実現しているかを見極めて判断したい考えで、2024年の春闘の結果が大きく影響を与えそうだ。

株安影響は米国の金利と株価上昇

「Live News α」では、市場の分析や企業経営にくわしい経済アナリストの馬渕磨理子(まぶちまりこ)さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
―― 2024年の株式市場は下落からのスタートとなりましたが、馬渕さんは、どう受け止めていますか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
年明けから痛ましい報道が続いています。今も不明者の懸命な捜索などが続いていますが、無事を祈るばかりです。

ただ、大きな災害や事故などが起きると、必要以上に悲観論がまん延してしまう傾向があります。株価の軟調の原因を、災害などに求めるのは、少し勇み足かもしれません。

堤 礼実 キャスター:
―― 具体的には、1月4日の株安は何が影響したのでしょうか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
アメリカの10年債の金利が、再び4%台まで上昇したことが一番の要因です。加えて、アメリカの株式市場の影響を色濃く受けていることに注目すべきです。

具体的には、アメリカの主要テクノロジー企業7社の株価上昇が行き過ぎたこともあり、いったん年明けに下落した流れがあります。

堤 礼実 キャスター:
―― もう1つ気になる為替に関してはいかがですか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
まず国内に目を向けると、災害が起きると、円高に振れる傾向があります。例えば、東日本大震災の時は、1ドル=76円まで円高が進みました。

これは、保険会社が被災者への保険金支払のために日本円が必要となり、円を買う動きが予想されたためです。しかし、今回は141円から143円への円安に推移しています。

これを、国力が弱まったと理解するのも勇み足で、先ほどお伝えした、アメリカの金利の再浮上によって、ドル高・円安が進んだにすぎません。今回の事情を受けて、マイナス金利解除の時期は後ズレしそうだ、であるならば、円安継続との判断です。

信頼できるデータで冷静な判断を

堤 礼実 キャスター:
―― これからの経済に目を向ける際に、どんなことがポイントになるのでしょうか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
悪い方向に因果関係を求めると、冷静さを欠き、正しく物事を判断できなくなります。

胸が痛む羽田空港の事故では、JAL機から全員が脱出できたことに対して、世界から奇跡的だとの声が上がっています。非常時の訓練を徹底していた企業姿勢が評価され、JALの株価は1月4日、プラス圏で推移しています。

日本企業に求められるのは、「BCP」といわれる事業継続計画などを事前に作成しておくことが有効です。

また、災害などが起きると集団心理が働き、根拠がない情報などに振り回されてしまうことが増えます。こうした時こそ、客観的なデータや信頼できる情報が何よりも大切です。

堤 礼実 キャスター:
年が明けて心が痛む出来事が続いていますが、どうか2024年が、日本全体にとって良い方向に進んでいくことを期待します。
(「Live News α」1月4日放送分より)

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