ノルマ未達議員は罰金も
自民党は5月28日、去年1年間に所属国会議員が獲得した党員数のランキングの上位と下位の実名を発表した。
そもそも党員とは、党費を払ってその政党に所属し、党の活動や党首選挙をはじめとする意思決定に参加できる資格だ。
党員の数は、政党の勢力に直結し、国会議員にとっては党員を集めた数が党内での地位にも影響する。
自民党は1991年には547万人の党員を抱えるなど、巨大な組織を誇ってきた。しかし、2度の政権転落などを経て、党員数は一時70万人台にまで激減した。
政権復帰を果たした2012年以降、党員獲得に励んだ結果、5年連続で増加。去年の党員数は106万人にまで回復し、現在120万人の党員獲得を目標に掲げ各議員に檄を飛ばしている。
その一環として自民党本部は、議員への罰金制まで導入している。
所属議員1人あたり党員1000人獲得のノルマを課して、不足1人につき2000円のペナルティを課しているのだ。
これには、若手議員などから「自民党の一般党員は年額4000円の党費を納める必要がある。
4000円の党費を払ってもらうというのは本当に大変なことなんです」とため息まじりの嘆きも聞こえる。
それでも執行部は、党員獲得強化のムチを緩めず、今回、獲得党員数上位に加え、下位の国会議員の実名発表に踏み切ったのだ。

党員獲得数トップ10は・・・
自民党の山口組織運動本部長が28日に発表した、去年1年間の党員獲得数ランキングのトップ10は以下だ。
《党員獲得トップ10議員》
1位:武田良太・衆院議員(福岡11区)
2位:堀内詔子・衆院議員(山梨2区)
3位:二階俊博・幹事長(和歌山3区)
4位:野田毅・元自治相(熊本2区)
5位:小泉龍司・衆院議員(埼玉11区)
6位:寺田稔・衆院議員(広島5区)
7位:茂木敏充・経済再生相(栃木5区)
8位:宮腰光寛・首相補佐官(富山2区)
9位:森山裕・国対委員長(鹿児島4区)
10位:根本幸典・衆院議員(愛知15区)
1位は1万1244人の党員を獲得した武田良太議員だった。
武田氏は福岡県内の補欠選挙で、実力者である麻生財務相側とも徹底的に戦うなどしてきた武闘派。
自民党幹部の秘書も「1万人以上とか未知の領域ですね」と語るなど、その党員獲得術に感嘆の声があがった。
トップ10の名前を見てみると、激しい選挙戦を勝ち抜いてきた議員や、地方で安定した選挙基盤を持つ議員が多い。

ワースト1は?あの有名議員も・・・
そして下位10人の実名が以下だ。順位を公表すると、最下位の議員が特定されてしまうため、「武士の情け」として順位を明示せず、10人の名前だけの発表となった。
《獲得議員数ワースト10》※五十音順
○石井浩郎・参院議員(秋田選挙区)
○井上貴博・衆院議員(福岡1区)
○小田原潔・衆院議員(比例東京)
○越智隆雄・衆院議員(比例東京)
○津島淳・衆院議員 (青森1区)
○中泉松司・参院議員(秋田選挙区)
○原田義昭・衆院議員(福岡5区)
○村井英樹・衆院議員(埼玉1区)
○山崎正昭・前参院議長(福井選挙区)
○山田美樹・衆院議員(比例東京)

元プロ野球選手で高い知名度を誇る石井浩郎議員や議長経験者まで名を連ねているのが目を引く。
この中に最下位の議員がいるわけだが、FNNの取材によると、どうやら参議院議員の誰かが獲得党員100人台にとどまり最下位だったようだ。1位の武田氏に最大で100倍程度の差をつけられていることになる。
党幹部の1人は「来年は参議院選挙もあるのに、舐めているとしか言いようがない」と激怒していた。
ちなみにノルマの1000人に満たなかったのは党所属国会議員の2割にのぼったということだ。
結果から見えてきたものは・・・
上位と下位10人ずつしか発表されていない状況ではあるが、そこからは2つの傾向が読み取れる。
1つは衆議院では、都道府県庁所在地が含まれる「1区」の議員など、都市部の議員が党員獲得に苦戦していることだ。
東京1区で出馬し比例で復活当選した山田美樹議員など、東京の議員3人がワースト10に名を連ねたこともこれを裏付けている。
2つ目は、下位10人のうち、実に5人が”魔の3回生”と呼ばれ、不祥事や失言が相次いだ2012年初当選組だということだ。
選挙基盤が弱い国会議員は党員集めでも苦戦するという面があるのかもしれない。
一方で自民党内からは、今回の実名公表について、疑問を呈する意見も聞こえる。
ある自民党秘書は「都市部ではタワーマンションや高層マンションだらけで、どこに誰が住んでいるかもわからない。そんなところと、町や村の人の顔が全員わかる地域では党員獲得の難易度が全然違う。一律にすることが良いのかは疑問だ」と語っていた。
また、党員獲得をめぐっては、実績を上げるために、関係団体や議員が党費を肩代わりして党員を集めていた事例がたびたび生じるなど、過剰な動きが問題になってきた過去もある。
今回、結果公表に踏み切った山口氏は「実名を公表することで一層頑張ろうという気になる」と意義を強調した。実名公表による党内の引き締めが、来年の統一地方選挙や参議院選挙に向けてプラスと出るか、マイナスと出るか注目だ。
(政治部・与党キャップ 中西孝介)