新年を迎え、いよいよ本格化する受験シーズン。大学入学共通テストのほか、高校や中学の受験を控えた子どもがいる家庭も少なくないだろう。

努力をしてきた受験生が、体調を崩さず本番で力を発揮するためには、何を食べるといいのだろうか。

入試に向けたレシピ本の著書もあり、「食」に関して幅広く活動する「しょくスポーツ」代表取締役のこばたてるみさん(管理栄養士)に話をきいた。

緊張したら失われるビタミンC 「ACE」を積極的に摂取!

受験の有無にかかわらず、健康な毎日を送るためにはバランスの良い食事が不可欠だ。

脳のエネルギー源となる糖質(ごはん・パン・麺類・芋類など)や、不足すると免疫力低下につながりかねないタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)はもちろんだが、この時期に意識してとりたいのはビタミン、特に抗酸化作用が強い「ビタミンACE(エース)」だ。

【ビタミンAが多く含まれる】
ニンジン・小松菜・ホウレンソウなどの緑黄色野菜(β-カロテン)と、ウナギ、レバーなど(レチノール)

【ビタミンCが多く含まれる】
かんきつ類、芋類、ブロッコリー、ホウレンソウや小松菜などの葉物野菜

【ビタミンEが多く含まれる】
ナッツ類、大豆類、緑黄色野菜、魚など

ストレスで失われがちなビタミンCなど、「ビタミンACE」を意識して摂取するといい(画像はイメージです)
ストレスで失われがちなビタミンCなど、「ビタミンACE」を意識して摂取するといい(画像はイメージです)
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受験が近づき、緊張などでストレスがかかった場合は、体内でビタミンCの消耗が激しくなるため、風邪をひきやすくなる。

そこで抗ストレス作用があり、過酸化脂質の生成を抑える働きを持つビタミンCを意識的にとる。ビタミンCは水溶性で流れやすいため、毎食とるつもりで、こまめに摂取するといいという。

また、ビタミンAには喉や鼻の粘膜を保護する役割があり、中でもニンジンや小松菜などの緑黄色野菜に含まれる「β-カロテン」には、活性酸素の発生抑制や除去の働きがあるので、しっかりとるようにしたい。ビタミンEには強い抗酸化作用が期待できる。

さらに以下のような、お腹の調子を整えるための食材も意識してとるといい。

【善玉菌が豊富な発酵食品】
ヨーグルト、納豆、キムチ、味噌など

【善玉菌のエサとなる食材】
ニンジン、ゴボウ、サツマイモ、海藻、キノコ類など

発酵食品や、食物繊維が豊富な食材を意識してお腹の調子を整えよう
発酵食品や、食物繊維が豊富な食材を意識してお腹の調子を整えよう

管理栄養士・こばたてるみ さん(以下 こばたさん):
例えば、受験勉強を頑張って夜遅くまでやり、翌朝、寝坊しちゃったからコーヒーだけなんていうことになると、糖質もタンパク質もビタミン類もほとんどとれていません。それでは風邪のリスクも高まりますし、集中力も維持し難いので、欠食や偏食することなく食事を召し上がっていただきたいと思います。

糖分を手軽に摂取できる菓子類も、もちろん食べてOKだがほどほどに。例えば、油脂が多く含まれるチョコレートなどは、1日に数かけ程度にとどめると安心だ。

前夜のオススメ献立や注意点は?カレーは食べ方に気をつけて

以上のことを踏まえて、こばたさんに本番前夜のオススメ献立を教えてもらった。

(イラスト:さいとうひさし)
(イラスト:さいとうひさし)

【前夜の献立例】
・ご飯(糖質)
・カブ・カブの葉と油揚げの味噌汁(タンパク質、カルシウム、ビタミンA・C)
・白身魚の西京焼き/大根おろし添え(タンパク質)
・肉じゃが(糖質、タンパク質、ビタミンB1C)
・ブロッコリーのおかか和え(ビタミンA・C・E)
・バナナ・ブルーベリーとはちみつのフルーツヨーグルト(糖質、アントシアニン)

整腸作用もあり、普段はオススメ食材のゴボウは、食物繊維の量が多くガスが発生しやすいため、試験前日は食べ過ぎに注意だ。

また、揚げ物などの脂っこいもの、お刺身などの生ものも、前日は避けた方が無難。

こばたさん:
緊張してストレスがかかると消化液の分泌が低下するので、普段の状態であれば全く問題ないものでも、ちょっとしたことでお腹の調子を崩したり、食あたりになってしまう可能性もあります。
寿司や揚げ物などは、試験を乗り切った後のご褒美として楽しむのが良いと思います。

験担ぎとしてよく言われるとんかつなどの揚げ物や、生ものは、前日は注意したい
験担ぎとしてよく言われるとんかつなどの揚げ物や、生ものは、前日は注意したい

また、肉については調理法のほか、部位でも油の含有量が大きく変わる。

ひき肉のほか、牛だとカルビ、サーロインステーキ、リブステーキ、そしてタンにも比較的多くの脂が含まれている。

豚だと、脂の多いバラ肉は焼かずにしゃぶしゃぶがオススメだ。一方、牛・豚ともにヒレ肉やモモ肉は脂質が少なめなので、焼く調理も良さそう。

意外なところでは、栄養バランスが期待されるカレーに注意したい。市販のルウには油脂が多いため、ご飯は少しでルウをたっぷりかけてしまうと、油脂が多くなってしまうので気をつけよう。
ゲン担ぎと称して、トンカツがのった「カツカレー」を食べるのは数日前のほうが安心だろう。

いよいよ迎えた試験当日 朝・昼のオススメ献立

いよいよ本番!力を発揮するためのオススメ献立はこちら。

デザートはオレンジかイチゴ、どちらか一方を摂取すればOK(イラスト:さいとうひさし)
デザートはオレンジかイチゴ、どちらか一方を摂取すればOK(イラスト:さいとうひさし)

【当日朝の献立例(試験の3時間前)】
・サケ もしくは おかか、梅干しのおにぎり(糖質、ビタミンB1)
・にゅうめん / ホウレンソウ、ネギ、おろしショウガ(糖質、ビタミンA・C)
・だし巻き玉子 (タンパク質、ビタミンB2)
・オレンジ または イチゴ(糖質、ビタミンC)  

ここで登場したビタミンB1B2の役割について、こばたさんは「たき火」を使って説明してくれた。

こばたさん:
頭や体を動かす時、主に糖質(=新聞紙)脂質(=まき)がエネルギー源となります。ただ、まきを燃やすためには、最初に新聞紙やがれきなどを燃やして火だねを作り、そこに風を送ることで、ようやくまきが点火します。
その火だねのもととなる新聞紙が、ご飯やパンなどの糖質です。そして点火するマッチの役目がビタミンB1、風を送って燃焼を続けるための「うちわ」の役目が主にビタミンB2です。まきを燃やし続けて長時間の受験を乗り切るため、ビタミンB1やB2もとっていただきたくて、この献立にしました。

ビタミンB1は豚肉やレバー、ライ麦パン、カツオ、サケ、サバ、ブリ、アジ、アスパラ、大豆や豆腐など、B2はサバ、ブリ、卵、乳製品、ウナギ、レバーなどに多く含まれる。

【当日のお弁当 オススメ献立】
・おにぎりやサンドイッチ(ライ麦パン、ジャム、ピーナッツバターとバナナ)など食べ易い形状のものがおススメ。
・温野菜(ブロッコリー、カリフラワー、ニンジン)
・果汁100%オレンジジュース または イチゴ

【当日・外食の場合】
親子丼定食(味噌汁・小鉢)、果汁100%オレンジジュース

それでもお腹が痛くなったら

食事に注意していたけれど、なんだかお腹の調子が悪い…。そんな時は、食べない方が良いのか、どうすればよいのか。

こばたさん:
下痢をして脱水気味の場合には、水分と塩分、脳のエネルギー源である糖質を含んだスポーツドリンクを少量ずつ頻回で。食事がとれるようであれば、消化のよい雑炊やうどんなどを少量ずつ食べるとよいでしょう。

また、お腹の調子にあまり自信がない人は、たまご雑炊や煮込みうどんなどもオススメだ。

張り切ってボリューム増はNG いつも通りを心がけて

本来は試験直前から食事に気をつけるのではなく、子どもが受験対策をするのと同様に、寒い季節の風邪予防、運動不足による便秘対策など、「伴走するつもり」でサポートできるのが理想だと話すこばたさん。

自身の子どもも受験をした経験から、次のようにアドバイスをくれた。

自身も子どもの受験を経験した、管理栄養士のこばたさん
自身も子どもの受験を経験した、管理栄養士のこばたさん

こばたさん:
親が張り切り過ぎて、いつも以上に手の込んだ料理を作ったり、品数やボリュームが多かったりすると、子どもがプレッシャーを感じる可能性もあるので、いつも通りで見守る感じのサポートがよいと思います。
また、親が緊張してしまうと、子どもにもその緊張が伝わりやすいので、笑顔で接してあげるとよいですね。



受験本番まで、あと少し。今まで頑張ってきた子どもの姿を知っているからこそ、力を出し切れるようにサポートしてあげたいと思うのは、親の共通の願いだろう。そんな時こそ親も「いつも通り」を心がけ、本人が「いつも通り」の実力が発揮できるよう、見守ってあげて欲しい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。