年が明ければ、公立高校の入試が始まるが、「生理による体調不良」も追試の対象になりそうだ。生理痛の痛みとはどんなものか、理解を深めていきたいと思う。そして入試と生理が重なりそうな時の対策についても考える。
産婦人科医で女性のヘルスケアなどを研究している、近畿大学病院の武田卓医師に聞いた。
「生理による体調不良」も追試の対象へという動きは、どう考えるのか?
近畿大学病院 武田卓医師:はっきり言ってすごく画期的だなと思います。特に高校入試の年代は月経関係の症状が非常に出る時期ですので。
試験と生理が重なることで、体調不良や、経血が漏れてしまわないかなどの不安を抱えながら試験を受けることになる。
生理痛とはどういうものなのか?

そもそもではあるが、生理痛とはどういうものなのだろうか。
生理痛とは、生理前から生理中にかけて、子宮が収縮するために起きる下腹部や腰の痛みのことで、中には頭痛や吐き気などをともなうこともある。この症状も個人差があるのだろうか?
近畿大学病院 武田卓医師:もちろん強弱の個人差もありますし、症状の感じ方も「キリキリした」痛みという感じ方をされる方もありますし、そこはもう千差万別です。
さらにPMS(月経前症候群)も、今回の追試の対象に含まれそうだ。
PMS(月経前症候群)は、月経の1~2週間前から始まる症状の総称で、抑うつやイライラ感、眠気だるさなど150以上のさまざまな症状があるということだ。生理の始まりには個人差があると思いうが、生理が始まってまもない中学生でも、PMSに悩んでいる子も多いのだろうか?
近畿大学病院 武田卓医師:そうですね。われわれのデータになるんですけれど、月経痛は初経からだいたい6カ月から12カ月ぐらい、PMSはそれよりはちょっと遅れて、初経から2年ぐらいで症状が出ます。今の初経がだいたい12歳ぐらいですから14~15歳ぐらいです。その頃になると、PMSの症状も結構みなさん感じているようです。
大人になりPMSの存在を知って、付き合い方が分かってくるという経験をした人もいるかもしれないが、学生の時は何か分からず、悩みを抱えている子も多いと思う。
生理痛を一言で表すと「内臓を思い切り雑巾絞りされる感覚」

箕面市の大阪ヒートクールという会社が生理痛を理解するために、開発した「生理痛VR体験装置」がある。弱・中・強と強さを調整できる。
吉原キャスターに体験してもらった。
強さ「弱」ではおなかが収縮している違和感を感じるそうだ。
強さ「強」では声を上げるほどの痛みや違和感を感じていました。
このような違和感や痛みの中、試験を受けるのは難しいかもしれない。
この装置での痛みの感じ方も「鈍い重い感じ」「ぎゅって握られるような痛み」と人それぞれの様子だった。
生理痛の痛みは、本当に人それぞれということで、LINEでみなさんにもアンケートをとった。
ーー生理痛の痛みを一言で表現すると?
・おなかの中をえぐられる痛み(和歌山県・30代)
・おなかに常にダンベルを乗せられているような感じ(大阪府・20代)
・内臓を思い切り雑巾絞りされる感覚(兵庫・20代)
・内側から剣山で刺されている感じ(奈良県・40代)
表現がこれほど違うことからも分かる通り、生理の症状や程度は人それぞれということだ。
今まで大阪、兵庫では追試対象外だった理由

これほど大変な生理痛だが、なぜ、これまで追試対象にできなかったのだろうか。
大阪府と兵庫県は今回の通知を受けて、追試対象とするということだが、なぜ、今までできなかったのか取材した。
大阪府・教育庁:感染症を対象とするなど国の方針に沿った対応をしてきた。基本的には、同じところで同じテストを受けることで、公平性が担保されるという前提でしてきた
兵庫県・教育委員会:追試の対象になっているのは、インフルエンザと新型コロナウイルスのみ。生理に伴う体調不良は、感染症でないし、個別の病気について全て対応するわけにいかなかった
試験は公平であることが非常に大事だと思う。しかしこのような制度を使って、自分が有利な方向に持っていこうと考える人も、いないわけではないと思う。そのような場合にどうやって客観性を担保して行くといいのだろうか?
近畿大学病院 武田卓医師:そこは本当に悩ましいです。あくまでも自覚症状に基づく疾患ということになりますから、やはりどこか医療機関、産婦人科になると思いますが、産婦人科を受診して、担当医の診断書というのは必要になるのではないかと思います。
インフルエンザなどで欠席した場合は、診断書によって、追試を受けることができるが、生理やPMSの場合、どんな対応になるのだろうか?
近畿大学病院 武田卓医師:そこは、これから府や県が決めていくと思います。実際の運用のところでは結構難しいことも出てくるだろうと思います。
どの程度の痛みで診断書を出されるのかなども含めて悩ましい所があるということだ。
関西テレビ 神崎報道デスク:今も追試はちゃんと用意されているもので、今後はインフルエンザやコロナ、事故などの条件の中に生理を含めることになると思います。とはいえ、自己申告だけでの運用は難しいと思うので、おそらく、コロナやインフルエンザと同じように診断書を提出し、客観的なモノが必要だと思います。各教育委員会がどう判断するかということだと思います。
兵庫県が個別の病気について全て対応するわけにもいかなかったとしているが、生理以外でも追試という対応を考える必要が出てくるかもしれない。
実際の現場ではどのように運用されていくのか

生徒の立場からすると、もしかしたら自分は追試を受けられるかもしれないという状況は、追試が受けられない可能性もあって、確実に追試が受けられるとしないと、体調が悪くても無理してしまう子も出てくることになると思う。
診断書が出たら、必ず安心して追試をやってくれるという約束をされる形になるのだろうか?現実的な部分として、現場としてはどのように運用しできればと考えているのか?
近畿大学病院 武田卓医師:まず一般にこのような制度があるというのは周知しないとだめですね。それに応じて、受験者や保護者が普段から激痛がひどいのであれば、婦人科を受診する。本当は先に治療ができればいいのですが、治療をしないで、入試と生理が重なる可能性があるのであれば、その段階で月経困難症という病名がありますので、診断書をもらう形になるかなと思います。
検査をして診断書をもらうということだろうか?
近畿大学病院 武田卓医師:検査というか、ホルモンを測って分かるというわけでもありません。あくまでも自覚症状になります。だから自己申告によるしかないですね。
生理との上手な付き合い方

今回の通知は早ければ、年内にも出されるということで、年明けの入試には間に合う可能性もあるが、入試と生理が重なりそうな場合どうすればいいのか対策を教えてもらった。
・鎮痛剤や筋肉のけいれんを抑える漢方などから始めるとよい。
すでに使っている方もおられると思うが、使う時のポイントはあるのだろうか?
近畿大学病院 武田卓医師:これもよくあるのですが、本当に痛くなってからお薬を飲む方が結構多いです。辛抱してからじゃないと駄目みたいなイメージがあって。本当は、この日が痛いというのが分かっているのであれば、あまり症状の強くない時期から、早めに飲んだ方が薬としてはよく効きます。使い方のコツとして、まずそれをやってもらうのが1番最初のポイントです。
それでも改善しない時は、ピルを使用するということだ。
近畿大学病院 武田卓医師:ピルは自分自身の排卵を抑える薬ですので、経血の量をかなり減らします。子宮が収縮することで痛みが起こりますので、出血の量が減ると痛みも減るというメカニズムです。出血の量が減ることは全然心配をする必要はなく、ピルをやめるとすぐに元に戻るので安心して使えます。月経のくる時期を、ピルをうまく使うことによって調整できますので、その場合は婦人科の方で相談していただくのが良いかと思います。
ピルは中学生が使っても大丈夫だろうか?
近畿大学病院 武田卓医師:ちょっと意見が分かれるところもあるんですけれども、一応、WHOの指針の中では、とにかく月経が来ていれば、使ってもいいということは言われております。
鎮痛剤でコントロールできなければ産婦人科へ

視聴者からLINE質問がきている。
ーーどのぐらいの痛みで産婦人科に行くべき?(10代・兵庫県)
近畿大学病院 武田卓医師:産婦人科はなかなか行きにくいと思いますけど、鎮痛薬の正しい使い方をしても、コントロールできないようであれば一度、婦人科の受診をしていただいた方がいいかなと思います。
これからの受験シーズンに向けて、頭の中に入れていただけたらと思う。
(関西テレビ「newsランナー」2023年11月27日放送)