若者の政治離れが叫ばれて久しい。こうした中で、静岡市では市議会議員と中高生がざっくばらんに懇談するイベントが開かれた。企画したのは、同じく“若者”である地元の大学生たちだ。

”若者”が”若者”のために

岸田内閣の支持率が下落の一途を辿っている。11月に行われた各社の世論調査で、内閣支持率は軒並み20パーセント台に落ち込み、政権発足以来最低を記録。いわゆる「政権維持の危険水域」に達している。その要因は、岸田総理肝いりの経済対策の不人気ぶりだけではないとみられるが、国政に対する国民の諦めムードが地方政治にまで及ぶことが懸念される。

こうした中、静岡市駿河区では静岡市議会議員と中高生を招いた小さなイベントが開かれた。その名も『こどもひろば会議』。

主催したのは地元の静岡大学などに通う大学生6人で組織する『こどもまんなか静岡』。静岡市内の中学生・高校生に議員と忌憚なく楽しく語り合ってもらおうという試みだ。

こどもまんなか静岡のメンバー
こどもまんなか静岡のメンバー
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主催者の代表で静岡大学 人文社会科学部2年の高山優樹さん(20)は「学習支援で中高生たちと接する中で、政治や行政に対し意見を持っている中高生は多いが発信できる場がないと感じていた」と話し、小さいながらも意見を発信できる場を作ってあげたいという思いからイベントを企画したという。

こどもまんなか静岡の代表・高山優樹さん
こどもまんなか静岡の代表・高山優樹さん

中高生が抱く政治への疑問とは

参加した中高生は男女5人。それぞれ自分たちが暮らす静岡市について日頃から思っていること、学校教育のこと、市議会議員の仕事などについて市議2人と意見を交わした。以下は意見交換でのやり取りの様子だ。

参加者:
静岡市は気候も良く暮らしやすいが、身近に楽しめるところがなく若者向けでない。

市議:
全国的に見るといろいろ楽しい場所が多い方だが、市民の満足度は低い。見せ方や売り方が行政も民間も下手。

参加者:
学校の先生の負担が大きく部活動がなくなってしまうのではないか?

市議:
部活動はほとんど先生にボランティアでやってもらっている。外部のコーチにお願いして改革を進めていこうとしている。部活動がなくなることはない。皆さんが先生に手間をかけないことが大事(笑)

部員の人数が集まらないという話はよく聞くが、他校との連携や民間を活用してやりたいことをどう作っていくのかが大切。

参加者:
新しいサッカースタジアムの建設計画はどうなっている?

市議:
お金をいくらかけて規模はどうするのかなど考えなければならない。税金なのか民間資金なのか課題は多い。でも、いずれは出来ると思う。

生徒:
市議会議員の仕事って大変?

市議:
今のエネルギーを別の仕事に向けていたらもっと儲かったかも(笑)

年に4回の定例会の出席以外に何もしなくても報酬はもらえるが、4年ごとに選挙がありクビになる可能性がある。自分のペースで仕事ができるが、勉強量はすごく多いと感じる。

このように日頃から行政・政治に対して意識の高い中高生がいることは明るい兆しと言えるが、若者たちの政治や選挙への関心度は残念ながら高いとは言えない。

”選挙に行かない”を打破するために

静岡市選挙管理委員会によると、2023年4月に行われた静岡市長選挙で10代(18歳・19歳)の投票率は26.6%。20代前半(20歳~24歳)はさらに低い21.4%で、50代・60代の半分以下という結果だった。若者の投票率が低いと政治家の政策は高齢層に偏り、若者たちは益々政治から遠ざかる。まさに負のスパイラルだ。

今回の「こどもひろば会議」に参加した市議は「学生たちが肌で感じていることを聞けてよかった。議員活動の中でそれぞれ応えていく必要がある」「生徒たちはよく見て考えている。市民と政治家の距離が遠くなっている中、主催した学生たちが何とかしようとしていることに対し『何とかせねば』と責任を感じている」と感想を口にした。

丹沢卓久 市議(左)と長沼滋雄 市議(右)
丹沢卓久 市議(左)と長沼滋雄 市議(右)

「こどもまんなか静岡」の高山代表は「議員さんたちと気軽に雑談できる場があればもっと政治に参加しやすくなる。今後も続けていきたい」と意欲を示す。

高山代表たちは今後、教育をテーマに約1000人の若者から意見を集め、静岡市長に届ける計画だ。将来の自分たちの時代のために、政治を身近なものにしようと立ち上がった学生たちの取り組みを今後も応援していきたい。

(テレビ静岡 特別解説委員・永井学)

永井学
永井学

テレビ静岡 特別解説委員
1986年テレビ静岡入社
1986年~1996年(主に静岡市政担当や沼津支社駐在)
1996年~2001年(ニュースデスク)
2001年~2005年(FNNロンドン特派員)
2005年~2008年(ニュース編集長)
2008年~2009年(報道部長)
2014年~2023年(報道制作局長)
2023年7月~  (特別解説委員)
海洋調査船「ヘリオス」沈没事故や伊東市沖海底噴火などの長期取材に従事したほか、地方選挙や国政選挙の取材に長らく関わる。