運転手不足により減便や路線廃止が相次ぐ北海道各地のバス会社では、人手を確保するためのさまざまな取り組みが行われている。

起死回生の策となるのだろうか?

北海道釧路市の運転免許試験場で、ちょっと変わった体験会が行われた。

バス運転手確保のため”あの手この手”

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バス会社などが主催した、路線バスの運転体験会。

バスの運転に必要な大型二種免許がなくても体験することができ、約80人が参加した。

現在、飲食店で働いている大型二種免許を持っている女性は。

「バスの運転手に対する興味は、体験する前よりもわいた。転職したいという気持ちが高まった」(大型二種免許の所有者)

バス会社がこのような体験会を開いた背景には、深刻な運転手不足がある。

バス減便や廃止 人手不足が深刻化

「毎年5~10人採用していかなければ、今後、市内路線を運行するのは大変なことになるので、1人でも多く採用したい」(くしろバス 工藤 正勝さん)

「くしろバス」は10月、赤字が進んだ路線を対象に最終便を30分~1時間早め、全路線の5%にあたる43便を減便した。

運転手は現在約130人。

今後、毎年10人ほどが定年退職するため、運転手不足が加速しそうだ。

採用のための優遇制度もある。

免許取得の支援制度も

「会社に入って給料を得ながら大型二種免許を取得。社員になって、ひとり立ちできる」(工藤さん)

大型二種免許を取得するには約40万円の費用がかかる。

それをバス会社が負担し、3年間勤務すると返済しなくてもいいという制度だ。

バス運転手を確保する取り組みは各地で行われている。

小樽市では北海道などが主催する、バス会社3社合同の就職説明会が初めて開かれた。

参加者は15人ほど。

採用担当者が養成制度や勤務体系などを説明した。

「今は旅客ではなく貨物の仕事をしている。休みがどうなっているのか、入社後ついていけるのか」(参加者)

「小柄な女性でも働けるのか心配だった」(参加者)

地方のバス会社は季節によって需要が異なり、人材確保が難しいという。

”家賃半額補助” 移住を促す制度も充実

後志地方のニセコ町に本社を構える「ニセコバス」では。

「冬に向けて需要が増えるので、さらに乗務員不足の深刻さが増す。過疎地に本社を構えているので、応募者が集まらない状況」(ニセコバス 石島 孝俊さん)

そこで、ニセコバスでは他の地域からの移住を促すための制度を整備している。

住宅の家賃の半額を会社が負担するというものだ。

しかし、なかなか定住が進まないのが現実だ。

「貨物運送業界と競合している認識はある。パイの奪い合いをしている状況」(石島さん)

運転手不足が進むのは地方だけではない。

減便や廃止 利用者も困惑

北海道中央バスは12月1日のダイヤ改正で札幌市内の2路線54便を廃止するほか、47路線253便を減便した。

12路線283便の札幌市中心部への乗り入れを取りやめ、地下鉄の駅までの路線短縮を行っている。

「困る。向こうまで行かなければならないから。今まで高齢者が乗っていたのに、不便を感じる」(廃止路線の利用者)

廃止されるJR平和駅前から札幌駅前の路線の利用者は、最寄りの「白石本通17丁目」のバス停を利用していたが、12月からは500mほど離れたジェイ・アール北海道バスの「下白石」のバス停まで歩かなければならない。

これからの雪の季節、不安だという。

「路線がなくなると、あそこまで歩かなくてはならない。困るよね」(廃止路線の利用者)

11月10日、札幌市の「乗合バス路線維持審査会」が開かれ、赤字路線を維持するため市がバス会社に支出する補助金が、2022年度は約13億500万円になることが承認された。

2023年度は約12億7000万円を見込んでいる。

「バス事業者単独で考えていくのはもう限界。行政もバス事業者と一緒に、どのような点を実際に変えていけば人を確保できるか考えていく必要がある」(札幌市 札場 義章 都市交通課長)

運転手不足によるバス路線の縮小。公共交通機関のあり方が、いま問われている。

北海道文化放送
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