介護保険制度の負担見直しについて、11月6日、厚生労働省・社会保障審議会の介護保険部会で、議論が本格化しました。

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介護保険制度が創立された2000年度の介護費用は約3.6兆円だったのに対して、2023年度の当初予算は14兆円弱と、約4倍まで増加。
今後も高齢者が増え続ける中、介護費はさらに膨らむ見通しです。

そんな中、厚労省は、65歳以上の高所得者の介護保険料を引き上げ、その増収分で、世帯全員が市町村民税非課税の低所得者の保険料を引き下げるという案を提出。大筋で了承されました。

実施されれば、65歳以上の高所得者の保険料が、最大5000円ほど上がるというこの案。今後、介護保険はどうなっていくのか?専門家に聞きました。

介護保険料が月・最大5000円の増額

介護保険は「介護サービス費用」を支援するために、2000年に創設され、満40歳以上の全国民に加入義務があり、支払いは一生涯続きます。

国民が支払う介護保険料は、介護保険制度が始まった2000年度の月額2075円から、現在、約3倍の月額6216円に増加しています。(※40~64歳 ’22・’23年度見込額)

第一生命経済研究所の首席エコノミストである永濱 利廣氏は、保険料が3倍にも膨らんだ理由を、「核家族化が進み、介護保険を利用する人の数が、高齢者の人口増加以上のペースで上がっている」と推察します。

金子恵美 氏:
保険料のことも含めて、負担がきつくなってきて、非常に回りにくくなっているのかなと感じますし、(現役世代が)シルバー世代を支えるということが、人口バランス上、経済状況上なかなか厳しいというのは事実かなと思います。

今回議論されたのは、65歳以上の保険料についてです。
その内容は、現在、所得に応じて9段階に分かれている保険料を、年収410万円以上の高所得者に限り、段階的に引きあげるというものです。

現在の最高額である月額1万223円から、月額1万5636円と、最大で約5000円の増額になります。さらに、この増収分を原資に、低所得者の保険料を引き下げる見通しです。

「現役世代の負担は限界」

今年66歳になる若狭勝弁護士は、今回の案に対してこのように話します。

若狭勝 弁護士:
あくまでも高齢者の代表として言わせてもらうと、現役世代、あるいは今の介護の置かれた状況というのも分かるので、少なくとも値上げをせざるを得ないというのは分かるんですけども、でも高齢者って“不安”なんです。
高齢者って、来年自分がどのような状態になっているかというのが分からない。そういうことを考えると、労働を前提とした所得ということではなくて、資産所得などで増額するというなら分かるんですけども…。

フジテレビ解説委員 風間晋 氏:
若狭さんがおっしゃったことは本当にその通りで、所得ベースで余計にもらおうとしても、すぐに限界にぶち当たるんです。そんなに稼いでいる高齢者がいっぱいいるわけではないんですよ。でも、資産は持っているわけです。ですから、なんとかその資産から出していただけるような、そういうのを工夫しなければいけないと思うわけで。そのひとつのやり方としては、相続税の一定割合を介護保険にぶち込むというのを、やってくれたらいいのになと。
そういう、お年寄りでもお金をいっぱい持っている方から頂いて、それを介護に回しましょうよと。そういうサイクルを作る努力をしないと、いずれ破綻しますから。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト・永濱 利廣氏
第一生命経済研究所 首席エコノミスト・永濱 利廣氏

永濱 利廣 氏:
少なくとも国の方針では、現役世代の負担は限界に近づいていると考えていますよね。一方で、65歳以上でも働く人は増えていますから、そういった意味では、おそらく今後は、より65歳以上の収入、もしくは資産が多い方々から、より多くの負担してもらうと。そういう方向に行くと思います。
(めざまし8 11月15日放送)