11月5日に閉幕した『ジャパンモビリティショー2023』。来場者数111万2千人を記録したこのイベントでは、最終日にイベントを主催する日本自動車工業会の会長で、トヨタ自動車の会長の豊田章男氏と、タレントのマツコ・デラックスさんによる対談が開催された。その名も「ジャパンモビリティショー大反省会」。

そこでは、豊田会長が最も気になった車や、今後の日本のあり方まで、驚きの話題が繰り広げられていた。

47回目にして名前を変えた理由

東京モーターショーから名前が変わり、4年ぶりの開催となった『ジャパンモビリティショー2023』。東京・江東区の東京ビッグサイトで、「乗りたい未来を、探しに行こう!」をテーマに、自動車業界の枠を超えて他産業やスタートアップ、計475企業・団体が参加し、来場者111万2千人を集めた。

この記事の画像(12枚)

豊田章男氏(以下豊田氏):
本当にご来場ありがとうございました。

マツコ・デラックスさん(以下マツコさん):
そんなに見るべきものもなかったと思うけど、ありがとう。

豊田氏:
(自分を指さしながら)あのね主催者…、主催者だから…(笑)。
 

自動車工業会の会長・豊田章男氏とタレントのマツコ・デラックスさんによる、漫才のような掛け合いで始まった「ジャパンモビリティショー大反省会」。話題はまず1954年から長きに渡った“モーターショー”の名前を、“モビリティーショー”に変えた理由から始まった。

「世界のモーターショーの来場者数がどんどん減る中で、なんとかしなきゃいけないと思ったのが、4年前のモーターショー(2019年に開催された第46回東京モーターショー)です。その時は、何やってもいいからとにかく人を集めてみようよと。ということで、130万人集まりました」(豊田氏)

そう話す豊田氏は、日本で100万人を超える来場者が集まるイベントは、夏の甲子園とモーターショーだけだと明かした。

「自動車が動くと100万人が集まるということで、一緒に未来作りに参加する人だったり、車大好き、運転が大好きな人だったり、ベンチャーや他のインダストリーや、色々な人を集めてやろうとしたのが、今回なんです。

だから、東京という名前をジャパンと変えて、そしてモーターショーをモビリティショーに変えて、第一回目としてやりました」(豊田氏)

そのモビリティショーに、マツコさんも大きな変化を感じていた。

「結構変わったよね。逆に言うと、もう車だけっていうのじゃ留まらなくなってきたのよね。だから結構スタートアップ企業みたいな人もいっぱい参加できるようにしてね」(マツコさん)

モビリティショーで行われていた企業間マッチング

今回のモビリティショーに参加したベンチャー企業は約100社。100万人を超える来場者にベンチャー企業がプレゼンができる機会は滅多にない。

「ベンチャー企業だけのイベントにしても、集客という面ではやっぱり劣るじゃない。だからこういうもの(モビリティショー)と一緒にやることでアピールできるっていうのは、いい機会よね」(マツコさん)

「モビリティの社会で未来を作っていくためには、やっぱり日本で活躍をしてる、これから活躍をしようとしてるスタートアップ企業の方々に、投資家の方々とマッチングをして、そこで新しいビジネスへの第一歩をやってもらおうかと」(豊田氏)

今回のモビリティショーでは、ベンチャー企業の技術紹介や、ビジネスマッチングに特化した「Startup Future Factory」と名付けられたコーナーもあり、ブース出展を見て次の商談が決まったケースは430件以上、ビジネスマッチングで打ち合わせが130件以上決定した。

「そうなってくるとね、最近このモビリティショーなりモーターショーなりは2年に一回やってんですよ。もしこういうマッチングだとかいろんなその技術の展示会は2年だともう遅いんだと思う」。そう話した豊田氏に、「毎年。少なくとも毎年やらないと」と同意するマツコさん。

豊田氏:
だから是非ね、ぜひ次の自工会会長さんにはね…(笑)。

マツコさん:
うわあ変なプレッシャーを与えるわね〜、本当(笑)。

豊田氏:
是非一年に一回ね、やることをご検討いただくといいかな?

マツコさん:
いやもうね、あのご無理はなさらず、はい。これ大変なのよ、このイベント開くだけでも…。

豊田会長が一番いいと思った車は?

「ジャパンモビリティショー大反省会」中盤、マツコさんが、多くの来場者、そして関係者が気になる質問を投げかけた。

マツコさん:
会長自身が見てちょっと一番いいなと思った車どれだったのよ、今回。これいいわねって思った車。トヨタの車でもいいし、他社のでもいいですよ。

豊田氏:
(しばし考え込んで)…トミカかな。

マツコさん:
ちょっと喜んでるわよ!今もう、もう葛飾区(タカラトミー本社所在)は大騒ぎよ、あんた。そうね、トミカとか、あとプラレールとかも出してくださってたよね、タカラトミーさん。

豊田氏:
トミカはやっぱりね、夢があるでしょ。

マツコさん:
だから子供は好きなのよ、やっぱり。
 

今回のモビリティショーでは、未来の東京がどう作られるかを表現する「Tokyo Future Tour」というプログラムも人気を集めた。

中でも注目されていたのは、三精テクノロジーズの4脚歩行ロボットライド「SR-02」。全長約3.4mのロボットは4人まで搭乗可能。アトラクションのような乗り心地のロボットだ。この世界初の乗り物は、タイヤでは行けないような瓦礫の中も進めるという。

三精テクノロジーズは、普段はジェットコースターなどの遊戯を作っている会社。これにはマツコさんも納得した様子だ。

マツコさん:
そうか。だから、アトラクションみたいな…。分かんないもんだね。そういう会社が車の技術にこれから役立ってくるから。

豊田氏:
色々な会社にリーチしようとしたがゆえに、いろんな人が参加しやすくなった。

マツコさん:
自分たちの会社の技術が、これからモビリティの中で生かせると思って、研究してる会社がいっぱいあるってことだから。

豊田氏:
それとね、やっぱり研究者の常として、研究室だとか、関係者と一生懸命開発するのが普段のお仕事だと思うんですよね。それをこういうモビリティショーに持ってくると、一般の方、普通の感覚のフィードバックが出ると思うんですよ。

マツコさん:
要は「どうでしたか」って言って、返ってくる言葉が研究者の言葉じゃなくて、一般のユーザーの。

豊田氏:
いろんな展示があった中で、皆さんはそういうフィードバックが非常にありがたいと言ってましたね。

多様化するモビリティと50年後の“車”の未来

豊田氏が、モビリティショーの重要なテーマの一つとしてあげた“多様性”。

メルカリが開発した「poimo」というソファ型モビリティを、パラアルペンスキーのメダリスト・森井大輝選手が体験した。

豊田氏:
彼が言うのは、やっぱり普段は車椅子でしょ。寝っ転がったままちょっとお茶取りに行きたいなとか、そういう時にめちゃくちゃ便利だと(笑)。

マツコ:
うん、じゃあ私も欲しいかも(笑)。
 

豊田氏は続ける。

「だからね、一つの選択肢じゃなくて、モビリティという名前を変えたことによって、色々な選択肢をこうやって持てることが、多くの選択肢が移動手段に出てくる可能性をものすごく感じましたね」

マツコさんも、「車の形って、50年後とか全く違うものになってるかもね」と思いを膨らませる。

「以前はセダンが当たり前だったのがね、今はSUVなどの形になってきたし、日本ではワンボックス系がいいとかありますから。やはり50年後の車の形ってどうなってるか分からない」(豊田氏)

話は車の未来だけに収まらず、日本の未来へと膨らんでいく。

マツコさん:
どう?会長。これから今後の日本は?

豊田氏:
日本人の良さって、「ありがとう」と言い合える世界だと思いますね。

ところが、なんとなく最近色々な報道を見ていても、世の中が全て断絶だったり、対立しているような雰囲気になっている中で、やはり自分のできる範囲で「ありがとう」と言い合える第一歩を大人が示していかないと。子供達はそれ見てますから。

やっぱり子供たちが「ありがとう」と言い合って助け合っている大人を見ていくと、「あ、いいな、こういうの」って思って、それをベースに未来作りをすると思うんです。だから、そんな姿を見せる大人が今すぐいっぱい出てこないと。

マツコさん:
でも、トヨタってその日本的な価値観みたいなのを、ちゃんと守りながら成長してるじゃない。グローバル化が進んで、世界の基準が“こう”ってなっている中で、完全にそれに乗っからずに、ちゃんと日本っぽさ、日本の企業であるところをちゃんと維持しつつ、成長してるじゃない。

なんか回り道なように見えるけど、最終的に世界で武器になるのって、そこな気がするのよね。ちゃんと活かしてやってるよね。

豊田氏:
急に世の中に変化するわけでもないし、やっぱり今ある世界は、過去においてコツコツとやってくれた人の結果が出てる。それだったら未来に向けても今我々がコツコツと。今は評価されなくてもいいけど、今コツコツやってることが、未来のありがとう、未来の素敵、未来の笑顔になるなら、そういう人を増やしていきたいなとも思いますね。

マツコさん:
もうさ、自動車頼みじゃない?今の日本って。色んな基幹産業いっぱいあったけどさ。もう結局雇用も含めて今日本経済支えてる筆頭よね、自動車産業が。

豊田氏:
それはね、やっぱりこのモビリティショーに、本当に商品にわくわくして来ていただいている皆さんのおかげだと思います。本当に皆様方にお支えいただけないと、自動車業というか、モデルチェンジもできないしね。そうなると、技術革新も止まってしまうような気がするんです。
モビリティを使っていただいている、そして笑顔になっている、ありがとうと言ってくれる方がいらっしゃる故に、開発人はまた新たな「ありがとう」が欲しくなって、もっと勉強してもっと働く世界ができると思うんですよね。