国連では27日、イスラエル軍とハマスの軍事衝突を巡る緊急特別会合を開き、「人道的休戦」を求める決議案を採択した。この人道的休戦決議に121カ国が賛成する中、日本はなぜ棄権したのか、立石修・フジテレビ報道局取材センター室長がお伝えする。

休戦決議に日本が棄権

人道的休戦決議に121カ国が賛成する中、日本はなぜ棄権したのかーー。

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今回、ヨルダンが提案した決議案の主なポイントは、「人道的な休戦を求める」「人道回廊の設置」「ガザ住民・国連職員などに対しての避難命令の撤回」「違法に拘束されている民間人の即時解放」など。

投票の結果、121カ国が賛成し、採択された。

国連総会の決議は安保理決議と異なり、法的拘束力はなく、国際社会の“意思”を示すものだが、賛成、反対には各国の意思が読み取れる。

採択の内訳を詳しく見ると、今回の決議案には、中国・ロシア・フランスなど、121カ国が賛成。一方でアメリカ・イスラエルなど14カ国が反対し、日本・イギリス・ドイツなどを含む44カ国は棄権した。

かなり人道に配慮した内容だが、アメリカなどが反対したのは、なぜだろうか。

アメリカは基本的に、イスラエルの軍事作戦を支持するという立場は変えておらず、双方が合意し、長い期間戦いをやめることにつながる、停戦や休戦には応じられない。

また、ヨルダンの今回の決議案には、ハマスを名指しで非難していなかったということなども考えられる。

イスラエルとの連携を示していたフランスが賛成、イギリスが棄権というのも気になる点だ。

19日にイギリスのスナク首相、24日にフランスのマクロン大統領が、それぞれイスラエルを訪れ、ネタニヤフ首相らと会談している。

そうした中で、イギリスやフランスが、アメリカやイスラエルと足並みを揃えなかったのは、どんな背景があるのだろうか。

28日、イギリス・ロンドンでは、ビッグベンや首相官邸も近い中心部で、大規模なパレスチナ支持のデモが行われた。BBCによると、このデモには約7万人が集まったという。

ヨーロッパでも、ガザ地区の人道状況を懸念する声が高まっている。

イギリスのスナク首相とフランスのマクロン大統領は、29日に電話会談を行い、人質の解放やガザ地区への緊急支援が大きな課題と話した。

両者のバランスを配慮か

また、決議案に棄権した国、44カ国の中には日本も含まれている。なぜ、日本は棄権したのだろうか。

上川陽子外務大臣は、「人道支援に関して、支持できる内容もあった」とした上で、「テロ攻撃への強い非難の言及がないなど、全体としてバランスを欠いていたことから、総合的に判断した」と答えている。

ある政府関係者は、「ハマスを非難する文字を少しでも入れてくれたら、日本も賛成の余地はあった。カナダがハマスを入れた修正文を出していたが、それすら否決されたので、それでは日本の立場では賛成できない。本当は日本だって賛成したい」と話している。

18日に安保理でアメリカの拒否権で否決されたブラジルの決議案は、ハマスを名指しで批判していて、日本も賛成を投じた。

今回はハマスへの非難がなかったというのも一つの理由だが、やはり、日本はイスラエル、パレスチナ双方と外交関係があり、両者のバランスを配慮しなければいけない。

上川外務大臣は今週にも、イスラエルとアラブ側のヨルダン双方の訪問を予定しており、対応を協議する予定だ。
(「イット!」 10月30日放送より)

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