中国の李克強前首相が27日未明、心臓発作で亡くなったと中国国営テレビが報じた。68歳だった。

中国版SNSのウェイボーでは、一時期検索のトップに上がるなど国民の関心は高い一方で、中国のニュースでは李前首相の死去はトップ項目ではなく、扱いとしてはとても小さかった。
そこには、“一強状態”と言われる習主席を前に当局の警戒感も見え隠れする。

李克強前首相が死去

中国国営テレビによると、李前首相は26日、療養先の上海で心臓発作を起こし、27日午前0時10分に亡くなった。

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李氏は胡錦濤前国家主席らと同じ派閥出身で、3月まで首相を務めていたが、過去の演説では汗だくで読み間違いを繰り返すなど、健康不安説も取り沙汰されていた。

北京市民の1人は、「李克強前首相はとても親切な人だったので、今の気持ちを言葉で簡単に表せない」と語った。

さらに、別の北京市民は「(68歳で亡くなるのは)国のために苦労しすぎたのかもしれない」とインタビューに答えた。

李前首相は経済に明るく、かつては習近平国家主席の最大のライバルとも見られていたが、3月、習主席が3期目の政権に入ったところで首相を退き、引退していた。

このニュースについて、FNN北京支局の山崎文博支局長がお伝えする。

中国では、李克強前首相の死去はどのように報じられているのだろうか。

3月まで中国のナンバー2だった人が亡くなったとなれば、大きく扱われるだろうという方も日本では多いと思われる。

しかし、中国の午前のニュースでは、トップ項目でもなく、キャスターが事実を淡々と読み上げるだけで、扱いとしてはとても小さかったのが印象的だった。

ただ、中国版SNSのウェイボーでは、一時期検索のトップに上がり、市民の関心の高さを示していた。

ウェイボーでは注目度が高いニュースには「熱」という評価が付くのだが、李前首相の死去については、「熱」を超える「爆」という評価が付いたほどだ。

扱いが小さくなった2つの理由

これだけ注目度の高い出来事なのに、なぜ、報道の扱いは小さくなってしまったのだろうか。

一つは、李前首相が急に亡くなったということだ。

中国では幹部が亡くなった場合は、報道でこれまでの功績が紹介されるが、それを準備する時間がなかったことが考えられる。

もう一つは、習近平国家主席との関係だ。

中国で報じられたNHKの国際放送は、習主席と李前首相の関係を報じるところで、カラーバーに変わり、放送を見られなくなった。

新華社通信もこのニュースは、習主席の動静に続く扱いだった。

今や“一強状態”と言われる習主席を前に、かつての習主席のライバルであり、国民に親しみも持たれていた李前首相の死去が、盛り上がってはいけないという当局の警戒感を感じる。
(「イット!」 10月27日放送より)

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