小池百合子本を読むと奈落に落ちる

都知事選のさなかに「女帝・小池百合子」という本を読んだ。これはすごいネガティブキャンペーンだなと思ったが、同時に「小池さんの票はむしろ減らないぞ」とも思った。読んでるうちにどんどん小池氏にハマってしまうような、奈落に落ちるような不思議な本なのだ。案の定、小池氏は366万票を取って圧勝した。

小池知事の1期目については批判も多い。公約の満員電車や待機児童など「7つのゼロ」についてはほとんど達成していないし、築地の豊洲移転では言うことがコロコロ変わった。五輪会場の変更もできず、逆にマラソンは札幌に取られてしまった。個人的には禁煙条例を作ったのは評価したい。それくらいか。

一方新型コロナ対策では見違えるように生き生きと指揮を執った。「ロックダウン」という強い言葉で緊張感のなかった国民を脅し、豊富な財政力をバックに自粛企業に協力金を払って政府に対抗した。小池氏のやったことの是非はともかく、世論調査を見ると国民の評価は高い。

何よりお洒落なマスクをして都民に「お願い」ベースで会見するやり方は、小さいマスクであごが出てしまい、官僚の原稿を読む安倍首相よりコミュニケーション力でははるかに上だった。これが小池氏の4年間の「業績」なのだが、今回野党が分裂し、結果的に強い敵がいなかったこともあり圧勝した。

たかがマスク、されどマスク コミュニケーション力に差がついたか

歴史に残るスゴイこと

実は小池氏はこの4年間に1つだけ歴史に残るスゴイことをした。2017年の総選挙で旧民主党を分裂させ2大政党制をぶっ壊してしまったのだ。日本の政治システムは選挙も国会もすべて2大政党制を前提に作られているので、それをぶっ壊してしまったというのは「業績」ではなく「悪事」かもしれない。

小池氏がぶっ壊したせいで日本は以前の自民党の一党支配に戻った。政権交代が困難になり、政権を選べなくなった国民や、政権を取れなくなった旧民主党にとっては悪事だろう。ただ自民党にとっては野党をぶっ壊した小池氏は女帝ではなく女神なのだ。

まあそんなすごい小池氏だが、さすがに366万票取ると「野党がこんなに弱いなら安倍首相は早く解散できる」とか「小池百合子は国政復帰でポスト安倍」という声も出て、早速政局が騒がしくなった。

橋下徹氏から小池都知事へのラブコール?

果たして小池氏が日本初の女性首相になる芽はあるのだろうか。

あるとすれば、たとえば安倍内閣の支持率がさらに下がってレームダックになり、ポスト安倍の面々もイマイチ決め手に欠け、このままでは解散しても自公で過半数割れの可能性がある、ということになったら小池氏の出番になるかもしれない。その場合小池氏の性格からして自民に復党せず、自民との連立に加わり、首相のポストを取るだろう。

たとえば3年前に一緒に作った希望の党から党名を変えた国民民主党と組むという手がある。玉木代表とは知事選前に一度会っている。その場合もちろん後から入った小沢一郎さんたちは「排除」する。

橋下氏の発言は、小池都知事へのラブコールなのか?

でももっと面白いのは小池氏と維新の合体だ。知事選の結果について橋下徹氏は「小池氏がこれだけ圧勝したのは重い」と評価した。これは小池氏へのラブコールではないか。維新と小池氏は政策で重なるところも多い。何よりそれぞれ今は東京だけ、大阪だけ、というローカル政党だが、これがくっつくと力は相乗効果で3倍にも4倍にもなる。安倍政権は維新と友好関係を結んでいるが、もし維新が小池氏と組んだらすごく嫌だと思う。だからこの手が一番いい。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】