各地で相次ぐ、高齢ドライバーのブレーキとアクセルの踏み間違い事故。
ドライバーの意識が、はっきりしている状態で起きたものも少なくない。それなのになぜ、踏み間違いが起こるのか。
その原因の1つは、加齢による体のある部位の“変化”である可能性がみえてきた。

「あっ、え?」戸惑っている間に暴走、柱に激突

高齢ドライバーが、ブレーキとアクセルを踏み間違えたことで起きた、事故の映像がある。

車が急発進すると同時に、驚いたような声を出す高齢ドライバー
車が急発進すると同時に、驚いたような声を出す高齢ドライバー
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【北海道警公式YouTube映像より】
運転手:

あっ、え?

駐車場で、発進後に急加速した車。

車や木々の間をすごい速さですり抜ける
車や木々の間をすごい速さですり抜ける

停車している車や木々の間をすり抜けていく。

前には人の姿も。幸い車に気付いたのか、避けているように見える
前には人の姿も。幸い車に気付いたのか、避けているように見える

進行方向には、人の姿もある。

建物の柱に激突し、ようやく止まった
建物の柱に激突し、ようやく止まった

そのまま、速度を落とすことなく建物の柱に激突。

柱にぶつかる寸前、逃げている人の姿も見えた
柱にぶつかる寸前、逃げている人の姿も見えた

その直前には、走って逃げている2人組の姿もあった。

ドライバー自身が踏み間違いを認識しているケースも少なくない。
では、なぜ意識がはっきりとした状態でも、踏み間違いは起きてしまうのか。

高齢ドライバーの事故について研究する専門家は、その原因の1つに、こんな可能性があるという。

加齢により股関節の可動域が狭くなると、股が開いてしまう。その結果、そのままアクセルを間違えて踏んでしまうのではないかという
加齢により股関節の可動域が狭くなると、股が開いてしまう。その結果、そのままアクセルを間違えて踏んでしまうのではないかという

福山大学 工学部・関根康史 准教授:
高齢者は運転経験が豊富になるので、用心深い運転は行う可能性がある。
しかし若い人に比べると股関節の可動域が少なくなっているので、本当はブレーキを踏むべきところが、股を閉じないで、そのままアクセルの方を間違えて踏んでしまうケースがあるのではないか。

アクセルから足を離し、ブレーキを踏んだつもりが、思ったより足が動いておらずまたアクセルを踏んでしまう可能性
アクセルから足を離し、ブレーキを踏んだつもりが、思ったより足が動いておらずまたアクセルを踏んでしまう可能性

年を重ねるにつれ狭くなる、股関節の可動域。
ブレーキを踏もうとした際に股が閉じきらず、アクセルから離した足が、再びアクセルの上に乗っているという。

原因の1つは“狭まった股関節の可動域”?セルフチェックの方法

また、人体構造の専門家は、股関節の可動域をセルフチェックする方法があるという。

杏林大学 理学療法学専攻・松村将司 講師:
いすに座った状態で太ももを動かさないようにして、ひざから先の足を外に開いたり内側に閉じたりする。
頭とか体が過剰に倒れてしまわないように、注意していただければ。

セルフチェックの手順。イスに乗って太ももを動かさずに、膝から下の足を外側と内側に開いたり閉じたりする
セルフチェックの手順。イスに乗って太ももを動かさずに、膝から下の足を外側と内側に開いたり閉じたりする
セルフチェックの手順。イスに乗って太ももを動かさずに、膝から下の足を外側と内側に開いたり閉じたりする
セルフチェックの手順。イスに乗って太ももを動かさずに、膝から下の足を外側と内側に開いたり閉じたりする

そこで「イット!」では、日常的に車を運転する70歳以上の高齢ドライバーたちに、この股関節の可動域のセルフチェックをやってもらった。

高齢ドライバーはあまり足が上がらず、なかなか地面から離れない
高齢ドライバーはあまり足が上がらず、なかなか地面から離れない

日常的に車を運転する高齢ドライバー(70代)と、番組スタッフ(30代)を比較すると、スタッフは軽々と外側に上がったのに対し、高齢ドライバーはあまり上がらず、足が地面からなかなか離れない。その差は歴然だ。

さらに...。

外側に動かすのが難しいとの声が多数
外側に動かすのが難しいとの声が多数

トラック運転手(70代):
こっちがキツいな。外側の筋が。
キツいな。ここ(外側の筋)が張る。張ってるね。それ以上、張っちゃって痛い。

これ以上は上がらないという
これ以上は上がらないという

70代(ほぼ毎日運転):
これキツいです。自然には上がらない。外側キツいです。痛いより硬い。上がらない、これ以上は。

体を動かすと、痛みを感じるという人もいた。

こうした映像を、あらためて専門家に見てもらうと...。

杏林大学 理学療法学専攻・松村 講師:
確実に(股関節が)硬くなってくるんだなっていうのは、全体的な印象としてあります。
股関節の可動域が小さいと足が開いてしまいますので、ブレーキに足が届きにくくなって、アクセルを間違えて踏んでしまう、踏み間違いの事故が起こる原因の1つとしては考えられる。

時に、大きな被害を生むことがある踏み間違い。
日ごろのチェックが必要となる。
(「イット!」10月26日放送より)

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