19日、秋田県北秋田市で住民を次々と襲ったクマ。現場付近で取材に答えていた菓子店店主の男性は、その約1時間後、自身もクマに襲われる被害にあった。頭や顔などに大ケガを負いながらも九死に一生を得た男性が、その恐怖の一部始終を語った。
クマの人的被害は過去最悪ペース
「もう何回も見るし。もうだいぶ(民家に)近づいてますよ。去年まではなかったです。今年特別です」と語るのは10月にクマの姿を撮影した人。
秋に入り、これまでにない頻度でクマの出没が東北地方を中心に各地で確認されている。
20日には、秋田県内で猟友会に同行取材していたフジテレビのカメラも、親子クマとみられる3頭が道路の真ん中で栗を食べている姿を捉えた。
環境省によると、2023年4月から9月までにクマによる被害にあった人は、全国15の道府県で109人と、国の統計開始以来過去最悪のペースとなっている。
19日、北秋田市では男女5人が次々と…
19日、秋田県北部・北秋田市の市街地では、半径約400メートルの中で男女5人が次々とクマに襲われた。
リポート:
小学校からほど近い閑静な住宅街で80代の女性2人がクマに襲われました。
最初の被害は、午前6時40分頃。83歳と81歳の女性2人がクマに襲われ、このうち1人は、右肩を骨折。頭や右目のあたりを引っかかれ重傷を負った。
その直後の午前7時頃、今度はバス停で、82歳の女性が頭や背中などを引っかかれた他、16歳の女子高校生が左腕を噛まれるなど、被害が相次いだ。
バス停近くにある菓子店の店主・湊屋啓二さん(66):
若い女性がすごい「ぎゃー!」っていう声を出しながら走って行ったんですよ。
そう取材に答えてくれた湊屋さんは、その約1時間後、店舗兼自宅の敷地内で、クマに襲われ5人目の被害者となってしまった。
「すごい勢いでコォーって、すごい声出してかじってる」
インタビュー取材を受けてから約1時間後の午前11時20分ごろ。
湊屋さんは外出しようとガレージのシャッターを開けると、そこにはクマがいた。
「目の前にでかいクマがいて、距離感としては多分2mくらい」
「一瞬パッっと俺と目が合って、その瞬間もう、こっちに向かってきましたんで、これやられるなと…」
とっさに逃げようとした湊屋さんだが、クマのスピードには太刀打ちできず、すぐに追いつかれてしまったという。
「後ろから倒されて、そのまま横になりながら、(攻撃を)手で防いでいたんですけど、もう顔と頭に執着するんですね、クマが」
「すごい勢いでコォーって、すごい声出してかじってる。死ぬかもしれないなと…」
「ところが一瞬、攻撃がちょっと緩んだんですよ」
隙を見て再び逃げると…追ってくるクマ。なんとか振り切り…約40メートル離れた建物の中へと逃げ込み、間一髪助かったという。
「もう1回追いつかれていたら多分、命は危なかったんじゃないかなと思いますね。走ったらいけないって言うんだけど、至近距離でバッタリ会ったら、逃げるしかない本能的に」
頭や顔に大ケガをした湊屋さんは、その後ドクターヘリで秋田市内の病院に搬送され、治療を受けた。
「年末ぐらいまでクマ出没」と専門家予測
市街地にクマが現れ、人間を次々に襲うという異常事態。
クマの生態に詳しい秋田県立大学・生物資源科学部の星崎和彦教授も、「ここまで熊がたくさん出没するっていうのは想定外。かなり異様な状態」と話す。
その理由については、「(木の実が)大凶作でクマとしては餌がなくて困っている」と指摘する。
2023年は、クマのエサとなるどんぐりなど、木の実がほとんど実らず、クマにとって深刻な食糧不足となっている可能性があるという。
秋田県内で撮影された柿の木に登るクマの姿を見た星崎教授は、「クマは今まであんまり秋田では柿の実を食べてなかったんです。秋田の柿はほとんど渋柿なので」と話す。
本来は食べないはずの渋柿を食べるほど、山にエサがないということなのだろうか。
星崎教授は、「餌がないっていう状況で人里近いところを通らなきゃいけない。クマにとって、それはフラストレーションになるだろうなっていう風に思います。気性が荒いタイプのクマがいらいらしている時に出くわすと、かなり危険にはなります」と警鐘を鳴らす。
危険を伴うクマの出没は、いつまで続くのか?
星崎教授は、「今年の場合は餌不足なので、十分な栄養を摂れるまでは冬眠に入らない。年末ぐらいまでクマ出没のニュースが出るのかなという心配をしています」と予測している。
(「Mr.サンデー」 10月22日放送より)